物価高騰と診療報酬改定で利益率半減 「廃業検討」も14%
2025年9月17日
日本医師会は17日の定例記者会見で、全国の診療所を対象とした「令和7年度診療所の緊急経営調査」の結果を発表しました。令和6年度において医療法人診療所の約4割が経常利益で赤字となり、個人立診療所でも経常利益が前年比19.5%減少するなど、診療所経営の深刻な悪化が浮き彫りになりました。
医療法人の4割が赤字、利益率は半減
調査結果によると、医療法人診療所全体(6,761施設)の経常利益率は令和5年度の8.2%から令和6年度には4.2%へと半減しました。赤字施設の割合は24.6%から39.2%に急増し、約4割が赤字経営となっています。
松本吉郎会長は会見で「診療所の多くの先生方から経営が非常に苦しい、なんとかしてほしいという切実な声が届いています」と危機感を示しました。
コロナ関連措置廃止と物価高が直撃
木常亮常任理事は調査結果の詳細を説明しました。医療法人全体では医業収益が前年比2.3%減少する一方、医業費用は1.4%増加しました。
「コロナ補助金・診療報酬上の特例措置の廃止による減収が大きく影響しています」と指摘し、費用面では物価・人件費上昇により給与費が1.7%、医薬品費・材料費が3.1%それぞれ増加したと説明しました。
決算期が直近ほど悪化が顕著
令和7年1~3月に令和6年度の決算を迎えた診療所の経常利益率は3.2%と最も低くなりました。
木常理事は「決算期が直近に近づくほど利益率が低下している。令和6年度の診療報酬改定の影響が期間として長いほど、その影響の割合が大きい」と分析しました。
診療科別では内科・小児科・耳鼻咽喉科が深刻
診療科別では、発熱外来などコロナ対応を担った内科、小児科、耳鼻咽喉科で特に大きな影響が出ています。
木常理事は「令和6年度のコロナ関連補助金・特例措置の廃止や診療報酬改定の影響がより大きく出ています」と述べました。
地域医療の継続に懸念、14%が廃業検討
経営課題として「物価高騰・人件費上昇」を挙げた診療所が76.0%と最多で、「患者単価の減少」(60.6%)、「患者減少・受診率低下」(51.0%)が続きました。
さらに「近い将来、廃業」と回答した診療所が13.8%に上りました。木常理事は「これらはどの地域でも課題とされていました」と述べ、全国的な問題であると強調しました。
診療報酬大幅アップなど緊急支援を要求
松本会長は「このままでは診療所が事業を断念し継承もできず、病院と共に担っている地域の患者さんへの医療提供を継続できなくなります」と訴えました。
その上で、次期診療報酬改定の大幅アップ、補助金による早期支援、期中改定による緊急措置を強く求めました。
木常理事も「地域の患者さんへの医療を安定的に提供し続けるため、緊急かつ強力な支援が不可欠」と強調しました。
調査概要
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調査期間:令和7年6月2日〜7月14日
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調査対象:日医A1会員の診療所管理者71,986施設
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回収数:13,535施設(回収率18.8%)
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有効回答:11,103施設(医療法人6,761、個人立4,180)
参考資料:「令和7年度診療所の緊急経営調査結果」(日本医師会、2025年9月17日)p.2, p.4–5, p.8–9, p.13–16
定例記者会見資料:令和7年 診療所の緊急経営調査 結果 -令和5年度、6年度実態報告