キャリアコンサルタントが徹底サポート

【鵜飼建志先生|理学療法士】プロ野球の世界に入って初めて気づいたこと

7501 posts

5月27日(土)「スポーツ領域で活躍する理学療法士対談」開催!

 

理学療法士の強みを生かせばプロスポーツの世界で活躍できる

 私自身、柔道をやっていて接骨院に行ったこともありまして、最初は柔道整復師になろうと思っていました。

 

進路を決める頃たまたま祖母がケガをして、親から「リハビリっていうのもあるよ。その道もあるんじゃないの?」といわれたのが当時社会的認知がほとんどなかった理学療法士を目指したきっかけです。

 

それで、祖母の治療を見学させてもらい「なんか自分の知っている治療よりもしっかりしているものをやっているな」って思ったんです。

 

もちろん治療者によるんでしょうけどね。あとは、将来性を考えたときに病院で働ける方がいいのかなと思いましたし、なんかこの職業の方が発展していく気がしたのでこの道を選びました。

 

私は、プロ野球の理学療法士として活動していましたけども、私の経験で言えばプロスポーツの世界で理学療法士が活躍するということは楽勝だと思います。

 

もちろんものすごいレベルの他職種の先生もいますけど、その方達は医師や理学療法士と一緒に勉強している人たちです。だからすごいのだと思います。

 

カリキュラム上での知識等で考えれば圧倒的に理学療法士の方が有利だと思います。問題は技術です。技術でも圧倒できなければいけません。

 

私たちの若い時代は、知識と技術の融合が乏しく方法論しかない時代でした。学校では難しい知識ばかりを膨大に詰め込まれてもそれが治療にどう役立つのかわからない。

 

結局どう治したらいいのかわからないから、なんちゃら法に飛びつく人がいるんですけど、あまり私はそういうメソッドには興味がなかったんです。

 

そうして中日ドラゴンズ時代に伸び悩んでいる中、先ほどもお話ししました林先生(中部学院大学教授)と出会いまして、「こうやっていけばいんだ」っていうのがわかりました。

 

「しっかり触ってしっかり治す」というような感じですね。使う知識は主に解剖学と運動学と生理学、といった医学の基礎となるものだけです。

 

やはり基本というのは重要ですね。他の職種ではこれほどまでに、しっかり触ってしっかり治すっていうのはない、これは理学療法士の強みだと思います。

 

プロ野球の世界に入って初めて気づいたこと

中部学院大学は他の学校に比べると実技系の講義は結構多いと思います。ただし、なんちゃら法っていうのはほとんど教えていません。要するに「このテクニックを使いなさい」という教え方はしません。

 

僕らの伝えたい技術っていうのは、理論的背景を重視しているので「ここをこうしたいならこういう方法があるよ」というような教え方なんです。

 

ですから「この筋肉をストレッチングする」という時に、その方法(持ち方や身体の使い方など)は何でもいんです。画一的な方法論ではダメなんです。理論的にこの方向に操作すればストレッチングできると教えるわけです。

 

それをまずは自分で考えてみろ、と。そうやって教えていかないと、体格の違う患者さんとか筋肉の触りづらい患者さんが来たときに応用できません。

 

でも学校でテクニックを教えなくても良いかというとそんなことは絶対ありません。結局、治せてナンボの世界なわけです。

 

私の周りの同世代の人たちは、勉強ができる人は多かったかもしれませんが、あまり治せてるという印象はありませんでした。

 

病院にいたときは理学療法士である私達の方が他のリハビリ関係職種(柔道整復師や鍼灸マッサージ師など)より立場的に上のような感じでしたけど、プロ野球の世界に行ったら職種に関係なく一番治せる人のところに行きますからね。

 

そのときに、「あー今まで病院に守られていたんだな」って初めて感じました。

 

私は学生時代には先生から嫌われていましたし、態度も悪いと言われていました(笑)。教員になるなんて考えられない学生だったし、今のような立場になるとは僕も含め誰も想像できなかった。

 

でも今考えれば僕は頭が悪い事が実は良かったんじゃないかなって思います。なぜかと言えば、人が「無理だな」と思うようなことが、自分にはできないことだなんて気がつかないんですよね。

 

人から見れば「何言ってるんだ。お前なんかには絶対に無理だ」って思うようなことですら。エリート意識もないので失敗しても当たり前だと思っているし、また次やってみてできればいいやって思っていました。

 

結果的にある意味鈍感な部分が良かったのかなって思いますね。欠点は利点になりうる、ということです。ただ、今の自分のままじゃダメだって思ってないとダメですけどね。できない自覚があっても何もやらないんじゃ意味がないですから。

 

でも結構、今はそういった学生もいますね(笑)。成績が悪くて退学になりそうな子が「やめたくない、でも勉強したくない」みたいな、「試験は赤点だけど、でも通してほしい」みたいな感じな学生は残念ながら少なからずいます。

 

 

