臨床技術の方程式【日本作業療法士協会 副会長|山本 伸一】

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第315回のインタビューは、山梨リハビリテーション病院  リハビリテーション部副部長、日本作業療法士協会副会長の山本伸一先生。
国際ボバースインストラクターの資格を持ち、若手作業療法士の技術講習会の講師も積極的に行なわれています。一方で、EBMが盛んに言われている昨今の風潮からボバースコンセプトは、「根拠がない」と揶揄されてしまうこともしばしばですが、山本先生の見解は?


 

憧れの背中を追いかけて

 

ー 「ボバースはエビデンスがない」と言われたりもしていますが、ボバースの国際インストラクターを取得しようと思ったのはどうしてですか?

 

山本 それは、先人インストラクターの方々が、カッコよかったからですよ。

 

歩けない患者さんを歩けるようにしたり、手が上がらないのが上がるようになったりするのを、生で拝見させていただいていましたから。それを見たらね、誰もボバースを否定することなんてできませんよ。「俺もいつか、あれくらい患者さんの機能を引き出せるようになりたい。よくする事ができるようになりたい」と、憧れからです。

 

ただ勘違いしてほしくないのが、なにもボバースが一番だということではありません。患者さんのためになっているものであれば、どんな手技・手法でも受け入れるべきです。事実、当院にもReoGo®-J、TMS(磁気刺激治療)、IVES等を置いていますし、各種の手技や概念等の勉強も実践しています。ボバースだけを推進しているわけではありません。

 

エビデンスに関して言うと、中枢神経疾患の場合はとても複雑ですし、さらにボバースの場合はセラピスト側の技術差もありますから、なかなか難しい問題ですよね。そして、ボバースに限らず私たちセラピストにとって、これは永遠のテーマだと思います。

 

ただ、「臨床技術って何ですか?」と問いたいです。

 

臨床技術の背景には、まず基礎医学があります。今まで習ってきた運動学、解剖学、生理学等をかみ砕いて、患者さんに活かす。触ったり、口頭指示をしたりしながら、その介入の是非を判断するわけです。そして、その判断は、経験の中で築かれた感覚によってなされているものです。

 

つまり臨床技術とは、基礎医学と経験値(知)の掛け合わせなんです。ボバースがどうだとか、各種理論がどうだとかいう話ではないということです。

 

作業療法士というより理学療法士だった

 

ー これまでの作業療法士キャリアを振り返って、何が一番大変でしたか?

 

山本 それは、ボバースが理学療法だということです。

 

実は、世界的に見てもボバースコンセプトの作業療法はほとんどないんですよ。一から作り上げていく作業はとても大変でしたね。それが活動分析研究会だったわけです。柏木先生が創設者で、30人ほどからスタートした会ですが、今では、全国から約800名が集まる大きな会になりました。

 

今から30年前は、脳卒中患者の作業療法というのは、麻痺側の手に対して何かをするという考え方はほとんどありませんでした。非麻痺側上肢を使って、うまく生活に適応させるかを考えるのが仕事でした。

 

ー でも今はむしろ、評価指標が在宅復帰率やFIMなので、麻痺側上肢が動かなくてもいいから家に帰そう、ADLをあげようという流れです。

 

山本 そうですね。「活動が自立するための作業療法」と、「発症早期からの麻痺手が動くようにする作業療法」の二つが、分けて考えられてしまっているのが問題で、同時に進めていくべきものです。

 

当院は、当然麻痺側上肢を良くしながら、ADLの実績指数も50点以上と両立できています。早く機能を良くして、早く帰すことこそが医療職としてのプロフェッショナルだからです。

 

ー それはすごい。

 

山本 当院には肩が痛くて三角巾で上肢を吊っている患者さんは一人もいません。痛いのであればとりなさい」です。だってセラピストなんだから、当たり前ですよ。三角巾で麻痺側を縛っていたって、非麻痺側で生活が自立できたらいいのか?そんなのはおかしいですよね。

 

ー その通りですね。一方で、機能を良くすることは、本来なら理学療法士がやるべきことのようにも思います。

 

山本 確かに最近は、PTとOTとオーバーラップしてきていますね。実際、僕も作業療法士のアイデンティティーについて悩んだ事があります。

 

新人の頃、当初は作業療法士ではなかったのかもしれません。ある患者さんから「私は物じゃないんだ!先生は何がやりたいんですか!」って本気で怒られた事があります。

 

今思えば、患者さんの感情そっちのけで、運動だけしかみていなかったと思います。作業療法のベースは、機能や運動だけではなく、生活や暮らしにあるというのに、機能しかみていなかったんだと思います。それでは駄目だということに気づくのが数年間かかったでしょうか。もちろんこれは、理学療法士もそういった目線が必要ですよね。

 

【目次】

第一回:臨床技術の方程式

第二回:山梨リハの人材育成メソッド

 

 

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