ここ10年間でケアステーションは増えていません。なぜ増えていないかと言うと面白くないからです。
儲けにならないし、やりがいがある職場が少ない。
アメリカでは、寄付で自分たちの収入を賄っています。保険を無視してやりたいことがやれるということで、看護師もどんどん増えていきました。
保険自体を変えてしまって実現した例もあります。オランダです。
オランダはパート職員でも能力があれば、管理職になることができます。常勤・非常勤も関係ありません。
職場内の関係性は横社会で、リーダシップを取る人が一人だけ。師長や主任もいなくて給料も同じ。
同一労働、同一賃金というのを徹底しています。
それでいて、やりがいがあるのです。
例えば、看護師さんはケアプランを、自分で立ててサービスを実施します。
すると、自分で立てたケアプランなので、対象者さんがよくなることでの喜びが増えますし、よくならなければ学習してより良いサービスを提供できるように努力をする。
その繰り返しが、モチベーションに繋がります。
やりがいがあれば辞める人は少ないですし、むしろ外部から働きたい人が集まってきます。
日本にはこういう動きがないのが問題です。
日本には潜在的な看護師がたくさんいますが北欧に比べて、在宅で働く看護師は10分の1しかません。
特化型訪問看護ステーション
これからは、専門性のある訪問看護ステーションをどんどん作っていこうと思っています。
例えば、糖尿病専門の訪問看護ステーションを作って、糖尿病の方を多くみたい看護師・理学療法士を採用します。
教育に関して、本部は接遇など、ステーションは疾患に特化、というように役割を分けることで、自学自習型の施設ができます。
糖尿病だけでなく、何種類も専門性のあるステーションができると、町自体が病院のようになります。
そうすることで在宅への移行も、より簡単に行えるようになると思っています。
訪問看護ステーションのマネージメント
訪問看護ステーションは30人以下の組織が理想です。
30人を超えると中間管理職が必要になり、マネージメントに関する特別な知識が必要になります。
20人程度であれば、トップが本気を出せばすべての指示が出せますので、特別な知識も必要はありません。
看護師は女性が多い職業ですので、非常勤を多く配置しバランスをとります。
常勤になりたい人が増えてくれば、新しいステーションを作る。
そうすることで、多くのステーションを作ることが出来ると考えています。
癌の痛みにすごく冷たい国、日本
今後、65歳を過ぎたら「病気になるのは自己責任」といった扱いを受けるのではないか危惧しています。
癌という病気は、民間の保険に入っているか、相当お金を持っていないと治療を受けることができなくなります。
また、日本という国は、癌の痛みに対してすごく冷たい国です。
WHOが行ったアンケート調査で、98%の癌患者は経過の中で痛くなかったと答え、残りの2%も自制内でした。
しかし、日本は癌拠点病院ですらも、50%の人が痛かったと答えています。
アメリカと比べるとモルヒネなどの麻薬使用量が30分の1と言われており、日本は圧倒的に少ないのです。
適切に使用しなければ、痛いと答えるのは当たり前です。
今後、緩和ケア専門の訪問看護ステーションも必ず必要になってくると思っています。
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岩尾聡士先生のプロフィール
資格:医師、日本在宅医学会在宅医療認定専門医
1986年4月~1992年3月 名古屋大学・医学部
1992年4月~1996年3月 名古屋大学大学院・医学研究科博士課程 医学博士
2005年4月~2007年3月 中京大学・ビジネスイノベーション学科 経営管理学修士
2009年6月~2013年9月 名古屋大学大学院経済学研究科 教授
2012年~ 新ヘルスケア産業フォーラム 常任理事 2013年10月~2016年9月 藤田保健衛生大学 医学部地域老年科 教授
2013年10月~2017年3月 名古屋大学大学院経済学研究科 特任教授
2015年4月~2017年3月 藤田保健衛生大学長寿包括ケアクリニック 所長
2017年4月〜 高齢社会街づくり研究所株式会社 代表取締役社長 芦屋大学経営教育学部教授