生活が楽になるリハビリテーション
― 地域で小児のリハビリに携わっている先生から、現在NICUなど病院の小児領域に携わっているセラピストへ伝えたいことはありますか?
三沢先生 子供は、退院(退所)すれば、家に帰りご家族と生活することになります。家も親御さんも医療の専門家ではありません。それぞれのご家庭でどの様な生活を送っていくのかの状況を伺いながら、その生活に役立つ支援ができるように、親御さんや子供の立場に立って考えられるように努力を続ける姿勢が必要だと思います。
最初からその方の今後の生活が分かっているわけではありません。お1人お1人とコミュニケーションを取り、その方が「どの様な生活をしたいのか」を念頭に置いて関わることが、すごく大事だと思います。
「生活のしやすさを感じるためにどうしたらいいのか」と、考える視点をもって仕事をしてほしいです。
最初は、施設か病院で働き、専門的な知識や技術を身に着けたほうが良いと思っています。訪問で仕事をすると、一人で仕事をするようになるので、他からの情報が入りにくくなります。また自分の専門性のところでも先輩や他職種の方々から教えてもらえることが少なくなります。
ヘルパーさんが、今どんなことをしているのか、ということをいちいち聞くわけにはいきませんし、実際に見ているわけではありません。病院や施設ですと、看護師さんやヘルパーさんとの関りを見られますし、あるいは実際の生活介助に関わることもできますよね。
経験が浅い時期は、関節可動域訓練とか動作練習しかできないことがあります。学校で勉強し程度の基本的なことしかできないように思います。そこで留まっていては、利用される方々のご期待に十分に応えられないでしょう。
― PTとしての専門の知識だけではトータル的なケアはできないってことでしょうか?
三沢先生 そうですね。リハビリはよく「チームアプローチ」と、言われますけど、そのことだと思うんですよ。針灸とか訪問マッサージとかも現場にいって仕事しますけど、チームという概念はないんですよね。
その専門分野の治療はできるのですが、その人の生活場面を想定しての介入という視点を学んではいません。そこを身につけるのは、病院や施設で、関連職種とチームを組んで、その人の生活をどの様に支援するのか方針を共有して仕事をする経験は欠かせないように思います。
それは小児や大人も一緒なんですけど、小児の難しい所は、子供にとって我々が、「これがいいな」と、思っていても、お母さんやお父さんの考えは違ったりします。
「食形態は、これがよくて、こういう食べ方が良いでしょ」と、提案をしても「そういう食べ方はしたくない」と言われることがあります。こちらの意見を無理強いするのではなく、相手のご意見を十分に伺い相談しながら、子供のためにサービスを提供するといった難しさがあります。
子供自身のニーズよりは、両親のニーズの場合が大きいですね。成人の場合は、ご家族より本人の意見の場合が多いんじゃないかなって思います。
― 最後に、先生にとってプロフェッショナルとは?
三沢先生 自分がやりたいと思ったこと、したいと思ったことをあきらめずに取り組んでいる人だと思います。そしてその能力を必要とする利用者がいることではないでしょうか。
「小児は難しい」と、よく言われますが、「小児」と、ひとまとめに言うから難しく感じます。もう少し分けて言えば、脳性麻痺でも脱臼や変形性脊椎症などの運動器の障害に対応しなければならないこともあります。
二分脊椎や先天奇形があったり、筋ジストロフィーや発達障害のお子さんと様々です。成人·老人期の障害の方に対しても、初めから何でもできるわけではありません。臨床を積み重ね、研修·研究を続けていかなければなりません。そういった面では、大人も子供も難しさは同じだと思います。
幅広いのですが、各分野で専門を学び、子供やその両親と関わりたいと思うのであれば、小児部門は非常にやりがいのある仕事だと思います。
【目次】
第一回:悪いとわかっても公言できない社会
第二回:先入観が邪魔をする
第三回:教授回診について回る
最終回:PTとしての専門の知識だけではトータル的なケアはできない
三沢先生オススメ書籍
三沢峰茂先生のプロフィール
【出身校】
東京都立府中リハビリテーション学院卒業
京鍼灸柔整専門学校卒業
【職歴】
東京女子医科大学病院
横浜市総合リハビリテーションセンター
町田市医師会訪問看護ステーション
履修研修等
ボバース神経発達学的治療法講習会修了
ボイタ法セラピスト講習会修了
NPO法人日本ボイタ協会インストラクター
日本摂食·嚥下リハビリテーション学会認定士