コメディカルドットコム

繰り返す捻挫の原因は靱帯が緩いだけ?? -ぐらぐらの足関節に対する捻挫再発予防

  • Line
  • Hatena
1180 views

足関節の怪我として多いのは足関節捻挫です。足関節内反捻挫は足関節の外側靱帯損傷を引き起こし、距腿関節や距骨下関節の不安定性を引き起こします。これはスポーツ選手で頻繁に起こり、しばしば不十分な治療で復帰してしまいます。しかし、足関節捻挫に対して、適切な対処をしなければ慢性足関節不安定性に繋がり、不安定感や可動域制限、筋力低下などの機能低下によりパフォーマンスを低下させます。さらに、将来の変形性膝関節症(OA)のリスクを高めることになります。

 

慢性化を防ぐため、スポーツ現場に対して、適切な治療の重要性を啓蒙するとともに、医療者として最短かつ最適な治療と再発予防プログラムを提供できるように準備する必要があります。しかし、残念なことに、医療者側にもそのような治療と再発予防を確実に進めていくだけのノウハウが構築されているとはいいがたい状況にあります。

<不安定性の原因と病態>

距腿関節において、距骨滑車の前部よりも後方が広いため、その適合性は背屈位で向上し、底屈位で低下すると考えられています。これが底屈位で捻挫が起こりやすい原因であると理解されています。

 

底屈位で捻挫が好発する理由として、

①底屈位における骨性の安定性の低下

②靱帯損傷による異常な内反可動域の増大

③内果周辺における前脛骨筋の癒着により他動底屈に足部内返しが合併する「足関節内側の底屈制限」

が挙げられます。①と②は保存療法では改善できませんが、③については前脛骨筋などの滑走性改善により改善することができます。ジャンプの着地などで脱力した底屈位で荷重するような場面で、少なくとも内返しのない純粋な底屈位となることで、捻挫発生のリスクをある程度低下させることができると推測されます。

 

底屈位での捻挫に加え、背屈位でも捻挫が起こることが、動作分析の実験中に発生した捻挫についての症例報告に記載されました。これは、靱帯損傷による不安定性の有無にかかわらず、背屈位においても骨性の安定性が十分に獲得されていない状態と関連があります。背屈時に距骨が脛骨と腓骨が作っているほぞに十分にはまり込んでいないことが、背屈位での距腿関節の安定性を著しく低下させます。この足関節の背屈位における機能的不安定性を、我々は「足関節背屈位動揺性(unstable mortise)」と呼んでいます。

 

足関節背屈位動揺性の病態として、

①足をひねり(giving-way)やすいこと

②歩行の立脚初期(足関節背屈位)でも捻挫を起こすことがあること

③中間位では背屈制限があるが、距骨外旋位で背屈が増大すること、

などが挙げられます。これらに対して、足関節の安定性を高めるようなテーピングが用いられますが、長期間のテーピングの使用は足関節周囲の皮下組織の滑走不全(癒着)をもたらし、さらに背屈位での安定性を低下させることになります。

 

このときに生じるマルアライメントには以下の図のようなものが挙げられます。すなわち、中間位での背屈に制限が生じ、足部外旋位での背屈が増大します。その結果、荷重位では足部に対して脛骨が内旋することになり、下肢全体にknee-inというマルアライメントを招きやすくなります。また、外旋位となった距腿関節を内旋させようとすると踵骨が回外し、捻挫を起こしやすい肢位になります。このマルアライメントは、捻挫を繰り返し、背屈制限が増強するとともに悪化し、捻挫を起こしやすい状態となるため、スポーツを行う上でブレースやテーピングなどの外的固定に依然せざるを得なくなります。

足関節背屈位動揺性の原因として、距腿関節内側部の背屈制限、すなわち距骨滑車内側部の後方滑りの制限が挙げられます。これをもたらすのは主に足関節内側の軟部組織の滑走不全であり、徒手的な組織間リリースで解消可能な要素が大部分を占めています。具体的には、アキレス腱周囲や脛骨前内側部の皮下組織の滑走不全、アキレス腱とその全部のKager’s fat padの滑走不全、後脛骨筋・長趾屈筋・長母趾屈筋と後方関節包や内果との滑走不全などが原因となります。

 

