― ひとつの手技療法というよりも、たくさんの概念をもとに、自分で作り上げてきたのですね。逆に、ひとつのものをひたすら追い求めている人もいると思いますが、それについてはどう考えますか?
小松先生 いろいろな考え方を学んで最終的に行き着いたのであれば問題ないと思いますが、初めからそれだけを学ぶということはあまりオススメしません。
もちろん一つを追求することで見えてくることもあると思いますが。
若手療法士の方に勘違いしていただきたくないのですが、特定のコースに出て認定を受けたり、さらに上級コースのライセンスを取っていくことが、患者さんに求められるセラピストに近づくというわけではありません。
もちろんそういった資格をお持ちの方は、もっと患者さんを良くするために技術を研鑽しようとする意欲の高い方も多いと思います。
しかし一方で、認定を持っていることに満足しているセラピストも存在します。
またそういった認定資格などは持っていなくても、多くの患者さんや職場の後輩から信頼を得ているセラピストもいます。
私自身は何かのコースを最後まで出たことがありません。
ある理論や手技を学び、一人の患者さんを良くできると「自分はすごいんだ。この考え方でいいんだ」という感覚になってしまう方も多くいます。
10人患者さんがいて、10人とも良くできるのが理想ですよね。
良くなったのが10人のうちのたった一人かもしれないですし、良くならなかったのを患者さんのせいにしてしまう方もいますが、それでは全然ダメですよね。
残りの9人はなぜ上手くいかないのか、また上手くいった患者さんでも、「同じ介入時間でもっと良くできないか」「もっと短時間・短期間で同じくらいの効果を出せないか」と現状に満足しないことが大事ですね。
そのためには、あまり理論や手技に固執せず、目の前の患者さんの言葉や現象を仮説検証し、より良い方法を模索していくことが大切だと思います。
― 今後のビジョンについて教えて下さい。
小松先生 何かになりたいとかは考えていないのですが、一人でも多くの方に良くなってほしいという思いがあります。
またBridgeの活動を通じて、少しでも「患者さんの立場に立てる」「患者さん、職場、他職種、社会から求められる」「自分で考え、行動できる」セラピストが増えるお手伝いができればと思っています。
臨床の場と研究の場の差も少しでも埋まって、臨床の場に少しでも還元されていくことが一番の思いです。様々な研究や理論がどんどん生まれてきています。
そこを臨床を通じ、目の前の患者さんの還元できることが現場のセラピストには必要だと考えています。
小松先生のおすすめ書籍
― おすすめの本を教えていただけますか?
小松先生 ビジネス本をよく読むことが多いです。医学書であれば、ボディーワークの本ですね。
― 先生にとってのプロフェッショナルとは?
小松先生 他人に見せられて、説明できて、結果の出せる人だと思います。
患者さん自身にもそうですが、患者さんの家族や新人さんが見学に来ても、何を目的に課題をしているかを説明でき、そして介入後の変化が分かることが大切ですね。
患者さんも何してるか意味が分からない…という介入は不安ですよね。
介入の中で、患者さん自身が納得でき、変化を実感できることは患者さん自身が自ら前に進んでいくという意味で大切だと思っています。
そのためにセラピストは専門的な知識や技術を武器にしていると思っています。
後輩教育でもそうですね。
目の前で自分の介入を見せられることはもちろん、そこでの患者さんの反応を、後輩が理解できるように伝えることは大事ですね。
見て盗め、という職人的な部分はもちろんありますが、伝えられることは伝えることで理解でき、興味につながることもあります。
【目次】
最終回:手技療法のコースを出ることが患者さんに求められるセラピストではない
Bridge主催のセミナーはこちら>>https://1post.jp/companies/45/seminars
小松洋介先生 プロフィール
総合病院、回復期リハ病院を経て、現在「キョーワ訪問看護リハビリステーション寄り添い屋」勤務
臨床1年目に病院や施設ごとでのリハビリの考え方や特定の治療手技や理論に偏りがあることに疑問を持ち、様々な理論・技術を広く知り、それぞれの良い所を活用できるような場を作りたいとの思いでセミナー団体「Bridge」を立ち上げる。
1. 自分で考えて、行動、発信できるセラピスト
2. 患者の立場に立てるセラピスト
3. 患者、家族、職場、他職種から求められるセラピスト
4. 地域、社会から求められるセラピスト
を増やすことをミッションに、今までに1000名以上のセラピストへの講義・実技指導を行い、現在もセミナー団体「Bridge」代表講師として全国を飛び回る