糖尿病の三大合併症
写真を見て「しめじ?」と疑問に感じた人も多いかもしれません。
実は「しめじ」は糖尿病の症状を覚えるための語呂として良く使用されます。それも踏まえて、第3章では生活習慣病の代表的疾患である糖尿病について原因や症状、診断基準、治療ついて説明していきます。
糖尿病にはいくつか種類がありその原因も様々ですが、日本人では糖尿病者の約95%が2型糖尿病であると言われ、2型糖尿病者は生活習慣の乱れが主たる原因と言われています。
糖尿病と生活習慣に関して興味深いデータがあります。厚生労働省の国民栄養調査や国土交通省のデータですが、昭和25年から平成12年まで糖尿病者は徐々に増加しています。ではこの間に糖尿病以外にどのような数値が増加したでしょうか?
それは、エネルギー摂取量の中で脂肪が占める割合が急増していることや自家用車の保有台数が急増していることです。この関係だけを見ても食生活の変化や運動不足が糖尿病の増加と関係していることが理解できると思います。
次に糖尿病の症状についてです。糖尿病の初期症状としては、「口渇、空腹感、頻尿・多尿、倦怠感」などが見られます。しかし、糖尿病の初期症状は痛み等の自覚症状がないため、放置しておくと体に重大な危険が発生します。
それが糖尿病の三大合併症である「糖尿病性神経障害」、「糖尿病性網膜症」、「糖尿病腎症」です。
この三文字の頭文字を取り、「しめじ(網膜症=め)」と言われています。これらの合併症が進行すると、足の切断や失明、脳梗塞や心筋梗塞を引き起こすと言われています。
初期症状が見られた方は早目に近隣の病院に受診する事をお勧めします。
糖尿病の診断方法
ではどうなると糖尿病と診断されるのでしょう?
糖尿病はHbA1c(グリコヘモグロビン)や血糖値の数値を目安に診察します。HbA1cとは赤血球の中で体内に酸素を運ぶ役目のヘモグロビンと血液中のブドウ糖が結合したものです。
血糖値が高いほどグリコヘモグロビンが形成されやすくなるため、糖尿病では血液中に増加が見られます。
そのためHbA1cの値を調べれば、1~2ヵ月前の血糖の状態を推定できると言われています。また、1~2ヶ月前の血糖値の状態を推定できるため、血液検査の直前だけ生活習慣を改善しても効果は薄い事がわかります。
このHbA1cや血糖値、糖尿病の典型的症状などを組み合わせて糖尿病と診断していきます。
糖尿病の運動療法、どのような運動が望ましい?
糖尿病の治療としては、「食事・運動・薬物」療法の三本柱と言われています。
どれか一つ欠けても適切な治療が行えない為注意が必要です。三本柱の一つである運動についてどのような運動が望ましいかを説明します。
糖尿病診療ガイドライン2016では「頻度はできれば毎日、少なくとも週に3~5階、強度が中等度の有酸素運動を20~60分間行い、計150分以上運動する事が一般的には勧められる。週に2~3回のレジスタンス運動を同時に行う事が勧められる」とされています*1。
運動としては、散歩等の有酸素運動だけでなく筋力トレーニングも併用し、運動を継続して行う事が望ましいことがわかります。
最後に、糖尿病治療に関しては糖尿病の専門的知識を持った糖尿病専門医やCDEJ(Certified Diabetes Educator of Japan:日本糖尿病療養指導士)といったコメディカルにおける糖尿病治療のエキスパートがいます。
CDEJとは糖尿病治療にもっとも大切な自己管理(療養)を患者に指導する医療スタッフです。高度で幅広い専門知識をもち、患者の糖尿病セルフケアの支援を行います。
もし糖尿病でお困りの方がいたら、糖尿病専門医やCDEJが在籍している病院やクリニックに受診されますとより適切な治療や指導が受けられると思います。
自分の地域のどの病院にCDEJが在籍しているかは日本糖尿病療養指導士認定機構のホームページにて確認できますので、是非参考にしてください*2。
最後の第4章では生活習慣病に対する療法士の役割について説明していきます。
*1 日本糖尿病学会編・著.“運動療法”.糖尿病診療ガイドライン2016.東京,南江堂,2016,67-81
*2 一般社団法人日本糖尿病療養指導士認定機構 https://www.cdej.gr.jp/
【目次】
舘友基先生
学歴
2011年:藤田保健衛生大学 医療科学部 リハビリテーション学科 理学療法専攻 卒業
職歴
2011年:医療法人松徳会 花の丘病院 リハビリテーション科 理学療法士
現在、医療法人松徳会グループの「松本クリニック」にて勤務。併設されている通所リハビリテーション「ハッピースタジオ」にて個別リハビリや運営管理をしながら、糖尿病内科にて生活習慣病患者に対して運動指導を実施している。日本糖尿病療養指導士、生活習慣病改善指導士の資格を取得し、その知識を活かして糖尿病教室や運動教室、糖尿病に関する講話等を定期的に実施している。
資格
理学療法士
日本糖尿病療養指導士
生活習慣病改善指導士
執筆
舘友基:事例でわかる!実際の指導編:お悩み別 身体活動・運動量がアップする私の提案.糖尿病ケア,2016,vol.13 No.12:38-46