今でしょ。
― 志智さんが市議会議員になろうと思ったその経緯を教えていただけますか?
志智:養成校を卒業してからは地域の総合病院に勤めていたのですが、市の介護予防事業を見学させていただいたことがありました。
そこでは、トゲトゲのボールで頭とかを刺激して、「認知症を予防しよう」と言っていました。エビデンスが、本当に根も葉もないようなことで、すごく勿体無いなと感じました。
専門的な知識に基づいてやることで、市全体に健康な人を増やしていけるし、もし、病院に入院したとしても軽度に抑えられて、社会復帰ができるのではないかと思いました。
ちょうどそのタイミングで、若くして市議会議員になった方のお話を伺う機会があって、その方から「20代でチャレンジしている人もいる」ということを知って、政治にその可能性があるかもしれないという思いが強くなりました。
ー 政治にはもともと興味があったんですか?
志智:関心はありましたね。ただ、すぐに自分が政治に関わろうとは全く思っていなくて、定年後とか将来的にやれればいいなと思っていたくらいです。
ー なかなかハードルが高そうですが、ためらいとかはなかったんですか…
志智:勿論、その時は人生で一番迷いました。でも、今しかできない気もしたんですよね。これから結婚して子供ができて…というライフイベントがあると、やっぱり20代の方が挑戦しやすいですし、「今しかない」と飛び込んだかたちです。
ー 作業療法士としてのキャリアから離れることに不安はありませんでしたか?
志智:臨床4年とか5年目の頃ってちょうど自分のキャリアについて考える頃じゃないですか?
自分も、病院でなかなか理想通りにはいかない葛藤もあり、一方で、尊敬する先輩方は、病院外の未開拓のステージでそれぞれ頑張っているのを見て、新しいことにチャレンジしたいと思っていました。
自分は政治に興味があったので、市議会議員というかたちで、社会的に健康な人を増やしたい、業界にも貢献したいと思って、この道を選びました。
ゼロからのスタートではなかった
ー ではそれから、市議会議員選挙にあたってどのような手順を踏んでいったんですか?
志智:まず、政治活動をするために病院を辞めました。
それで、選挙に向けてマニュフェストを作ってチラシにして配ったり、政策をいろんな人に伝えて支援者を増やしながら、並行して立候補の手続きをしました。
ー マニュフェストってどうやって決めるんですか?
志智:とにかく自分の思いを周りの人に伝えて思考の整理をしながら文章化していきました。周りの人に対して、「なぜ辞めるのか。どうして議員の道を目指すのか。」をちゃんと説明ができないと応援もしてもらえないので。それを政策にしていったという感じです。
― 支援者はどうやって集めていくものなんですか?
志智:まず、支援者になってくれやすい人というのは親族などの血縁者や近隣に住んでいる人、その人の人生で繋がりがあった人などだと思います。
例えば立候補者が60歳の方ですと、60年間の生活していく中で、それだけ多くの支援者がいるものなんですよね。私の場合だと28年間で、しかも働くタイミングで稲沢に引っ越してきたので、ゼロからのスタートだと思っていました。
まずはとにかく自分の存在を知ってもらおうと、駅で辻立ちをしたり、チラシを配ったりしながら、いろんな人に自分の思いを伝えていきました。
その中で、「確かに、その通りだよね」と共感してくれる人が出てきて、過去に担当していた患者さんなど病院勤務時代に関わっていた人も応援してくれるようになりました。その時に健康な人を増やしたい、人々が健康になる手伝いをしたいという思いは一緒で、働く場所が病院から議会に変わっただけなのだと、病院で働いていたこと、作業療法士をしていたことには意味があって、市議会議員は作業療法士としてのキャリアの延長線上にあるのだと思ったんですね。
ー 1回目の選挙は全体としては9位、新人の中では1番の得票数だったそうですね。どうしてそこまで集められたと考えていますか?
志智:まず、その時ダントツで自分の年齢が若かったというのはあります(当時28歳)。
ただそれだけではなく、病院で関わった人をはじめ多くの人が政策や想いに共感してくれたのだろうと思います。
稲沢市の介護や福祉制度がすごく使いにくいと実感していた人の心に届いたというのも感じました。
― 自治体によって制度ってそこまで違うものなんですか?
志智:基本的にベースは同じですが、運用の仕方とか細々したところに違いがあります。特に介護保険分野は、自治体によって差が出やすいです。
あとは、インフラ整備含めた移動支援もそうですし、病院や高齢者のサロンがどれだけあるのかといったところも自治体ごとに違ってくるので、高齢者が住みやすい街とそうでない町の差はやっぱりあります。
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