療法士が知っておきたい検査数値のミカタ

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 学療法を行う上で、必要不可欠な評価。それは、対象者を医学的な観点から客観視したデータをもとに行うものです。我々はそれを、“理学療法評価”と呼びます。物理的な視点もあれば、生化学的な視点も当然あります。

 

また、生化学的なものが、物理的なデータに誤差を生じさせることも多く存在します。その中で、我々が医療従事者として知っておかなければならないのは、各種検査の数値です。その数値が意味すること、そして理学療法を行う上で留意しなければいけない点を、今回まとめてみることにしました。

 

総コレステロール:正常値130~250mg/dl

 血液中にあるコレステロールの値を示します。血清コレステロールには、エステル型と遊離型に分けられエステル型は60~70%をしめます。

 

一般的には、肥満体型にある場合、この数値が高くなり、肥満を見極める一つの指標でもあります。そのほか、高コレステロール血症、糖尿病、甲状腺機能低下、肝臓・胆道疾患、ネフローゼにおいて高い値を示します。

 

この数値が基準より低い場合、運動強度に注意する必要があります。

 

血糖値:正常値60~100mg/dl空腹時(250mg/dl以上は運動中止)

 低血糖では、60mg/dl以下となり、インシュリンや糖尿病薬を投与している患者さんに見られます。糖尿病のほか、肝硬変、慢性肝炎、脂肪肝、脳圧亢進、心筋梗塞、などがあると高血糖になります。

 

運動中止のラインは上記数字となり、ケトン体がある場合においても理学療法は困難となります。

 

A/G比(albumin globulin ratio):正常値1.2~2.0(アルブミン3.8~5.5mg/dl)

 慢性炎症疾患、重症肝細胞性障害で低下し、ネフローゼ症候群で上昇します。理学療法士は、浮腫がある時、原因疾患のリスク管理が必要になります。

 

原因疾患のない、上昇は不活動による末梢性浮腫が起こります。

 

赤血球数:正常値 男性410万~530万個/μL 女性380万~480万個/μL

赤血球の急激な増加は、心筋梗塞、脳梗塞、多血症、肺性心において見られます。断食中、外科手術後などの大量出血後は、減少します。

減少することにより、血圧低下やめまい、意識消失が起こります。

 

ヘマトクリット値:正常値 男性40~50%,女性35~45%(40~70mg/dl)

 運動療法後など、たくさんの汗をかいた後に減少することがある。この数値が低下している場合、脱水症状を疑います。

運動療法中、動悸や息切れ、めまい、倦怠感、頭痛などがある場合は、この数値の低下を疑います。

理学療法前に、この数値を見ておき、水分補給の必要性をリスク管理の一環として、見ておく必要があります。

 

ヘモグロビン:正常値 男性14~18g/dl,女性12~16g/dl

 動脈血中の酸素量が減少するとこの値が上昇する。対策としては、赤血球、ヘマトクリット値と同じ対策が必要になります。

 

白血球数:正常値 4000~9000個/μL

 抗がん剤や放射線治療中に減少します。この数値が低値を示す患者さんの対応を行う上で、担当理学療法士の感染症の有無は重要になります。

 

血小板:正常値 15万~40万個/μL

 血小板が5万個を下回ると出血傾向が強くなり、1万個ほどになると生命の危機となる。この数値が低値を示す患者の場合、ROM中の関節内出血、筋膜リリースなどの内出血に留意するべきです。

 

尿酸窒素:正常値 8~20mg/dl

 人工透析対象者では、理学療法中に意識消失になる可能性があるため、運動強度には最新の注意をはらいます。

 

電解質検査(Na,K,Cl):正常値 Na135~150 mEq/ℓ K3.5~5.5 mEq/ℓ Cl96~110 mEq/ℓ

 高Na血症は高齢者、意識障害者、精神障害などで起こります。その反対に、高Na血症では、水を必要以上に補給することで起こります。理学療法士が留意すべき症状は、浮腫、高血圧、うっ血性心不全、幻覚です。

高K血症では、利尿剤、呼吸性アルカローシス、副腎皮質ステロイドホルモンの長期的な投与によって起こります。理学療法士が留意すべき症状は、不整脈、心停止、下痢、知覚異常、手足のしびれです。

その逆に、低K血症では、呼吸困難、不整脈、低血圧、麻痺、腱反射低下があります。

高 Cl(クロール)血症では、慢性腎炎、過換気症候群で起こります。低Cl血症では、水分過剰摂取、嘔吐、肺気腫、呼吸筋障害などで起こります。

 

参考文献

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/7732080?dopt=AbstractPlus

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/7732085?dopt=AbstractPlus

https://www.jstage.jst.go.jp/article/rika/20/1/20_1_69/_pdf

療法士が知っておきたい検査数値のミカタ

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