高齢者健診に行くことのできない高齢者は、どのように過ごしているのでしょうか?
インドネシアの高齢者は大半が自宅で生活しています。介護が必要となった場合は、主に家族が介護にあたります。
しかし、地方部では若者が他の島やマレーシア等の外国で出稼ぎをしており、子どもと高齢者だけが取り残されているケースも目立ちます。親戚や近隣の住民を頼りにする場合もありますが、必ずしもいつも介護ができるわけではありません。
そのため、保健センターの看護師が、手術前後や退院後のフォローアップにあたったり、近隣住民や家族からの相談に応じて訪問看護を行っています。
しかし、訪問看護は必ずしも他職種と連携できているわけではなく、また訪問件数にも限界があり、ニーズに応えきれない、そもそもニーズを把握できず埋もれているケースも多数存在すると考えられます。
ある患者様の例を紹介します。
60代女性、糖尿病性壊死のため2週間前に島で一番大きい町の病院で左下肢を切断。
60代の夫と二人暮らしをしていたが、在宅生活が困難であるため、術後は隣町にある兄弟の家にて療養中。子どもなし。管轄地域にある保健センターの看護師が毎日訪問し、切断面の創傷処置を施行中。
本人は「また歩けるようになりたい」と話しています。
しかし…。
実は、ロンボク島の地域医療の現場には、リハビリ職種がほとんどいません。
島の一番大きい町や、他の島にはリハビリ職種がいることもあるのですが、私の住む田舎町ではリハビリを受けることが困難。
自分でうまく身体を動かすことができないけど、どうしたらいいかわからなくて家族も看護師も手が出せず、患者様は日に日に筋力が低下していく…。
これがロンボク島の現実です。
ロンボク島で生活していると、農村部でも車椅子で舗装されていない道を自走していたり、加齢などにより寝たきりになったり、脳梗塞で片麻痺になり、在宅生活を余儀なくされている患者様を大勢目にします。
リハビリのニーズはあると感じるものの、看護師だけでできることは多くはなく、日本のチーム医療は素晴らしい、と改めて痛感しています。
都市には大病院があり、母子手帳の普及をはじめとした母子保健が整っており、アクセスが困難な場合があるとはいえ保健センターでのプライマリー・ケアが整っているインドネシア。
しかし、非感染性疾患や高齢化対策は、まだまだ始まったばかり。
そして、国土の大きい島国であるインドネシアでは、一つの試みが国全体に広がっていくまでに、長い時間を要します。
地域医療の拠点である保健局や保健センターでの活動が、より活性化しますように。
そして、首都や主要都市だけではなく、ロンボク島のような小さい島国の高齢者も、より活き活きと日々を過ごすことができますように。
最後までご覧いただきありがとうございました。
タイ医療現場見学ツアーのお知らせ
【催行日】2017年6月24日~28日
【料金(1名様分)】70,000円 / ホテル4泊
【募集定員】10名様
【申し込み〆切】2017年5月21日
【概要】
日本ではあまり知られていませんが、タイの医療技術は世界的に見てもかなり先進的です 。特に政府主導のメディカルツーリズム推進の効果から、先進医療を求める中東や欧州の富裕層が多くタイを訪れています。
都市部の私立病院では、高級ホテルと見まごうばかりの内装に最先端の医療機器を取り揃え、JCI認証(医療品質や衛生管理に関する国際医療評価機関)を取得している病院は国内で実に37。これは日本の13を大きく超え、アジア最多の数字です。
しかし一方で、圧倒的な医療スタッフの不足や資源の偏りにより、公立病院や地方の病院等、タイ人自身が受診する病院では、決して満足な医療サービスが機能しているとは言えない現実もまたあります。
このツアーをとおして、都市部と地方、私立と公立のそれぞれの病院を見学していただき、実際の格差を肌で感じて頂ければ思います。
柳澤沙也子
岡山県美作市出身。2009年 国立大学法人 岡山大学医学部保健学科看護学専攻卒業。
岡山市の有料老人ホーム・大阪市の病院等計6年間の勤務を経て、2015年10月より2年間、インドネシア・ロンボク島にて青年海外協力隊 看護師隊員として活動中。