臨床心理士もいいなと思っていた
ー 理学療法士を目指したきっかけを教えてください。
石田先生(以下、石田):理学療法士を目指したきっかけは高校生のときです。
硬式野球部に所属していて、トレーナーさんがいたんです。人の体を治す仕事はいいなと思ったところから、将来はトレーナーがいいなと思っていました。しかし、実際どんな形で職業になっていくのか疑問に感じ、母親に相談したら、理学療法士という資格があるという話になりました。
母親が肢体不自由児の療養センターで保育士として働いており、そこに理学療法士さんがいたんです。子供の発達を促す、小児のリハビリテーションを行っており、こういう仕事もあるのだと知りました。
もうひとつは部活の監督さんの奥さんが透析をしており、体の内部に関すること、つまりは内部障害など透析の人にもなにかできることないのかなと考えるようになりました。
トレーナー、小児の子供にサポートする、それから体の中のことに関してもなにか関わっていけることは何だと頭の中でイメージをしていて、やはり理学療法士だと思い立ったのが理学療法士を目指すきっかけでしたね。
ー その他になりたかった職業はありましたか?
石田:臨床心理士もいいなと思っていました。
人の話を聴くことが仕事もいいなと思ったのですが、聴くだけでは弱いなと思いまして。人の気持ちにリーチするならば、その前に人の体に触れたほうがいい。人の体に触れて良くなった後に、言葉をかけてポンって背中を押せるほうが強いと思ったんです。
70点取ることを目標にしていた
ー 養成校時代はどのような学生でしたか?
石田:基本は不真面目です(笑)。ただ、一期生だったので先輩がいなかったので、何でも0から自分達で作らなきゃいけないため、仲間で音楽サークルを創って部長をやっていました。
勉強は、70点取ることを常に目標にしていました。できる限り勉強したくない人だったんです。「70点を取る」って一番効率的じゃないですか。テストに落ちないし、そんなに頑張らなくてもいい。
80点取るための勉強をするには70点取るための倍、勉強しなければいけないんです。90点取ろうと思ったらその倍勉強しなければいけないんですよ。
でも興味のあるやつだけは超勉強するからある分野では成績がSとかAになる。そういう勉強をする学生でした。
ー バイトなどはされていましたか?
石田:大学生の時のバイトはずっと予備校で4年間教えていました。バイトにもすごく思い出にあります。これまでに3つしか経験しておらず、他にはコンサート会場スタッフ、クレジットカード販売の営業をしていました。
ローソンの店内で、ローソンカードの営業の仕事です。相手から「あなたがいうなら入会しようかしら」と言われることに喜びを覚えていました(笑)。
大学院での研究
ー 次に話を進めていきたいと思います。修士を神奈川県立保健福祉大学で取られて、そのあと東京医科大学で博士を取得。その経緯を教えていただけますか。
石田:経緯は、実は最初から企画していたんですよね。大学3年生のときから、医療の勉強をしているのだから6年間勉強するのが当たり前だと思っていたのがまず大学院に行く経緯です。
3年生の時、解剖の恩師にあたる先生と出会いました。その先生に解剖について多くを学ばせてもらいました。その存在は大きかったと思います。
ー どのような研究をされていたのでしょうか?
石田:研究のテーマは、「セラピストは何をみたらいいのか」。教科書はビジュアル的にきれいに書いてあるんです。でもそれを実物でみると、あれ?となります。
ビジュアルと実物にはずれがあり、本当の体の位置と写真のずれはすごい気になっていました。あと感触ですね。血管は押すと弾力があるが、神経は弾力がない。
研究していた内容は、「何を診たらいいのか」という実習生を対象にしたアンケート調査で、実習の前と後にそれがどう変わったかを調べていました。
でもそれはただのお題目で、やりたいのは何を見ているかきちんと考えなければいけないと伝えられるようになりたかったんです。
起業したいとは1ミリも思っていなかった
ー 現在、デイサービスや訪問看護ステーションを経営されていますが、起業に向けて気持ちが切り替わっていったタイミングは?
石田:まず、起業したいなんて1ミリも思ってなかったです。
僕の中のストーリーとしては、大学を卒業し、学校の先生になることしか考えてなかった。
頭が切り替わったのは臨床経験4年目くらいの時ですね。1人でできる限界があると気づいたのがまず一番大きなきっかけでした。
当時、技師長には、「患者をちゃんとみろ。相手が話している事をよく聞いて、よくさわれ。」と怒られていました(笑)ちゃんと患者さんと向き合わなきゃと考えている時でした。
ある時、患者さんから「石田先生は自分で仕事やらないの?」と言われたんです。しかもたまたま社長などをしている方に3人連続で。
自分の脳内とかけ離れた話だったのですが、言われるということはできるんじゃないかなと思い立ち、1年間くらいかけて様々な方と話したり、異業種交流会や、営業・経営、数字の見方、一定の仕事の創り方の勉強に毎日のように行きました。
そして、「自分でやるんだ」と決意したのが臨床6年目の時でしたね。社長になりたいではなく、より多くの人の役に立ちたい、“最大多数の最大幸福”というのが根底にありました。
*目次
第一回:大学院の博士課程中に起業したワケ
第三回:物ではなく事の時代
石田輝樹先生 プロフィール
・職歴
2007-2013 横浜労災病院 リハビリ中央部 理学療法士
2013- ㈱リカバリータイムズ 代表取締役
・学歴
2007 神奈川県立保健福祉大学 リハビリテーション学科 卒業(理学療法士)
2009-2011 神奈川県立保健福祉大学大学院 修了(リハビリテーション学修士)
2011- 2015 東京医科大学大学院博士 修了 博士(医学)