第二話:東証一部上場企業の営業職。医療介護業界とのギャップ。クレーム炎上。

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東証一部上場企業の営業職。医療介護業界とのギャップ。クレーム炎上。

 無事に医療介護業界の情報インフラを整備している東証一部上場企業の営業職に転職が決まり、セラピスト向けの転職エージェントを担う部署に配属されました。ちょうど事業の拡大、また専門職を採用してみたいと企業側が考えていた時期が重なり、ご縁があった経緯です。

 

さて、ここから“常識”の違いを体感していきますので、ご参考にいくつか紹介させて頂きます。

 

まずはスピード感の違い。当初は目が回りそうなくらい速く感じます。理由はいくつか考えられますが、集客の違い、収益の違いが大きいと考えます。

 

集客は例えばセラピストの時はクライアントが病院に来訪したり訪問を依頼したり、自ら来て頂けることが多いのではないでしょうか(経営者の方はまた異なりますが)。もちろん良い病院、施設であることをセラピスト側が宣伝されることはあると思います。

 

ですが、自身でクライアントに対して電話をかけたり、積極的に引き込むことは少ないと思います。転職当初はとても攻めの行動に感じましたが、営業はいわば企業の収益の要でサービスを売らなければならない存在。スピード感と誠実さがとても大事で、良いことは当日中には方針や行動目標が決まり、クレームは即対応です。

 

クライアントから夕方にクレームがあり、次の日の早朝に新幹線に飛び乗り関東から関西へ行ったこともありました。また、収益に関しては会社側からも月間の営業ノルマを言い渡され、さらに1日の行動目標も決まっており、他部署では毎日営業数字の個人ランキングが発表されていたくらいです。

 

PDCAを高速に回そう!コミットしよう!が日々の合言葉でした。胃がキリキリしますよね、

 

初めて仕事に行きたくない朝を迎えたこともありました。しかし辛そうにも聞こえますが面白いもので、ボルグスケール13くらいをやり続けていることで、自身の作業スピードやキャパシティも増えている実感もありました。

 

また仕事に慣れてくると、医療介護業界のリアルやセラピストのリアルを部署内に発信したり、逆に他社員から聞かれたり、相互にやりとりできました。

 

 次に皆さんが気になる年収のギャップについてです。医療保険や介護保険での報酬は上限がありますが、企業の営業職でそれなりの月間目標がある場合、いわゆる成果が出れば報酬も頂けました。

 

私の場合、病院時代も役職なし、営業職でも役職なしとランクは一緒ですが、年収ベースでは病院勤務時+150万くらいでした。また月間目標に達せばインセンティブで月歩合がつきます。

 

逆に言えば目標に達成しない月が続けば、半年ごとの人事考課で簡単に年収も減ります。頑張る度合いも思った以上に必要ですが、報酬をやりがいとして働いている社員もいらしたと思います。

 

成果が数字として明確に現れる点、また自分の報酬に直結する点は医療介護業界で働いていたセラピストの時と大きく違った点と考えます。またクレームにより発生した返金も担当社員の月の営業目標のマイナスとなる訳ですから…ある意味で誠実さは増しますよね。

 

 最後に印象に残ったエピソードです。セラピストとして病院でクレームが起きた際、どのスタッフも穏やかににこやかに謝っている印象がありました。真摯に謝りつつ、常に誰に対してもにこやかに対応する習慣がついているのでしょうか。

 

以前営業職で、とあるクレーム対応にて、無意識にそのような謝り方をしたところ、「ヘラヘラして馬鹿にしているのか!上司を出せ!社長を出せ!」と炎上したことがあります。

 

しかも怒られ慣れていない為か私はパニックになり、社長の名前をど忘れしてさらに炎上しました。それ以来、クレーム対応時は常に暗い小さな声で対応しています。

 

現在は医療介護業界の現場で働いていますが、やはり穏やかににこやかに謝っている周囲の様子を見て、どちらが常識なのか、はたまた業界のギャップなのか未だに謎のままです。

 

