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第三回:生活期での患者さんの予後予測はどのように行うか【竹林崇|作業療法士】

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生活期での患者さんの予後予測はどのように行うか

 

―― 竹林さんは、予後予測の本も書かれていますよね。外来で発症か何年か過ぎた患者さんがきたとき、「良くなりますか」と聞かれたらどのように声をかけますか?

 

 

竹林 色々予後予測に関しては、たくさんの書籍や論文等も多く出ています。ただし、一昔前はプラトーに達して「上肢麻痺は良くならない」と言われていた慢性期の患者さんでも良くなる人を多数経験します。

 

 

ただし、どのような特徴の人が、どれくらいよくなるかということを正確に把握しているわけではありません。

 

 

慢性期に入ってからCI療法を受けたりする人は大勢いらっしゃいますが、2015年にTopics in stroke rehabilitation誌から発刊した私たちの研究でも、麻痺手の使用頻度が向上する(行動が変わる)と、生活期の患者さんでも麻痺手の機能が向上することが明らかになっています。

 

 

こう言った新しい事実はリハビリテーションの分野だけでなく、脳卒中の治療においてもたくさん出てきています。

 

 

予後予測は、数年から数十年前の患者さんを対象とした研究で明らかになっている事実であり、医学や科学が進歩した今の時代に全てが当てはまるわけではないと思っています。

 

 

だから、「良くなりますか?」と患者さんに聞かれた際には、「良くなる方」、「良くならない方」のそれぞれの情報を提供し、患者さんがCI療法を行うかどうかの意思決定に役立ててもらいます。

 

 

予後予測は非常に大事な学問ですが、過去のものという意識を常に持ち、その予測を超えていく姿勢は重要だと思います。

 

 

「予後予測で良くならないから、あなたは良くなりません」と言った話を頭ごなしに話すのではなく、「予後予測では、良くならないと言われているが、良くなった人は麻痺手を生活で積極的に使われた方が多いです。」と言ったように、良くなる可能性を孕む因子を伝え、モチベーションを下げない関わりが大切だと思います。

 

 

あとは、最新の医療や技術を受けられた患者さんにおける予後予測なども検討していく必要もあると思います。過去のものだけを信じずに、今のリアルな予後をできるだけ早く明らかにしていくことも重要だと感じます。

 

 

―― 脳卒中の患者さんとの出来事で印象に残っていることってありますか?

 

竹林 特にこの人というのはありませんが、動かなかった麻痺手が、動くようになり、その手を使った、彼らの大切な作業を再獲得できた時はとても嬉しいですね。

 

 

ただ腕手が挙がるようになったとか、手指の握り離しのレベルではなく、その人にとって大事な作業が麻痺手を使ってできるようになったときの、患者さんの喜んだ顔を見たときは、その人の人生に少しは良い関わりができたかなと、感銘を受けます。

 

 

今の学生さんはイケてない

―― 竹林さんは吉備国際大学の准教授をされていますが、今の学生さんをみて思うことはありますか?

 

竹林 私自身、どちらかというと学生時代不真面目な方だったので、逆に本学で拝見する最近の学生さんはよく勉強しているなと思います。

 

 

中には以前よりも「資格が取れるから」、「職がある、生活のため」といったように、「作業療法士になりたい」と言った目的から少しずれているなと感じる学生もいますが、そう言った学生さんは僕らの時代にだって、少なからずいたと思うのです。

 

 

逆に、そういう学生さんたちが、「ゆとり」などの時代が作り出した別のものと結びつけられ、変にクローズアップされているだけだと思うのです。今の若い世代の学生さんの中にも優秀で、僕らの世代よりも熱く作業療法士になることに意思を燃やす学生さんはいますよ。

 

 

また、年々療法士としての働き方も多様性が出てきており、以前のように、単一においてのみ教育、臨床、研究を行えばいいという時代でもありません。

 

 

例えば、良し悪しは別にして、このインタビューをされている方のように、病院+別の仕事を掛け持ちするという考えも、今まではなかったわけですから。

 

 

どの世代にも、いわゆる「イケてない人」は必ず存在すると思います。だから、上の世代が「最近の若いのは…学生は…」と、世代でくくるというのはちょっと違うと個人的には思っています。

 

 

ただし、患者さんをはじめとした他人のことをないがしろにしてしまう学生さんには、しっかりとした教育が必要だと思います。ただ、それは昔も今も同じことだと思うのです。

 

作業療法士である前に、一人の人間である

―― 竹林さんにとってプロフェッショナルとは??

