最終回:自身が考える理学療法士×個人事業主【稲垣郁哉】

12672 posts

 私が考える理学療法士における個人事業主のポイントは3つあります。1つ目は、どこかに勤務している兼任の個人事業主です。

 

この勤務先は、自身の原液(ベース)を生産できるところが良いと思います。分かりやすく言えば、臨床ベースの病院勤務か、教育ベースの学校勤務とかでしょうか。

 

自身は、臨床ベースの原液を他分野・他業界などに変換していくことを考えています。そのため、この原液を生産および濃縮させる発見は臨床にしかないと思っているので、外来整形外科勤務、兼個人事業主をやっております。(自身が考えるオリジナル原液の生産方法はツイッターで随時アップしていきます)

 

2つ目は、アルバイトを委託契約医療機関による委託契約においては、医療法により厳密な取り決めがあります。また、我々療法士はこの他、労働者派遣法第4条において、労働者派遣事業が禁止されているため派遣にて業務を行うことはできません。看護師等の業務においては一部改定されています。これらの法令を遵守することを前提に契約形態等をご確認ください)すれば良いということです。個人事業主になっても、やる事業がないと思う方も多いと思いますが、理学療法士で非常勤のアルバイト(訪問リハやデイサービスなど)をしている人は結構多いと思います。まずは、このアルバイトを事業として委託契約(介護保険では基本的に業務委託契約は介護保険法基準に反します。看護師のみ特例があります)すれば良いのです。

*参考資料:平成5年2月15日指第14号 各都道府県衛生主管部(局)長宛 厚生省健康政策局指導課長通知

*参考資料:http://www.accord-sr.jp/category/1994729.html

*参考資料:労働者派遣法上の適用除外業務の位置付け

 

そうすれば、辞めない限り継続的な事業となり、給与ではなく報酬にもなります。そのために事業に関する経費も使え、節税ができます。ですが、基本的にこれは自身の時間の切り売りになるので、自身が実働として動かないと成立しない事業だけでは、限界があります。

 

社長の方々が従業員に指示を出す事で収入を生産できるのは、このシステムの違いです。そこで重要なのが3つ目です。

 

3つ目は、個人事業主として、「なんでも屋さん」になることです。例を挙げて説明しますね。

 

理学療法士の個人事業主として、一番イメージしやすいのは、自費事業だと思います。これをやるためには、施術する場所と時間が必要です。

 

自費診療サービス(*1自費診療という言葉に関して、「診療」という言葉は医療機関が使用する言葉であり、我々療法士の業務は診療の補助を行います。また診療自体、医師が主体として行うため、我々療法士が行うサービスにおいて「診療」という言葉を使用することは不適切となります。自費サービスと訂正いたします。)をするために、テナントを借りる月々の維持費は高いですし、やはり時間の切り売りにもなります。だから、余計な箱はいらないと考えております。

 

よく箱があるから事業が発展すると言われますが、今回は兼任ですし、基本は理学療法ノウハウという、他分野や他業界に希釈できる原液があれば十分だと考えております。

 

その原液は、場合によって自費事業に希釈できますし、訪問リハビリやデイサービス事業、執筆事業、開発事業、講師事業、研究事業、顧問事業、SNS事業などなど、他分野・他業界を含め、何にでも希釈できると思います。

 

参考程度ですが、自身の場合は、自費事業以外に他分野・他業界への希釈では、現在、日本理学療法エステティック協会と理学療法エステ*2「診療」の部分にて説明した部分とかぶりますが、理学療法はあくまでも医師の指示のもと診療補助として行われる業務です。ここでは、「理学療法士のノウハウをエステにいかした業務」と訂正させていただきます)の施術開発や、ゴルフ業界の企業と身体パフォーマンスを向上させるゴルフ手袋を開発中です。

 

このように個人でも団体や企業などとタイアップしながら、自身がやりたい事をやれば良いかと思っております。そして、みなさんが日々一生懸命研磨している理学療法技術にそのエッセンスは多分に含まれていると私は思っております。

 

あとは原液の希釈の仕方次第だと思います。理学療法技術やノウハウを臨床現場だけで終わらせるのではなく、また別の形として、他分野・他業界に変換して患者様や社会に提供すればよいと思います。

 

その中で、自身が実働として動かなくてもよい成果物をたくさん生産していくのも一つの手段だと思います。このように理学療法ノウハウは他分野・他業界に変換できる可能性が多分にあると思いますし、その原液が濃縮であればあるほど、変換できる幅は広がり、深さも増すと考えております。

 

最後までお付き合いいただきありがとうございました。これがPTを10年間、臨床のみでキャリア形成した、苦悩と思考です。そして、今年から病院勤務兼個人事業主として活動している理学療法士の一意見です。

 

個人で行うことに限界があると思ってはおりますが、何もせずに、業界や組織のせいにして文句を言って甘えているだけではダメだと思い、一歩出して、発信してみることにしました。

 

この記事が同じような悩みを抱えている方々の参考に少しでもなれば嬉しく思います。

 

*1,2は以下の内容を参考にさせていただきました。

 

追記

今回、記事を書かせていただいて感じた事は、発信することの難しさと、大切さです。正直、疲労困憊ではありますが、、、笑

 

記事を書いて発信する前と後では、すでに人生が変わってきている気もしております。今回の議論を通して、みなさんが今一度、今後のPT人生について考えるきっかけに少しでもなればと思っております。

 

このような記事を書かせていただける場を提供してくれたPOSTの皆様に大変感謝申し上げます。

 

 

【目次】

第1回:PT10年目が感じた経済面での限界

第2回:病院勤務兼個人事業主へのジョブチェンジ

第3回:キャリアアップに臨床力は必要か?

最終回:自身が考える理学療法士×個人事業主

 

プロフィール

東馬込しば整形外科/Crawling Lab代表

 

【執筆】

ブラッシュアップ理学療法―88の知が生み出す臨床技術

三輪書店
売り上げランキング: 390,784
外来整形外科のためのスポーツ外傷・障害の理学療法

医歯薬出版 (2014-03-01)
売り上げランキング: 151,866
最終回:自身が考える理学療法士×個人事業主【稲垣郁哉】

最近読まれている記事

企業おすすめ特集

編集部オススメ記事