<治療・再発予防>

上記の③は背屈位における距腿関節のマルアライメントと呼ぶべき状態であり、症状を改善するにはリアライン・コンセプトに基づく治療を行うことが必要となります。具体的には、以下の手順で治療を進めます。

①リアライン相:組織間リリースやエクササイズを用いて、足関節背屈位における正常なアライメントを獲得するとともに、背屈位動揺性を解消して他動的な足関節内旋時の骨性のend feelを獲得する。

②スタビライズ相:主にトレーニングにより、リアライン相で獲得した正常なアライメントを失わないために必要な筋力、筋活動パターンを獲得させる。

③コーディネート相:動作修正により、捻挫発生のリスクの高い動作やマルアライメント再発のリスクの高い動作を修正する。

 

<セミナー紹介>

クリニカルスポーツ理学療法セミナー(CSPT)足関節編では、この足関節不安定性に対して、適切な評価のもと、ISR®を用いた治療にて、骨性不安定性を解消し、安定した足関節を再獲得させる知識・技術を講習しています。今年度は11月12日(東京)と1月7日(札幌)の2回の開催を控えております。ご興味のある方は、下記URLをご覧ください。また組織間リリースについては、1-3月の大阪会場が残されています。こちらはhttp://www.glabshop.com/isr2017/をご覧ください。

CSPT東京会場(全身) ご案内:http://www.glabshop.com/cspt2017/

CSPT札幌会場(足関節・足部編):http://www.glabshop.com/cspt2017-2/

 

スポーツ現場で捻挫を減らすため、ぜひ受講していただきたい内容となっています。

 

<症例>

◆症例紹介 

 30歳代、男性

 競技:サッカー

 

◆現病歴:

以前から捻挫を繰り返しており、半年前のシーズン開始から練習強度が上がってきたところで左アキレス腱周囲に痛み出現。

 

◆評価・問題点

炎症症状は現在認められず、周囲軟部組織の癒着に伴うアキレス腱の幅の肥大があるものの、アキレス腱そのものは正常であった。疼痛は歩行時の立脚後期で特に強く、しゃがみ込み時痛を訴えた。可動域を確認しても背屈20°/10°p、底屈45°/20°pであり、背屈制限が著明であるため、その治療優先した。

 

背屈時のアライメントとして、距骨内側の後方滑り減少、立方骨の落ち込み、前足部の回内運動不十分、下腿外旋アライメントが認められた。底屈時の回外アライメントも認めた。

 

以上より、リアライン相終了までに解決すべき問題点として、①アキレス腱周囲の浅層、筋間の滑走不全があり、アキレス腱が正常に滑らず機能が発揮できないこと、②距骨内側の後方滑りが減少し、骨性の背屈位安定性が得られていないこと、の2点を挙げた。

 

◆目標

アキレス腱周囲の滑走性を改善すること。

距骨内側の後方への滑りを改善し、骨性の安定を得ること。

 

◆治療プログラム

1.アキレス腱周囲のリリース

 まず、アキレス腱上とその内外側軟部組織上の皮膚リリースを行い、背屈時の皮膚伸張性の改善を図った。続いて、背屈時の距骨後方移動を阻害する、アキレス腱内側の筋間のリリースを行い、背屈可動域の向上を得た。さらには、外側の腓骨筋を含めた筋間のリリースを行い、しゃがみ込み時の疼痛軽減が得られた。

 

2.リアライン・ソックスの使用

治療にて、背屈可動域の改善、距骨の後方可動性の改善が得られたところで、底屈時の回外アライメントも改善し、底屈時の筋発揮向上が認められた。そこで、可動性の維持・向上を目的に、リアライン・ソックス着用でのプレーへの復帰を果たし、プレー後も痛み増強することはなかった。

◆経過

治療2日目 歩行時痛の消失

治療後1週 しゃがみ込み時痛消失

治療後1か月後 競技復帰

 

◆考察

 今回の症例はアキレス腱周囲の滑走性の改善により、痛みの軽減が得られ、骨性の安定性を改善することで競技復帰が可能となった。

無料会員登録をする
  • Line
  • Hatena
繰り返す捻挫の原因は靱帯が緩いだけ?? -ぐらぐらの足関節に対する捻挫再発予防