村田先生 私はたまたまリハビリの研究を始めようとしていた研究者が近くにいまして、そのプロジェクトに加わることになりました。
臨床に全く関わっていない研究者の中にも、リハビリに興味を持つ人が増えていると思います。研究者の視点としては、例えば学習や発達の面から脳がダイナミックに変わるという現象に興味を持っているようです。
特に1996年に「大人サルの脳は、トレーニングをすると脳に変化が生じ機能回復が起こる」という論文が投稿され、ちょうどリハビリの研究に興味を持つ人が増えてきた時期だと思います。
私の周りの研究者を見ると「人とは何か」、「心とは何か」といった意識で研究者の道に進むことが多いように感じます。
しかし、理学療法士や作業療法士は、現場で疑問に思ったことを研究するために入ってくる人が多いと思います。
そのため問題意識が明確で、より生活するために役に立つ研究ができると思っています。
― 理学療法士や作業療法士は20代から30代のセラピストが多く、結婚・妊娠・出産といった女性のライフイベントを控えている人も多くいます。女性の研究者の働き方に関して教えて下さい。
村田先生 女性の研究者は全体の2〜3割です。ライフサイエンス系の分野では、もう少し比較的多い印象です。私の研究室は半分が女性です。
産総研ではバックアップが受けやすく、育休もしっかりしています。
子供を育てながら研究が行いやすくなってきていると思います。
村田先生のオススメ書籍
1.完訳 7つの習慣―人格主義の回復
スティーブン・R. コヴィー (著), フランクリンコヴィージャパン (翻訳)
これは研究というよりは生き方のアドバイスの本ですが、生活や仕事をよりよくするための
参考になると思います。
2.脳損傷後の機能回復―治療・訓練の理論的根拠 津山 直一 (翻訳), Paul Bach‐y‐Rita
たくさんの論文が紹介されていて、脳の回復に伴って起こる変化について広く知ることができると思います。
3.心が脳を変える―脳科学と「心の力」 ジェフリー・M. シュウォーツ (著), シャロン ベグレイ
一般の人に向けて書かれた本です。強迫神経症の治療が中心に書かれていますが、トレーニングによって脳を変化させるというのはリハビリの広い分野に共通することだと思いますので、興味深く読みました。
― 最後に先生にとってのプロフェッショナルとは?
村田先生 世の中に対してどう貢献できるか、困っている人をどうサポートできるか、というところまで考えて研究できる人です。
そして、“成果を出せる”ことが研究者としてのプロフェッショナルではないかと考えています。
*目次
第一回:脳損傷サルの把握機能の回復の違い
第三回:研究者としてのプロフェッショナル
村田弓先生プロフィール
2003年3月 茨城県立医療大学 保健医療学部 作業療法学科 修了
2008年3月 筑波大学大学院 人間総合科学研究科 修了 博士(神経科学)取得
2008年4月 日本学術振興会特別研究員 (DC2,PD)
2012年4月~ 国立研究開発法人 産業技術総合研究所 人間情報研究部門
システム脳科学研究グループ 研究員