6自由度の骨盤アライメントを考えるには‐仙腸関節痛の基本を解説

3822 views
無料会員登録をする

 骨盤は、二つの寛骨(腸骨、恥骨、坐骨)、仙骨、尾骨で構成されています。寛骨と仙骨の間には両側で二つの仙腸関節、恥骨の間に恥骨結合があり、両寛骨と仙骨、仙腸関節・恥骨結合により骨盤輪が形成されます。骨盤輪全体の安定性が体幹の圧負荷を下肢に伝えるとされています。この安定性は骨関節・靭帯系、筋・筋膜系、神経系に依存し、筋や筋膜の緊張を除く骨の形態および靭帯・関節包、すなわち関節形態による安定化をForm closureと言います。

 

 骨盤アライメントは前後傾、内外旋、上下方回旋、また3方向の偏位を含めて、6自由度を持ちます。仙腸関節の可動性は前屈、後屈、片脚立位で1.7-2.2°、0.5-1.3㎜と報告されていますが、屍体解剖で移動量が2㎜であったとする研究もあります。アライメントの非対称性は周囲筋の緊張を受けて生じやすく、仙骨も左右の仙腸関節の可動性に応じたアライメントを呈します。骨盤・仙骨アライメントの非対称性が仙腸関節痛に影響すると考えられていますが、仙腸関節痛が腰痛と鑑別されず、見落とされる例も多いと推測されます。その原因には仙腸関節機能の客観的な評価方法が確立していないことが挙げられます。そのため、仙腸関節痛に対する治療のゴールドスタンダードはまだ確立されていません。

 骨盤の自由度が高いことを踏まえても、その治療は1つではなく、共通の評価に基づくパターン化により治療への道筋作りが必要と考えられます。

 

 CSPT骨盤編では、仙腸関節痛を引き起こすメカニズムに、PSIS(上後腸骨棘)間の開大によるストレスが原因となるとして、その評価、治療を紹介します。PSIS間が開大する原因として、

  1. 寛骨内旋(ASIS(上前腸骨棘)間の接近)
  2. 寛骨下方回旋(腸骨稜の開大)
  3. 寛骨前・後傾

の3つがあり、これらが複数同時にみられることもあります。それぞれを引き起こす軟部組織の滑走不全は触診によって特定でき、その滑走性の改善によってPSIS間を接近させて仙腸関節の安定性を向上させることができます。

 

症例紹介                                    

年齢40代、男性

職業:トラック運転手

診断名:腰椎椎間板症

現病歴:もともと腰痛もちであったが、一週間前にぎっくり腰のようになり、しばらく起き上がることも困難になった。少し痛みは落ち着くが、立ち上がりで痛いのと、立った時に腰を伸ばせない。

 

 

◆評価

疼痛動作:立ち上がり、安静立位時痛+、前屈時痛-、後屈時痛++

疼痛部位:右腰部、右PSIS

一般的な評価:SLR問題なし(右でわずかに挙上困難)、右骨盤挙上位、右股関節伸展制限、大腿外側・鼠径部の滑走不全、右殿筋出力低下、腹部低緊張

静的アライメント評価:右寛骨前傾・内旋・下方回旋、尾骨左偏位

動的アライメント評価:後屈時に右ASIS内側・下方偏位⇒右ASISの後傾誘導で疼痛減弱(疼痛減弱テスト)

 

◆問題点

右寛骨の前傾・内旋・下方回旋による右PSIS間の開大ストレスと、それに伴う脊柱起立筋群の筋スパズム

 

目標・治療プログラム                               

◆目標

右PSIS間の接近、尾骨アライメントの修正

大殿筋、腹横筋下部の筋出力向上による骨盤輪安定化

 

◆治療プログラム

  1. 右大腿筋膜張筋、中殿筋前縁リリース
  2. 右縫工筋、鼠径部リリース
  3. 左大殿筋リリース

 

経過・考察                                    

◆経過

 治療後、立位時・後屈時痛、立ち上がり時痛の消失。重量物を持ち上げる際の痛み残存。

 

◆考察

 今回の症例はぎっくり腰になったと言って来院されたが、骨盤アライメントの修正により日常生活での痛みの消失が見られた。重量物の持ち上げでの痛みが残存し、仙腸関節のスタビライザーである大殿筋、腹横筋下部の筋出力向上が今後必要と考えられる。

 

 

 CSPT骨盤編では、微細な骨盤運動を正確に評価し、治療につなげていくコンセプト、技術を紹介しています。骨盤の解剖から、仙腸関節痛の病態、評価、治療を明確に示していきます。

 

 今後、仙腸関節の評価・治療の確立には、まず仙腸関節のバイオメカニクスの解明が求められます。広島国際大学大学院、蒲田研究室では、2D-to-3D Registration法を用いて、骨盤の微細なアライメント評価を行い、その解明を試みようとしているところであります。ご興味のある方は、蒲田までご連絡、あるいは研究室へぜひ足をお運びください。

 

~全身の関節疾患の治療法を学ぶためのセミナーシリーズ~

CSPT2017 クリニカルスポーツ理学療法セミナーのご案内・お申込み

PC版 http://www.glabshop.com/cspt2017/

モバイル版 http://www.glabshop.com/cspt2017_mb/

※5月21日(日)のテーマは「骨盤」です。

 

無料会員登録をする

Bnr 01

Prs

Interviews