第1章から第3章にかけて生活習慣病に関するお話しをしてきました。最後の第4章では生活習慣病に対して療法士がいかに関われるか、その役割について私の考えを述べさせていただきます。
診療報酬の壁
生活習慣病の治療に療法士が関わる事において現時点(平成29年5月)では「診療報酬」という大きな壁が存在します。生活習慣病のうち「糖尿病」や「脂質異常症」の疾患では、いわゆる疾患別リハでの診療報酬の算定が行えず、仮に治療に介入したとしても無償での提供になってしまいます。
そのため、療法士が各病院や施設において生活習慣病の治療に直接関わることに消極的な姿勢になっています。私自身も糖尿病クリニックにて生活習慣病治療の一環として、運動指導を実施していますが、それらは全て無償で提供しています。
国民病である生活習慣病は、今後更なる増加が予想され、予防や改善への介入は必須です。しかし、生活習慣病の治療において運動療法の重要性が認識されているにも関わらず、療法士が介入しづらい状況であることは療法士が解決していくべき課題であるといえます。
エビデンスの構築
療法士がまず取り組むべき事は「エビデンスを構築すること」です。エビデンスという言葉を使うと大規模な臨床試験が必要であり、少し堅苦しい印象を受ける方も多いと思いますが、症例報告でも、ランダム化比較試験(RCT)でもエビデンスの重みは違うだけで立派なエビデンスです。
そのため、生活習慣病の治療に関わっている療法士が学会発表や論文等で生活習慣病の治療における療法士の介入効果を示す事が重要であり、またそれを積み重ねていくことがエビデンスの構築につながると考えています。
メディカルフィットネスやスマートライフステイへの期待
私が生活習慣病に対して療法士が活躍できると考える事業が「メディカルフィットネス」と「スマートライフステイ」です。
メディカルフィットネスとは、病院・診療所に併設される運動施設で、そこでは主に生活習慣病の予防・改善を実施します。専門の医師による「運動処方箋」を元に健康運動指導士や療法士等が個別に運動プログラムを作成するため、通常の運動施設以上に安全な運動方法の提供が可能です。メディカルフィットネスに療法士が関わり、結果を示していくことは非常に重要です。
スマートライフステイとは、生活習慣病を効果的に予防することを目的に、糖尿病が疑われる者等を対象として、ホテル、旅館等の宿泊施設や地元観光資源等を活用して多職種で連携して提供する保健指導プログラムのことです。
スマートライフステイのような「健康×旅行(観光)」を組み合わせ、医療だけで留まらずに様々な分野と協力して結果を出していくことも今後の療法士に必要です。
さて、今回で合計4回の連載が終了となります。
このような貴重な機会を頂いて大変感謝申し上げます。今回の連載を通じ生活習慣病支援に少しでも貢献できれば幸いです。Facebookもやっていますので、気軽にご連絡ください。(Facebook:舘 友基)
【目次】
舘友基先生
学歴
2011年:藤田保健衛生大学 医療科学部 リハビリテーション学科 理学療法専攻 卒業
職歴
2011年:医療法人松徳会 花の丘病院 リハビリテーション科 理学療法士
現在、医療法人松徳会グループの「松本クリニック」にて勤務。併設されている通所リハビリテーション「ハッピースタジオ」にて個別リハビリや運営管理をしながら、糖尿病内科にて生活習慣病患者に対して運動指導を実施している。日本糖尿病療養指導士、生活習慣病改善指導士の資格を取得し、その知識を活かして糖尿病教室や運動教室、糖尿病に関する講話等を定期的に実施している。
資格
理学療法士
日本糖尿病療養指導士
生活習慣病改善指導士
執筆
舘友基:事例でわかる!実際の指導編:お悩み別 身体活動・運動量がアップする私の提案.糖尿病ケア,2016,vol.13 No.12:38-46