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第二回:高齢者の介護予防と健康増進【国立長寿医療研究センター 健康増進研究室室長|理学療法士 土井剛彦先生】

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祖父母と一緒に過ごした幼少期

ー 現在はどのような研究をされているのですか?

土井先生 正直、いろいろな研究を同時に行っているので、「何を」というのも難しいのですが、「高齢者をどうすれば活動的な生活へ導くことができるのか」といった大きな命題の元に、高齢者の介護予防と健康増進をテーマに研究しています。

 

最近のプロジェクトに、セルフモニタリングの効果を検討するもので「コグニノート」という日記のように記録をとるツールを作り、高齢者が自分で1日どのような活動をしたのかを身体活動、知的活動、社会活動などのように種類別に記入してもらいます。

 

記入されたノートをもって、市役所や公民館などの施設に行き、ノートをスキャンすることで、クラウドにデータ集積されます。これを行うことで、高齢者が一ヶ月にどのような活動をしていたのかを調査することができます。

 

このようなセルフモニタリングが高齢者の健康状態にどのように影響を及ぼすかを検討しています。研究の方法も、テクノロジーの進化によって、シュッとしてきましたね。

 

 

ー そもそもなぜ高齢者に興味が湧いたのでしょうか?

 

土井先生 子供の頃、祖母と祖父といっしょに過ごした時間が長かったのがきっかけなのかなと思います。家も近所で、遊び相手も祖母と祖父だったように思います。

 

祖母はいまでも健在で、今年で97歳になります。祖母の親も90歳以上の寿命でしたので、くしくも長生きする遺伝子を引きついでいます。笑 そんな幼少期であったため、高齢者がすごく好きです。

 

 

どこか未完成で、若くて元気がある人の魅力

ー 教育者の道には興味がないのですか?

土井先生 実は将来的に教員になりたいと思っています。塾や家庭教師のバイトをやっていたこともあり、教えるのは好きなんです。なんか学生っておもろいじゃないですか。笑 

 

なんていったらいいのかわかりませんが、どこか未完成で、若くて元気がある人って、魅力的だと思うんです。若い子の成長する姿を見ることができる教員という仕事はやはり魅力的ですね。

 

私も知らぬ間に歳をとってきていて、若い世代の方と接する機会が昔に比べると少なくなってきた今だからこそ、余計に感じますね。もちろん、まだまだ研究者としてやらなければならないことがありますので、すぐにという話ではないのですが、将来的にはやりたい仕事の一つです。

 

研究者としては、私はまだまだ若手の部類に入りますので、もっともっと精進しなければならないなと思っています。

 

理学療法士になる若い子も年々増えてきている中で、なかなか研究って、良い印象がないといわれます。最初の段階で、職場やブロックの発表会などで急に研究することになり、色々とうまくいかなくて、という経験から、あまり研究をやりたがらなくなることが多いと聞きます。

 

そんな状況をどうにかしたいと思い、山田実先生が中心となって、研究に親しみがわくような、難しく感じないような、そんな研究の入門書となる書籍(PT・OTのための臨床研究はじめの一歩〜研究デザインから統計解析、ポスター・口述発表のコツまで実体験から教えます)を一部執筆しました。

 

研究が嫌になる原因の一つに、ちゃんとした研究のやり方を、全員が等しく正確に教えられていないということが問題だと思っています。今でこそ研究に関する教育環境が整ってきていますが、そのような環境やご指導いただく先生に出会えないともったいないですね。

 

研究は特別難しいものではなく、基本的な手順は決まっているので、それをこつこつと行うことが求められます。臨床で働いている人なんかは、研究課題が日々の業務のなかにたくさんあるわけで、材料がそこら中にあるため、実は研究をはじめやすい環境にあると思っています。

 

患者さんをみていれば「なぜこうなるんだろう?」や「なぜうまくいかないんだろう?」と疑問に思うことがたくさんあって、それが研究につながるはずです。

 

昔と違って、論文を検索するのも専門サイトでなくてもググればすぐに出てきます。大昔の研究者にしてみれば、「ネットで検索するとは何事だ」と言われるかもしれませんが、情報にリーチできる速度や精度は日々進化していると思います。

 

我々の世代は、学生のときにギリギリパソコンが普及しはじめた世代ですが、今の子は最初からスマホです。若い子のプレゼン資料をみると自分の昔の資料と比べて圧倒的にわかりやすく、キレイで、見やすい資料を作れていると思います。

 

これは大きなアドバンテージで、豊富な情報に加え進化した技術を自在に操れる今の世代の人のほうが、研究に必要な技術の習得は早いのではないかと思います。

 

あとは「やるのかやらないのか」ということだと思います。やり切れる強さがあるのかどうか。論文というものを、書ききることが大事です。我々は、研究そして成果を還元することを生業にしている身です。だからこそ、常に強い意志をもって努力をし続けることが必要だと考えています。

 

【目次】

第一回:研究者として生きる

第二回:高齢者の介護予防と健康増進

第三回:楽しいリハビリ

最終回:社会保障の限界

 

土井先生オススメ書籍

 

 

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土井剛彦先生のプロフィール

資格:理学療法士

学位:博士(保健学)

所属学会:日本理学療法士協会、日本老年医学会

受賞歴:

  • 第4回藤田リハビリテーション関連施設臨床研究会 最優秀発表賞
  • 第49回日本理学療法学術大会 優秀賞
  • Geriatrics & Gerontology International the 2015 Best Article Award受賞
  • 第8回理学療法学優秀論文 最優秀賞

社会活動:

  • 愛知県理学療法士会学術誌部
  • 日本理学療法士学会 編集委員会査読委員

好きなサッカー選手:

セバスティアン・ダイスラー(Sebastian Deisler)

ジャンルカ・ザンブロッタ(Gianluca Zambrotta)

論文実績:

Research Map(http://researchmap.jp/takehiko/

主な著書:

 

 

認知症予防運動プログラム コグニサイズ®入門: ハイブリッドDVDつき
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