第二回:自閉症を本来あるべき姿へ【東北文化学園大学 教授 | 言語聴覚士 藤原加奈江先生】

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コミュニケーションで言語はただの、ツールでしかなかった

 

―言語以外にも、自閉症などに精通されていらっしゃると伺いました。きっかけは何かあったのですか? 

 

藤原先生 主人の転勤先がニューヨークのバファローに決まりついて行きました。ついて行ったのは良いものの、何もすることがありませんでしたので、州立ニューヨーク大学バッファロー校のBehavioral Neuroscience(行動神経科学)の研究所から「来てみないか」ということで、最初は研究生として乳幼児の言語発達と脳波の研究をしました。その後、研究講師として働きました。

 

そこで興味深かったのが、研究所に病院でも臨床している臨床心理士の研究者がいて、「病院で仕事をしてみないか」と誘われ働くという経験をしたことでした。貧しい人たちが行く公立の病院でしたので、手錠されている人の検査をしたりと、ドキドキしながら働いていました。この経験をきっかけに、「臨床では両方の資格が必要」と感じ、日本に帰ってから臨床心理士の資格も取りました。

 

STと臨床心理士の資格を持った状態で、主人の転勤で仙台に行くことになったのですが、仙台で最初に紹介された仕事が児童相談所の仕事でした。そこで自閉症の子供たちと出会ったのです。

 

―移動に伴って先生がその仕事をやりたいと言うよりもなるべくしてなったって言うような感じですね。

 

藤原先生 だから「運命かな」と思っていますが、無駄になった経験は1つもなかったですね。仙台だけでなく、全国的にもそうだった思うのですが、当時は医者が自閉症という診断をしなかった時代でした。自閉傾向というだけでした。自閉症がまだ定着してなかった時代です。

 

そういう時代ですから、言語聴覚士も子供の領域ではそんなにいませんし、自閉症の領域ともなればなお更です。私も実際に自閉症のお子さんに会ったのがその時が初めてで、全くの手探り状態でした。最初に会った自閉症のお子さんは全く発話がないお子さんでした。

 

来年1年生になるというのに、「言語の訓練を受けたことがない」という「自閉傾向」のお子さんで、療育手帳の更新をする手続きのために検査に来たのです。喋れないにもかかわらず、なんの訓練もしないなんて、本来あるべき姿ではないと思いました。「何かしなくちゃ」と。この時の上司の方々にも恵まれ、「なんでもやりなさい」と後押しをしてくださり、そのお子さんの訓練を週1回させていただきました。その当時はSTも少ないですし、東北大学病院でもリハ科にはSTが非常勤で1人しかいませんでした。大学病院で1人ですからね、仕方が無かったのかもしれません。

 

―その時はまだ方法など出回っていないと思いますが。

 

藤原先生 手探りでやっていました。やっていく中で、不思議で仕方なかったことがありました。私はコミュニケーションに興味があり、それなら言語かと思い、言語心理学を学びましたが、言葉が出ているのにコミュニケーションが取れない子供たちに出会ったからです。今考えると当たり前のことですが、言語は一つのツールでしかなかったのです。コミュニケーションに本当に重要なのは、対人関係でした。言葉がなくても身振り手振りでコミュニケーションが取れますが、自閉症のお子さんたちはその意欲自体が違うんです。興味が無いというか、対人関係の障害なんですね。

 

―周りとの繋がりを持とうとしないってことですか?

 

藤原先生 というよりも、元々何かが違うのです。誰とでも話をしたくてたまらない子がいるかとおもうと、一方で全然興味を持たないこともあります。「これこそがコミュニケーションの本質的障害なんだ」ということに直感的に気付いて、興味が湧きました。これをどうにかしなければと。

 

「言語聴覚士というのは、コミュニケーション障害のプロフェッショナルでなければいけない」ということに気づいて、言語だけやっていては駄目だと思いました。当時、児童相談所は日給5,000円でしたが、言語聴覚士の病院での日給は1日10,000円は超えていた時代です。その代わり病院とは違い、お金を頂いて訓練するというものではなく、福祉になります。

 

人的環境にも恵まれていて、いろいろチャレンジができました。日本国中、先進的な取り組みをしている先生方を尋ね療育の方法をいろいろ教えて頂きました。また、みんなで「どうしたら自閉症のお子さんたちに、療育プログラム届けられるのか」を話し合い、各通園施設を訪問して、出前で私たちのノウハウを幼稚園・保育所の先生に教えたりもしました。この時の経験がその後の支援活動の基礎となりました。

 

【目次】

第一回:言語の発達と時空間

第二回:自閉症を本来あるべき姿へ

第三回:デジタルの世界

最終回:自治体に言語聴覚士を

 

藤原先生オススメの書籍

失語症言語治療の基礎―診断法から治療理論まで
Posted with Amakuri at 2018.4.13
紺野 加奈江
診断と治療社


藤原 加奈江先生プロフィール

<職種・資格>
言語聴覚士、臨床心理士

<学歴・学位>
国際基督教大学教養学部語学科言語学専攻 卒業
南イリノイ大学大学院学言語病理学・聴覚学専攻(修士) 卒業
東京大学医学部音声言語研究施設(医学博士)

<職歴>
東京都神経科学総合研究所
福岡教育大学障害児教育非常勤講師
北里大学衛生学部リハビリテーション科非常勤講師
宮城県中央地域子どもセンター非常勤心理判定員など

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