診療報酬調査専門組織「入院・外来医療等の調査・評価分科会」が、令和7年9月11日に開催されました。当日は、DPC制度改革、包括期入院医療の評価、看護必要度、多職種連携や働き方改革など幅広い議題について活発な議論が交わされました。本稿では、リハビリテーション専門職に関わりの深いテーマを中心にお伝えします。
DPC制度改革:複雑性係数・入院期間II・再転棟ルールの見直し
入院初期を重視した複雑性係数の設定へ
DPCワーキングからの最終報告では、従来の「1入院当たり包括出来高点数」を指標とする方法では、誤嚥性肺炎など「単に在院日数が長い」診断群が高く評価される問題が指摘されました。そのため、「入院日数の25%tile値までの包括出来高点数」を新たな評価指標に据える案が提示されました 。
入院期間IIは「中央値」へ
さらに、入院期間IIについては平均在院日数を用いてきましたが、一部の外れ値が平均値を押し上げているため、中央値を指標とする方向性が報告されました(資料「入院・外来医療分科会(3)」p.7-8)。これにより、クリニカルパスの短縮化や「より早期の退院」に取り組む必要が高まります。
再転棟は「一連の入院」として扱う方向
従来は退院・転棟後7日以内の再入院・再転棟を「一連の入院」とみなしていましたが、8日目での再転棟が突出して多いという問題が判明。そのため、「同一傷病での再転棟は7日を超えても原則一連の入院とする」という方向性が示されました。
包括期入院医療:リハ・栄養・口腔の多職種連携加算に注目
包括期医療に関する報告では、急性期病棟・地域包括医療病棟における「リハビリテーション・栄養・口腔連携加算」が取り上げられました。算定病院では患者ADL改善に良い影響が見られており、委員からは「施設基準を緩和し、算定促進を図るべき」との意見が出されました(津留英智委員:全日本病院協会常任理事、井川誠一郎委員:日本慢性期医療協会副会長) 。
看護必要度・働き方改革とリハ職への波及
議論では看護師負担軽減や夜勤手当の見直しが取り上げられ、処遇改善の必要性が示されました(河嶋知子委員:中京病院副院長・看護部長、秋山智弥委員:名古屋大学客員教授/日本看護協会会長)。これらの流れはリハ専門職の働き方改革や処遇改善の議論にも波及する可能性があります。
また、特定行為研修修了看護師の活用については、感染対策加算以外にも拡大すべきとの意見が挙がっており(眞庭謙昌委員:神戸大学国際がん医療・研究センター長)、チーム医療全体の機能強化に直結するテーマとして注目されます。
まとめ
今回の分科会では、DPC制度の基盤的な見直しと、包括期入院医療における多職種連携の推進が大きな焦点となりました。リハ専門職にとっては、
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入院初期の介入量が評価指標に直結する可能性
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中央値ベースの入院期間II導入による早期退院の促進
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リハ・栄養・口腔連携加算の取得拡大
といった点が実務に大きな影響を与えると考えられます。
2026年度診療報酬改定に向けて、各施設ではデータ分析と対応準備が急務となります。
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