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元トップ選手だからこそ知っている身体や現場のこと【片山卓哉】

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トップ選手の身体感覚があるからこそ、既に知っていたこと

 

ー バドミントンの元トップ選手だからこそ、競技特性に関して詳しいと思うので、教えられる部分もありそうですね。

 

片山 私は、そういう考えになっちゃうとダメだと思っているんですよ。

 

担当するバドミントン選手に対して、自分の感覚で「それが分かる」っていうのは危険なことです。どうしても先入観が入ってしまって、その枠でしか見れなくなってしまいますから。

 

私がここで選手たちに指導していることは、学校で習うような基本的なことだけです。当たり前のことを話しているだけで「バドミントンだから…」なんてことはありません。

 

左方向に行けなくなる理由を考える時に、バドミントン選手だろうとサッカー選手だろうと卓球選手だろうと、考え方は変わりません。

 

養成校の授業でも、実際にサッカーをやって、野球をやって、バドミントンをやって、バレーをやって…と、トレーニングと動きにどういう相関性があるのか確かめる作業をしながら学んでいました。

 

ー 片山さんはおそらく一般の人よりも身体感覚が優れていると思うのですが、そういうことはあまり関係していませんか?

 

片山 それは関係すると思います。一つ例を出すならば、要素という概念が僕にはありません。つまり、「股関節」とか「足関節」とか要素ではなく、自分の感覚では身体は一つなんですよ。

 

センサーが爪先・指先から脳天まであって、何か一つの入力をしたらそれが全身に波及していくことは、経験から分かっていました。グリップの握り方を少し変えるだけでも、動きやすさは全然変わります。

 

ー 特定の手技のコースに通ったとかそういうことはないんですね。

 

片山 ないですね。参考にすることはありますが、一度型にハマると応用が効かなくなるっていうバドミントンでの経験もあって、何か教わる時は常に、あとでちゃんと自分で考えて評価して再現性を持ってできるように意識しています。

 

ADLをみるようにバドミントン動作をみる

片山 なので、ここで僕が選手に指導している内容は、本当に学校で教わるような理学療法の基本中の基本なこと。ネットを張っているのは、ADL室を再現しているのと同じで、不具合が出る状態とできる限り近い環境で、動作をみるようにしています。

 

素振りと実際に打ってもらうのとでは、動きが全く違いますので。選手に来てもらったら、シャトルを打ってもらうことからスタートして、また最後に打ってもらって終わるようにしています。

 

スマッシュが打てないと訴える子であれば、どの場面でなぜスマッシュが打てないのか具体的に原因を探ります。

 

課題を明確化して、最後それが改善されれば成功体験になりますよね。スポーツ選手を担当する上で注意しないといけないのは、トレーニングの成果が出ても、実際の試合で成果が出なければ、「このトレーニングは間違いだった」という認識になってしまいがちだということです。

 

良かった点と悪かった点の分別ができなければ、全部根こそぎガラッと変えられてしまう。

 

私たちトレーナーは、例え選手が試合に負けても、全体の中のどの部分がダメで、この部分は良かったとしっかりと伝える必要があります。そうすることで、一つ一つのトレーニングが積み重なっていくのです。

 

 

ー バドミントンって、0コンマ何秒の差でシャトルに届くかどうかの世界だと思うのですが、その選手は「自分の動きやすさ」って判断できているものなんですか?

 

片山 自覚できる人もいますが、良くなったのか分からない人もいます。

 

そういう人には、動画を撮って「これじゃないですか?」って提案して、共通の認識を持てるようにしています。

 

僕の”良い”と本人や別の指導者の”良い”が違うこともあるので、まずこちらが想定している”良い動き”を作ってあげて、それに対してどう感じるか聞きながら擦り合わせていく作業が大切です。

 

選手のテーブルと、監督・コーチのテーブル

 

ー もっとバドミントン現場に理学療法士が入っていった方が良いなって思いますか?

 

片山 身体やメカニックな専門性のある人がいることで、選手が伸びる可能性は確実にあると思います。

 

私も、よくバドミントン指導者講習会の講師として呼ばれて行きますが、一度話を聞いたからといって、選手に教えてそれを実践できるようになるのは、監督やコーチだけではなかなか難しいと思います。

 

ー 確かに講習会で教えたからといって、現場に落とし込めているかというのはまた別ですよね。

 

片山 そうならないためも、僕はできる限り選手側にいたいと思っています。選手のテーブルで話していることと、監督・コーチのテーブルで話していることとはどうしても乖離があります。

 

監督・コーチが、トレーナーや理学療法士が何をやっているかいまいち分かっていないから、怪我をしなくなっても、試合で勝てても、成果として「〇〇さんがいたから」と認められることはありません。トレーニング方法を教えてくれれば誰でも良いという認識がまだ大いにあって、そこにトレーナー個人の名前は出てきません。

 

ー 個人で仕事を取れるような人間になることが大事ですね。

 

片山 また、ナショナルチームのトレーナーになるのと、個人で仕事をするトレーナーになるのとでは、求められるスキルも少し変わってきます。

 

ナショナルチームのトレーナーになるには、そのチーム全体でバランスをとる能力が求められるし、現実問題そのポジションにつくまでのプロセスも個人で選手を見るのとはちがってきます。組織で見るほど高いバランス能力をが求められるのではないかと感じています。自分はそこまでの人間ではないので自分を求めてくれる選手限定で見ている状態ですね

 

なので、自分がスポーツ選手にどのように関わりたいかというのも、しっかり方向性を決めて関わることも必要なのではないでしょうか。

 

*目次

第一回:バドミントン元世界ランク19位 選手引退後PTに

第二回:元トップ選手だからこそ知っている身体や現場のこと

 

 

元トップ選手だからこそ知っている身体や現場のこと【片山卓哉】

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