制度は社会的なニーズから生まれ、進化すべき
制度は社会的なニーズから生まれ、進化していくべきです。現在の日本の医療制度は、国民皆保険と高齢化の板挟みによって破たんしていると考えています。
それは制度を維持する為に、治療を必要とする人が望む治療を受けることができないという現実があるためです。この状況を解決していくには、健康保険に依存しない新しい制度としての混合診療、自費診療、そして民間保険の参入についての規制緩和を進めるしかありません。
救急救命、急性期、出産、重篤な外傷、手術などは保険診療とし、慢性期の治療は徐々に健康保険から外れていかざるを得ません。健康保険は破たん状態にすでに到達しており、我々もそれを受け入れざるを得ない段階と捉えるべきだと思います。
私は動物の進化と同様に、社会制度も社会の状況に適応して進化していくべきだと思います。我々の提供するサービスや理学療法士の職域のサービスも変化していくべきです。突然変異して成功すれば、それを拡大して社会制度としてシステム化され、全国に拡大します。そういうモデルケースが多数提案され、臨床的に効果が検証され、そして新しい制度の礎になるとよいと思います。
そして、若手セラピストの皆さんには、批判を恐れず、勇気を出して、社会のニーズに応えらえれるような活動に取り組んでほしいと思います。
理学療法士がいなくてもよい社会を理学療法士が作る
慢性疾患に対して理学療法士が関与しなくて良くなる社会を目指すべきだと考えています。例えば変形性関節症に対して理学療法士は必要ない状況を作り出すことなどが挙げられます。仮に、変形性膝関節症の進行を運動療法によって抑制し、機能や症状を改善させることができれば、早期から予防的に運動療法が活用されることになります。
虫歯予防の歯磨きと同様に、変形性膝関節症予防のエクササイズが確立されることを目指していかなければなりません。そして予防が社会に浸透した結果、理学療法士はこの疾患に関与しなくてもよくなるわけです。
広い意味での予防法が確立され、その指導者や実践者が全国に養成されれば、患者は健康保険を使う必要がなくなります。最終的には、この疾患に対して保険診療の必要性がなくなるというのがゴールです。
私は大学で理学療法士を育成する仕事をしていますが、あえて理学療法士のいらない世の中を作るような理学療法士を育成したいと思っています。そのためには、疾患のメカニズムを解明し、その予防や二次予防が簡単に実施できるようになり、最終的には理学療法士以外の職種が健康保険を使わずに実践できることが理想です。
それを実現するには、「自分なら治せる」というレベルに到達するだけではだめで、「誰にでも治せる」というノウハウを作り出す必要があります。私自身、そういう気持ちでリアライン商品を開発してきました。
そういう理学療法士を養成する上で、大学院教育は極めて重要です。若手セラピストの方で、これを読んで大学院進学に興味を持つ方がおられたら、迷わずにご連絡ください。
1年生の時にスポーツに関心のある学生たちも、徐々に他の分野に興味を持ち、卒業時点ではごくわずかになります。その理由は様々ですが、他の分野への興味と意欲が強くなったためではなく、スポーツ分野の求人が少ないためなんとなく無理そうという雰囲気が漂います。
前者であれば背中を押してあげられますが、後者に対しては何もしてあげることができません。やりたいことは自分にしか決められないからです。本気でスポーツ理学療法を追及したい人、怪我をしたアスリートを競技復帰させることに命がけで取り組みたい人、あるいはスポーツ現場でアスリートを支えていきたい人、には障害を跳ね除けて前進してもらいたいと思います。
前進すればかならずそれを必要とするアスリートやチームと出会い、夢を実現することができるはずです。実際に、「治せるセラピスト」をアスリートたちは心待ちにしています。
私はこれまでの活動を通じて、さまざまスポーツ現場やアスリート、セラピストらとのつながりがありますので、学生を紹介することはできます。そのとき、どんな障害があってもそれを乗り越えるパワーのある人を次のステップに進めてあげたいと思います。
そのような覚悟のない人材を紹介しても迷惑をかけるだけ、ということになりかねません。野球に関わる仕事をしたいという学生に、プロ野球7球団のトレーナーにお願いして施設見学や仕事の内容を話してもらったことがあります。
7球団のトレーナーと会えるということはとても貴重な機会です。そこで、スポーツ現場での仕事を身近に感じてもらうこととともに、やりたいことに邁進すれば夢は実現することを知ってほしいと思います。
イチローは小学生からずっと野球だけ、本田はずっとサッカーだけに取り組んできて今があるわけです。若者にはやりたいことにまっしぐら、という勢いを失ってほしくないと思います。どこに進んでも必ず障害はあるわけですから、その障害を気にしていても仕方がないのです。100個の障害よりも1個のやりたい理由があればいいんです。その1個の理由で突き進むことが夢を実現させる方法だということを、学生に伝えていきたいと思っています。
* 目次
第一回:治療の設計図
蒲田 和芳先生も登壇するウーマンズヘルスケアフォーラム2018 in大阪のご紹介
今大会では通常の座学に加えて、リアラインコンセプトで有名な広島国際大学の蒲田先生による実技講座を別に受講することできます。実技講演に参加したい方は追加料金をお支払することで、別部屋で実施される特別セミナーを受講することができます。
実技を受けることによって、更に学習度を高めることができ、現場に活かしやすくなります。
定員に限りがあるので、申込みはお早めに!