私の考えるEBM

 エビデンスというのが一般的には「この障害には、こういったことをやると8割よくなるよ」っていうような考え方だと先ほどお聞きするまで知りませんました。

 

でもこれではただの確率論じゃないかなって思います。私の中のエビデンスの認識は「何が問題なのかを全部チェックした上で治療を選択する」といった感じです。

 

私たち療法士は手で治すしかないので、実際触ったり、ストレスかけたりして、ここが悪いって判断した部分を見つけ治療します。

 

だから私は「腰が痛いならこれやれ、肩が痛いならあれやれ」っていう考え方はないです。ちゃんと症状に照らしあわせたオーダーメイドの治療を行わなければいけないと考えます。

 

以前学会で、腰部椎間板ヘルニア術後の症例発表があったんです。その時、私は座長をやっていたんですけども、その発表は「術後の腰痛が続いたという症例に対し、所見上、多裂筋に問題があったからそのリラクセーションをやったらすごく良くなりました」っていうような内容だったんです。

 

そしたら、そこにいた質問者の方が「では腰痛には多裂筋のリラクセーションをやれば良いということでしょうか?」っていう質問をしてきたんです。発表者は質問者のレベルの低さに気が付かず、まじめに「何の腰痛でしょうか?」と答えていました。

 

さすがにそこは私も間に入りまして、質問者に「腰痛っていうのはいろんな腰痛があります。今回のケースでは、多裂筋が原因であったので・・・。」っていうことを言ってその場をしめたっていう経験があります。

 

質問者は腰痛を一つの疾患と思ってしまっており、評価の大切さも知らず、治すための「答え」と「メソッド」だけが欲しいわけです。まさにこれは今もまだある大きな問題点の1つかもしれないですね。

 

次のページ>>私がドラゴンズを辞めた理由

 

療法士がスポーツ分野に行くのは異端な時代<<前のページ

 

 鵜飼建志先生経歴

【学歴】

平成元年:国立療養所東名古屋病院 附属リハビリテーション学院 理学療法学科 卒業

平成 6 年:名城大学 法学部Ⅱ部 法学科 卒業(法学士)修了

 岐阜大学医学部大学院 医学系研究科 スポーツ医科学専攻大学院生(在学中)

【職歴】

平成元年 4 月:名古屋第二赤十字病院 理学療法士(平成 4 年 12 月迄)

平成 5 年 1 月:中日ドラゴンズ 専属理学療法士 メディカルコーチ(平成 8 年 12 月迄)

平成 9 年 1 月:平成医療専門学院 理学療法学科 専任教員(平成 14 年 3 月迄)

平成 14 年 4 月:吉田整形外科病院 リハビリテーション科 理学療法士

平成 19 年 4 月:中部学院大学リハビリテーション学部理学療法学科 現在に至る

【トレーナー経験】

元世界チャンピオン飯田覚士ほか緑ボクシングジム メディカルアドバイザー

(平成元年〜平成18年)

東海学院大学ソフトテニス部 トレーナー(平成10年〜平成22年)

七十七銀行バドミントン部 トレーナー(平成23年〜現在継続中)

【非常勤講師歴】

トライデントスポーツ医療看護専門学校 理学療法学科(スポーツ理学療法学Ⅰ、Ⅱ)

東海医療科学専門学校 柔道整復科(リハビリテーション医学)

日本医療福祉専門学校 理学療法学科(運動療法:スポーツ障害系)

 …ただし平成 22年 まで

平成医療専門学院(スポーツ理学療法学、徒手療法ストレッチング)

 …ただし平成 20 年 まで

【有資格】

平成元年 国家資格理学療法士

平成 13 年 日本体育協会公認アスレティックトレーナー

平成 13 年 日本理学療法士協会認定 専門理学療法士(骨・関節系)

平成 20 年 日本トレーニング指導者協会認定 トレーニング指導者

平成 22 年 日本トレーニング指導者協会認定 上級トレーニング指導者

平成23年 整形外科リハビリテーション学会認定 特別上級指導員AAA

【所属学会等】

平成元年 日本理学療法士協会(現在、日本理学療法学術大会査読委員)

平成 3 年 整形外科リハビリテーション学会

 (参加当時 研究会、現在 整形外科リハビリテーション学会 常任理事)

平成 10 年 岐阜アスレティックリハビリテーション研究会 副会長

平成 11 年 日本体力医学会 会員

平成 18 年 日本肩関節学会 会員

【執筆・・・論文】

整形外科運動療法ナビゲーション上肢篇(編集委員、分担執筆)

整形外科運動療法ナビゲーション下肢・体幹篇(編集委員、分担執筆)

復帰を目指すスポーツ整形外科(分担執筆)

 …以上メジカルビュー社

理学療法 MOOK スポーツ理学療法(分担執筆)

…三輪書店

 他

 

【鵜飼建志先生|理学療法士】プロ野球の世界に入って初めて気づいたこと

最近読まれている記事

企業おすすめ特集

編集部オススメ記事