結婚すると大学院は大変?
ーーー 私は、いま5年目ですが最近、徐々に結婚したりする同期も増えてきました。家庭を持つとそれなりに色々と制約が出るのか、進学したくてもできないという声を聞きます。
関屋先生:臨床経験を4,5年積んでから大学院にいこうという先生は多いと思います。それって、確かに森田さん(インタビュアー)が言った通り、子育てや結婚する年齢にあたりますね。
うちの大学院にくる先生の志望理由としては、純粋に学術的なことをやってみたい、研究法を学びたいという理由が多いですね。
しかし、結婚して子供ができたりすると、経済的にも時間的にも当然制約が生じて、大学院に行きたくても行けないということもでてくると思います。
ただ、経済的な面に関していうと、大学院って意外にお金がかからないところもあるんですね。
大学院は意外とお金がかからない?
関屋先生:例えば、うちの大学院には奨学金制度があります。国立大学でも、奨学金だけで通えるところが調べるとけっこうあるようです。
私の知り合いでも、大学院で授業料がほとんどかからなかった人が二人ほどいますので。
ただ時間の面はなかなか厳しいかもしれませんね。
仕事を辞めて大学院にいく先生も少しはいるけれども、ほとんどは常勤の仕事を持ちながら、夜と休みの日を利用して通うことになるので,どうしても時間的に厳しいですね。
私の家内はOTなので理解を得やすかったです。理学療法士となると医療職のパートナーを持つことが多いから,そういうときには比較的理解を得やすいのじゃないかな?
私は、大学の先生になろうとか、そういった具体的な目的があって大学院に行こうと思ったわけではなくて、日々の臨床の中で、自分が何をやってるのかよく分からなくなってしまっていたことがあって、それを何とかしたいと漠然と思っていました。
そんな中で,たまたま大学生でもあり,たまたま受講した大学の先生から大学院の話があったことがきっかけでした.「そんなに行きたいなら、やってみれば?」と家内が声をかけてくれたので,あまり抵抗はありませんでした。
それによって職位が上がるとか、給料が上がるわけでもない。ただ、いまよく分かっていないことを明らかにする方法を学ぶというのは将来的に必ず役に立つと思います。
ただ、仕事をしながら修士課程で2,3年学ぶというのはとても短いと感じています。ほんとはその倍くらいの時間をかけて学ぶのがちょうどいいんじゃないかと思います。
日本の大学院のほとんどは研究のための大学院で、実務の力、臨床の力、理学療法の技術が上がるための大学院っていうのは少ないですね。
関屋先生の息子も理学療法士、親としてどう思った?
ーーー 関屋先生の息子さんもPTをされていますが、最初PTをやると言い出したときはどう思いましたか?
関屋先生:もちろん嬉しいことは嬉しかったですが,しかし、年間で一万人以上PTがうまれる時代、これからは競争がより厳しくなるということ、よく考えてから自分で進路を決めろとは言いました。
最初の仕事を途中でやめてしまったことや、PTの方に進路を変えてしまったのもそのことが一因かもしれません。
でもこの仕事を選んでくれたのは、嬉しかったですね。
仕事に関してはなにをやってもいいのだけど、少しでも世の中の役に立つことをしようとは伝えていました。
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関屋 曻先生経歴
昭和大学 保健医療学部理学療法学科 教授
■著書、訳書
関屋曻:姿勢ー運動学(標準理学療法学・作業療法学)ー. 医学書院,2012,pp.183-207.
関屋曻:歩行ー運動学(標準理学療法学・作業療法学)ー. 医学書院,2012,pp.207-239.
関屋曻:研究のデザインと統計処理.三輪書店,2010. pp.1-234.
Latash ML著,笠井達哉・道免和久監訳:運動神経生理学講義(共訳).大修館書店, 2002, pp.222-239.
関屋曻:正常動作の観察と分析ー臨床動作分析(標準理学療法学)ー.医学書院, 2001, pp.1-44