講演テーマ【産後に発生する重度骨盤帯痛を防ぐための骨盤ケアの考え方:リアライン・コンセプトに基づく治療法】
●実技講義1【デバイスと運動療法による産後の仙腸関節障害のマネジメント】
●実技講義2【徒手療法と運動療法による産後の仙腸関節障害に関わる骨盤マルアライメントの治療】
【日時】 2018年7月8日(日) 10:00〜17:00
【会場】 大阪リバーサイドホテル ※大阪環状線「桜ノ宮駅」西口より徒歩3分
【対象】 療法士、看護師、助産師、その他セラピストなど
【定員】 300名
注:託児所はありません
詳細&申し込みは以下HPから
▶︎ https://woman-forum.jp/whcf2018osaka/
蒲田和芳先生経歴
■現職
広島国際大学総合リハビリテーション学部 リハビリテーション学科 准教授
株式会社GLAB(ジーラボ) 代表取締役
日本健康予防医学会 副理事長
■学位・免許・資格
1995年4月 理学療法士免許(第14544号)
1997年3月 日本体育協会アスレティックトレーナー(776C70813)
1998年3月 学術博士(東京大学大学院 総合文化研究科 生命環境科学系)
■学歴
1987 卒業: 富山県立高岡高等学校
1987 入学: 東京大学 理科II類
1991 卒業: 東京大学 教育学部 体育学科 【教育学学士】
1994 修了: 東京大学大学院<前期課程> 教育学研究科体育学・スポーツ科学専攻【教育学修士】
1995 卒業: 専門学校 社会医学技術学院 夜間部理学療法学科 【理学療法士】
1998 修了: 東京大学大学院<後期課程> 総合文化研究科生命環境科学系 身体運動科学研究室 【学術博士】
■職歴
1997年4月~1998年3月 正職員: 横浜市衛生局 横浜市スポーツ医科学センター開設準備室
1998年4月~2003年3月 正職員: 横浜市スポーツ振興事業団 横浜市スポーツ医科学センター 整形診療科 理学療法室長
2003年6月~2003年5月 博士研究員: コロラド大学ヘルスサイエンスセンター 医学部整形外科 整形外科バイオメカニクス研究室
2005年6月~2006年3月 研究員: フロリダ大学航空機械工学科 整形外科バイオメカニクス研究室
2006年4月~2007年3月 正職員: 広島国際大学 保健医療学部 理学療法学科 助教授
2015年4月~ 職名・職階変更: 広島国際大学 総合リハビリテーション学部 リハビリテーション学科 教授
■非常勤・臨床
1990年12月~1998年3月 研修: 日本体育協会スポーツ診療所 理学療法室
1992年7月~1993年9月 アドバイザー: 株式会社セノー トレーニングマシンSXシリーズリニューアルプロジェクト
1995年4月~1996年3月 非常勤講師: 富士ビジネス&アスレティックカレッジ(機能評価学、スポーツ医学、アスレティックリハビリテーション担当)
2007年4月~2008年9月 非常勤理学療法士: 蜂須賀整形外科, 広島市
2008年4月~ 臨床アドバイザー: 貞松病院, 大村市
2008年10月~2011年11月 臨床アドバイザー: 和光整形外科, 広島市
2010年11月~2015年9月 非常勤理学療法士: アオハルクリニック, 東京都港区
2011年4月~ 臨床アドバイザー: 東広島整形外科, 東広島市
■スポーツ現場
1991年4月~2003年5月 東京大学運動会アメリカンフットボール部Warriors トレーナー
1995年9月 福岡ユニバーシアード 選手村診療所 理学療法士
1996年7月 アトランタオリンピック 日本選手団本部医務班 理学療法士
1997年4月~1999年3月 株式会社ワールド ラグビー部 非常勤理学療法士
2000年8月 シドニーオリンピック 日本選手団本部医務班 理学療法士
2002年9月~2003年3月 株式会社シャンソン 女子バスケットボール部 非常勤理学療法士
2012年5月~2013年3 中国電力女子卓球部 トレーニング指導