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第一回:安易な声がけへの後悔【ヨーク大学 心理学部 日本学術振興会海外特別研究員|作業療法士 伊藤文人先生】

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モチベーションの低かった学生時代

 

― 先生が作業療法士を目指したきっかけを教えてください。

 

伊藤先生 目指したきっかけは特にありません。正直に言いますと、医学部に行きたいと思っていましたが、偏差値的に難しく、一浪しました。浪人中は麻雀にハマってしまい、「もう浪人しても無理だな」と思い、一年で諦め、北大(北海道大学)作業療法(以下OT)学科を受けたという感じです。

 

まぁ医療系で「医師とも近いのかな?」というのと、「資格を持った方がいい」という親の助言もあったので、明確なビジョンもなく選びました。

 

― 学生時代はどうでしたか?

 

伊藤先生 そもそもモチベーションが低かったですし、OTに対する理解や心構えもなかったので、教官からしたら扱いにくい存在だったと思います。ただ、運動学がすごくおもしろくて、それだけは結構しっかり勉強しました。

 

OTに関しては、概念が理解しにくくて、今でも理解できた感じはないですね。例えば、運動学とかであれば「こうしたらこうなる」みたいな、ロジックがはっきりしているものが多いですが、OTは「分かるようで分からない」状況でしたね。

 

すごくモヤモヤしながら、評価実習や長期実習にも行きました。特に長期実習のとき、身障は脳卒中の方だったのですが、患者さんに対して、安易に「治ると良いですね」と言ってしまったんです。本人も薄々、「治らない」というのが分かっているけど、でも治したいみたいな時期で、すごく葛藤がある時期に、安易な発言をしてしまったなと反省しています。

 

― 実習では結構苦労されたんですか?

 

伊藤先生 身障でも精神でも苦労はしましたが、実習自体は問題なくクリアしました。ただ自分の中では、「OTとしてお給料もらいながらやっていくのは自分には無理かな」と思いました。

 

長期実習が終わってから卒論のシーズンまで、就活も大学院受験もしていなかったので、境先生(当時の指導教官、境信哉教授)に「卒業後どうするんですか?」と聞かれました。でも「どうしますかねー」っていう状況だったので心配されて、「私の出た大学院受験してみたらどうですか?」と提案されました。

 

そのときの卒業研究で、視覚性失認※1をテーマにやっていて、視覚性失認の研究では東北大学の平山和美先生(現、山形保健医療大学教授)が大御所だったこともあり、受験してみることにしました。

 

― 研究自体にはもともと興味があったんですか?

 

伊藤先生 もともと研究に興味があったというよりは、理屈で納得できることが好きという人間なんです。自分にとって曖昧な概念同士で話をする、というのが全く分かった感じがしなくて苦手だったんですよ。運動学が分かりやすかったのは、自分の中で科学だなって思えたからだと思います。視覚性失認の症状とメカニズムを知った時は、一見理屈が通らないようで、でも理屈が通っていてびっくりしましたね。

 

― 臨床はやらずに大学院に行かれたんですか?

 

伊藤先生 そうです。視覚性失認の研究をするつもりで大学院に入って、最初は病院で患者さんのデータを取らせてもらっていたんですが、たまたまそこでfMRIやPETを使ってニューロイメージングの研究していた、藤井俊勝先生(現、東北福祉大学教授)や阿部修士先生(現、京都大学准教授)と仲良くさせていただき、一緒に研究をすることになりました。

 

※1視覚性失認:目の前にあるモノが何なのかを答えられない状態のことを言います。このとき、視力低下や視野欠損によるものでもなく、失語や認知機能の低下によるものでもありません。そのため、視覚によってモノが特定できなくても、触覚や聴覚などの他の感覚を使えば認識ができます。つまり、視覚性失認とは視覚入力に限局したものであるということです。視覚性失認の症状を分類する方法は、[情報の処理過程に生じた障害にもとづく分類]と[認知できない視覚対象の種類による分類]の2通りに分けることができます。

 

【目次】

第一回:安易な声がけへの後悔

第二回:研究者への道を歩む

第三回:酸っぱいブドウ

最終回:基礎研究者と臨床家を繋ぐ

 

伊藤先生オススメ書籍

語源で覚える英単語3600
Posted with Amakuri at 2017.10.29
藤井 俊勝
青灯社

 

伊藤文人先生 プロフィール

経歴

2017年8月 – 現在:イギリス ヨーク大学 心理学部 日本学術振興会海外特別研究員

2017年6月 – 現在:北海道大学大学院保健科学研究院 客員研究員

2014年10月 - 2017年7月:東北福祉大学感性福祉研究所 特任講師

2013年4月 - 2014年9月:京都大学こころの未来研究センター 日本学術振興会特別研究員(PD)

2010年4月 - 2013年3月:東北大学 大学院医学系研究科 障害科学専攻博士後期課程 博士(障害科学)

2010年4月 - 2012年3月:東北大学大学院医学系研究科高次機能障害学 日本学術振興会 特別研究員 (グローバルCOE) (DC1)

2008年4月 - 2010年3月:東北大学 大学院医学系研究科 障害科学専攻博士前期課程

2004年4月 - 2008年3月:北海道大学 医学部 保健学科作業療法学専攻

 

受賞歴

15th European Congress of Psychology Best poster award

東北大学医学系研究科 辛酉優秀学生賞 特別賞

第14回日本ヒト脳機能マッピング学会 若手奨励賞

第13回日本ヒト脳機能マッピング学会 若手奨励賞

 

作業療法神経科学研究会

ホームページ

https://www.ot-neuroscience.com

facebook

https://www.facebook.com/作業療法神経科学研究会-272019856333321/

第一回:安易な声がけへの後悔【ヨーク大学 心理学部 日本学術振興会海外特別研究員|作業療法士 伊藤文人先生】

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