<ポイント>

・業界により常識は異なり、様々に対応することで私見は広がるが、どちらが正しいかは各々。

・集客や収益の流れを知ることで、自身が置かれている立場や報酬に納得ができる。

 

一般企業の営業職で作業療法が活かせること

 最初は郷に従うことから始まり、まずは自身に不足している能力(コミュニケーションスキル、取引先のお客様への対応や礼儀、書類作成や期日までのスケジュール管理、営業目標に対する進捗の見極めや軌道修正等)をつける努力をします。

 

第一優先として作業療法士が求められている訳ではないからですから、企業が求める条件をクリアしていない段階では活かせるアピールをしても聞く耳を持たれません。その前提がある中で、作業療法が活かせると感じたことを紹介します。

 

 1つ目は人を見る、場を見る力です。私が営業職として売るのはサービスですが、クライアントは顧客であり、対人交流が必須となります。

 

クライアントがどのような状況、問題点があり、それにどんなサービスがあれば改善するか。またどのような価値観に対して、どう伝えると響きやすいか。

 

さらに効果的な声かけの仕方やクライアント以外の誰にアピールすれば納得が得られやすいかを見る。まさにセラピストとしてクライエントに対して様々な要素を評価し、仮説を立てて実証する流れと似ていませんか。

 

改善していく過程の手段が異なる程度と考えています。実際にその考え方や声かけの仕方、電話だけで信頼関係を築く方法を他社員にプチ講習したり、学べる書籍を紹介したりしました。役立ったお話を聞いています。

 

 2つ目はクライアントの後ろ向きの気持ちに対して、寄り添い前向きに変換していくサポート力です。

 

転職エージェントでしたので、毎時転職したいきっかけを伺いますが「経験を活かして○○がやりたい」ではなく、「○○ができない」「人間関係が良くない」「給与が低い」等後ろ向きの気持ちの方が多くいらっしゃいました。

 

後ろ向きの気持ちで転職されると不思議とすぐに辞められる方も多い傾向にありました。そこで転職する前に、外部環境を要因とせず、「そもそも何がしたいのか」「どんな環境なら働きたくなるか」を一緒に振り返り、考えることで前向きな気持ちに整えることが大切でした。

 

これもセラピストとしてクライアントを支える際の方向性に似ていませんか。障害や高齢により難しくなったことに対して、少しでもできることを一緒に探して、小さな生きがいを探していく過程に。

 

特に私は病院で働いていた時に、身体障害領域において認知行動療法を活用していくことに興味を持ち学んでいた為、良い行動変容が起きるようサポートしていく力は非常に役立ったと考えています。

 

 このように自分の能力の不足分の向上と、作業療法の考え方を活用する中で、実際に転職をサポートさせて頂いた理学療法士、作業療法士、言語聴覚士の方々から評価も頂け、会社への価値提供も少しずつ行うことで、自身に求められる力=質が同等くらいの感覚になったように思い出されます。

 

必要性は自分で見出さなければならない試行錯誤はありますが、人と交わる場面であれば、どのような場面でも作業療法の考え方が活かすことができます。

 

その際は考え方として大切なことは、専門職の良さを全面的に押し出すのではなく、自身の立ち位置を探りながら、専門的なエッセンスを活用していくことだと考えます。

 

この考え方で新しい職域に向かえば、より多くの方が臨床以外の場でも活躍できるのではないかと感じています。

 

 <ポイント>

・新しい場所ではまずは郷に従い、求められている最低水準まで質を高める。そこから専門的な考えはエッセンスとして少しずつ活かしたり、周囲に発信していく。特別な成果を出そうと焦って急ぎすぎないように。

  【目次】

第一話:一般企業への転職 10社連続で書類審査落選で無職の就活生

第二話:東証一部上場企業の営業職。医療介護業界とのギャップ。クレーム炎上。

第三話:仕事と家庭、育児との両立の中で、キャリアをどのように形成していくか。

 

to be continued..

文:石原 綾乃

第二話:東証一部上場企業の営業職。医療介護業界とのギャップ。クレーム炎上。

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