 

竹林 プロフェッショナルって、単純にその仕事で言えばお金を稼ぐということ、という意味だと思います。

 

 

私は作業療法士である前に、一人の人間であるので、お金を稼いで家族を守ることが大切です。

 

 

ただし、この仕事の場合、いい仕事をすれば、ただお金をもらえるだけではなく、患者さんの再び彼らのステージで生きていくためのリハビリテーションに関わることができる上に、多くの人からも感謝されるラッキーな仕事だと思います。

 

 

だから、対象者の方の意思決定を尊重した上で、しっかりとした手法と知識を使って、最上の結果を出す。これがプロフェッショナルだと思います。

 

【目次】

第一回:CI療法は、麻痺手を生活で使うための手段

第二回:「印象」や「熱意」だけではなく、研究をベースに

第三回:生活期での患者さんの予後予測はどのように行うか

 

 

竹林崇さん略歴

学歴

2003年 川崎医療福祉大学 医療技術学部 リハビリテーション学科 卒業

2011年 大阪府立大学大学院 総合リハビリテーション学 入学

2013年 大阪府立大学大学院 総合リハビリテーション学 終了

2013年 兵庫医科大学大学院 医科学先行 高次神経制御系 

     リハビリテーション科学 入学(現在所属)

職歴

2003年 兵庫医科大学病院 リハビリテーション部 入職

2016年 兵庫医科大学病院 リハビリテーション部 退職
2016年 吉備国際大学 保健医療福祉学部 作業療法学科 准教授(現職)

書籍

  1. 齋藤祐樹,友利幸之助,上江洲聖,澤田達徳,編(竹林崇 [分担著者]):作業で語る事例報告:作業療法レジメの書き方・考え方.医学書院,東京,2014年
  2. 道免和久,編(竹林崇 [分担著者]):ニューロリハビリテーション.医学書院,東京,2015
  3. 斉藤秀之,加藤浩,金子文成,編(竹林崇 [分担著者]):感覚障害で挑む 感覚・運動機能回復のための理学療法アプローチ.文光堂,東京,2016

学術論文

  1. Kagawa S, Koyama T, Hosomi M, Takebayashi T, Hanada K, Hashimoto F, Domen K. Effects of constraint-induced movement therapy on spasticity in patients with hemiparesis after stroke. J Stroke Cerebrovasc Dis22: 364-370, 2013
  2. Takebayashi T, Koyama T, Amano S, Hanada K, Tabusadani M, Hosomi M, Marumoto K, Takahashi K, Domen K. A 6-month follow-up after constraint-induced movement therapy with and without transfer package for patients with hemiparesis after stroke: a pilot quasi-randomized controlled trial. Clin Rehabil 27: 418-426, 2013
  3. Marumoto K, Koyama T, Hosomi M, Takebayashi T, Hanada K, Ikeda S, Kodama N, Domen K. Diffusion tensor imaging predicts the outcome of constraint-induced movement therapy in chronic infarction patients with hemiplegia: A pilot study. Restor Neurol Neurosci 31: 387-396, 2013
  4. Takebayashi T, Amano S, Hanada K, Umeji A, Takahashi K, Koyama T, Domen K. Therapeutic synergism in the treatment of post-stroke arm paresis utilizing botulinum toxin, robotic therapy, and constraint-induced movement therapy. PM R6: 1054-1058, 2014
  5. Amano S, Takebayashi T, Hanada K, Umeji A, Marumoto K, Furukawa K, Domen K, et al. Constraint-induced movement theraoy after injection of botulinum toxin type A for a patient with chronic stroke: One-year follow-up case report. Phys Ther, eoub ahead of print, 2015
  6. Takebayashi T, Amano S, Hanada K, Umeji A, Takahashi K, Marumoto K, Kodama N, Koyama T, Domen K. A one-year follow-up after modified constraint-induced movement therapy for chronic stroke patients with paretic arm: a prospective case series study. Top Stroke Rehabil22: 18-25, 2015
  7. Tanaka H, Nagata Y, Uematsu M, Takebayashi T, Hanada K, Inokawa M, Fukuhara K, Ogawa Y, Haga D, Kakegawa Y, Nishikawa T. Development of the Cognitive test for severe dementia. Dement Geriatr Cong Disord 40: 94-106, 2015
  8. Takahashi K, Domen K, Sakamoto T, Toshima M, Otaka Y, Seto M, Irie K, Haga B, Takebayashi T, Hachisuka K. Efficacy of upper extremity robotic therapy in subacute post stroke hemiplegia: An exploratory randomized trial. Stroke 47: 1385-1388, 2016

海外活動

2012年 Alabama university, Birmingham Constraint-induced movement 

     therapy training course 修了

2012年 JICA 専門家として現地に短期派遣

第三回:生活期での患者さんの予後予測はどのように行うか【竹林崇|作業療法士】

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