腹圧性尿失禁や妊産婦のケア。世界のスタンダードは?【大内みふか先生|理学療法士】

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ウィメンズ・メンズヘルス分野に興味を持つきっかけ

ーー ウィメンズ・メンズヘルス分野に興味をもったきっかけを教えてください。

 

大内先生 ウィメンズヘルス分野において、大変有名なオーストラリアの先生の講習に参加したのことがきっかけでした。

 

当日は、骨盤底筋群の解剖図を見たり、人体アナトミーで実際に膀胱、子宮、直腸、その周りに骨盤底筋群があることを学び、腹圧性尿失禁に対して理学療法士が関わることができるという事を知りました。

 

また、1999年の理学療法に掲載されていた「泌尿器科領域への挑戦」という題名の巻頭言を読み、理学療法士も排尿に問題がある人に対して関われるという事を知り感動しました。

 

こんなエピソードもありました。大腿骨頸部骨折の80代女性のリハビリをさせていただいていた際、順調に退院まで進んでいました。いざ退院になるとき、試験的に外泊を実施していたのですが、翌日の家屋調査で、部屋に入った瞬間に尿の臭いがしていました。

 

それまで病院にいるときは、近くにトイレがあったため、排尿コントロールについては全く気付かずにいました。よくよく聞いてみると、生理用のパッドを使って対策をしていたそうです。

 

「もっと早くに気付いていれば」とも思いましたが、その選択肢すら頭にはない状況でした。手術を受けてから歩行スピードも落ち、間に合わなくなってしまったそうです。そんな経験も重なり、興味を持ち始め講習を受けたというのがきっかけです。

 

 

世界のスタンダード

ーー それをきっかけに学びを深め、オーストラリアに向かったという事ですか?

 

大内先生 そうですね。西オーストラリア州にある大学に行き、研究ではなく、卒後教育として大学院の臨床コースに通いました。オーストラリアでは、スーパーバイザー指導の元、病院見学・実際の治療見学、授業を受け、骨盤底筋群への介入の仕方を学びました。

 

尿失禁に対する学びとともに、妊産婦のケアについても学びました。エクササイズではBMIを高めすぎない様、水中エアロビなどを行い体重コントロールを行いながら、出産に備えていました。特殊かもしれませんが、産科の病棟もあり、お産の見学や帝王切開の手術見学などをさせていただきました。

 

オーストラリアのPTは病棟も回り(ラウンド)ます。出産は手術と違い、基本的にはいつ起こるかわかりませんので、前日出産された方の一覧表を元にPTがラウンドします。

 

出産直後に疼痛で座位ができなかったり、術後の腫脹もあるため、会陰部を直接確認します。中には尾骨周辺の靭帯が引き伸ばされ、うまく座位姿勢を取れない方もいます。

 

会陰切開といい、産道を確保するために会陰部を切開する事もありますが、その部分に、尿が当たらないよう、排尿指導もあります。例えば、会陰部は後方に位置するため、前屈みになり、そこにトイレットペーパーを当てて排尿する方法があります。

 

その他、妊娠中に便秘チェックをし、出産後も便秘にならないよう指導や力みすぎないよう指導することもあります。また、食事指導、帝王切開をしている方へ起き上がりや咳の方法を指導します。

 

「これが世界のスタンダードなんだ」と衝撃を受けました。日本人としては、目新しい事ですが、オーストラリアでは長年行われ、世界の標準的な理学療法の一つを見学して来ることができました。

 

腟圧計や筋電計などの検査機器を使いながら、骨盤底筋の筋力検査など実技・座学も受け的ました。

 

ウィメンズヘルスという事に戻れば、思春期から夜尿症の子もいますよ。

 

オーストラリアでは、小児の尿漏れに対するPTもいます。非侵襲的な方法で、超音波を当て、お腹を見ながら尿を止めることができているか、リラックスができているか、締めているだけでなく緩めることも評価していました。

 

アラームを使用し、定時で排尿させ、失敗しないようにと、思春期から産前・産後、閉経まで、女性の一生の中で理学療法士が関われる分野を教えていただけるコースでした。

 

 若い方でも強い衝撃が加わると漏れてしまったり、アスリートですとトランポリン選手や長距離ランナーの方、重量上げの選手など、クラブ活動からトップアスリートまで幅広く問題を抱えているケースがあります。

 

大学生の方で、カラオケで大笑いをすると漏れてしまった方もいました。ご本人自身も恥ずかしいと感じますし、とてもQOLを下げてしまいます。高齢者だけでなく、幅広い年代に対して取り組む必要がある問題です。

 

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