OriHimeが創る参加2.0 外出の価値とコミュニティー

6298 posts

互助や共助が注目されている昨今、この記事を読んでいるPTOTの読者の中にも地域コミュニティーに実際に携わっている人も多いのではないか。

 

分身ロボット「OriHime(オリヒメ) 」は、入院など距離や身体的問題で行きたいところに行けない人にもう一つの身体を提供し、インターネットを通じてロボットを操作することで、コミュニティーへの参加を可能にした。

 

OriHimeは内臓のマイクを通して、その場所の音声を聞いたり、カメラを通して映像を見たり、スピーカーを介して自分の声を伝えたりすることができる。

 

今年1月には、「分身ロボットカフェ DAWN」を開催。重度障害者などが、在宅にいながらリモートでロボットを遠隔操作しカフェを運営することで、仕事という社会的役割を果たした。<詳細は:https://dawn2019.orylab.com/

 

今回、OriHimeの開発者であるオリィ研究所の吉藤オリィさんに、独自の視点で社会的交流やリハビリテーションについて、解説いただいた。

 

障害とはなにか

 

ー OriHimeを利用すれば、在宅にいながら仕事を行うことが可能ですし、社会参加を促すツールとしてとても可能性を感じています。現在、利用している方ですと、どんな方に多く利用されているんですか?

 

オリィ 疾患的にはALS(筋萎縮性側索硬化症)をはじめ、重度肢体不自由の方が多いのですが、全体的に見ると、育児中のお母さんにも多く利用いただいています。彼女達は、「外出困難」という環境的な障害を負っていると捉えることもできますよね。

 

分身ロボットカフェでロボットのパイロット(操縦者)をしてくれたメンバーの中に、マリーさんというオーストラリアのメルボルンに住んでいる方がいるのですが、彼女は身体・精神的な障害を負っているわけではありません。

 

彼女は、日本で働きたいという気持ちがあるのですが、海外に居住していて育児も忙しいため、物理的な距離というバリアが存在しているわけです。

 

つまり障害とは何かというと、自分のやりたいという意思に対して、どうしても自分の力だけでは乗り越えることができないハードルが存在している状態です。

 

絵が描きたい人に対して足が動かないということは障害になりませんが、マラソンランナーにとって足が動かないということは、明らかな障害です。

 

これは、逆説的に言えば、「何もできない人はいない」ということでもあります。

 

目が見えない人でも歩くことができれば、足が不自由だけど目は見える人の助けを借りることで、その人の分身ロボットを目的地に運ぶことができます。

 

分身ロボットが目的地にいれば、足が不自由でも仕事に参加することができますし、講演することだって可能です。自分では何もできないと思っていても、その人の能力を欲してる人は、この世のどこかに必ずいます。

 

現状の課題は、シンプルに、必要としている能力を適材適所的でうまく配分ができてないことだけだと考えています。

 

外出の価値は「人との出会い」と「偶然の発見」

 

ー 「OriHimeがいれば仕事に参加することができる。」という話がありましたが、チャットツール、テレビ電話といったオンラインサービスでもコミュニケーションを取ることはできますよね。その中でも、分身ロボットを用いて参加するということにはどんな価値があるのでしょうか?

 

オリィ 今、「参加」と仰いましたが、「参加」とはそもそもどのような状態を指すのかをはっきりさせる必要があります。

 

私が思うに、参加とは「自分がそこにいたという経験」と、「周りの人からもそこにいたという認識が得られる」という二つの条件が揃うことが必要だと思っています。

 

例えばですが、セミナー会場にカメラが設置されていて、それを通じてあなたがセミナーを一方的に覗いている状態は参加したとは言えないでしょう。また、ベロベロに酔って途中で寝てしまった飲み会は、そこに身体があったとしても参加したとは言えないでしょう。

 

これは私ではなく、友人の番田雄太(4歳の交通事故で頸髄損傷後、寝たきりになる。オリィさんの友人で、以前研究所でもOriHimeを利用して働いていた。)が話していたことですが、外出するということの価値は「人との出会い」と「偶然の発見」です。

 

確かに、チャットツールやテレビ電話を用いれば、その都度コミュニケーションを取ることができます。しかし、それでは、会社の中をふらっと歩いている時に「そういえばさぁ」みたいに行われる偶発的なコミュニケーション機会は失ってしまいます。

 

偶然の発見は、同じ時間、同じ場所にいるからこそ生まれます。そして、そういったチャンスのほとんどが「人との出会いによってもたらされる」というのが、私の考えです。

 

【目次】

第一回:OriHimeが創る参加2.0 外出の価値とコミュニティー

第二回:「友達を作る」というミッションの攻略法

第三回:「自分らしく生きる」の正体

 

【連載|ADLTech】

移動:WHILL〜モビリティが叶える移動した"先"の世界〜

排尿コントロール:尿失禁・頻尿をテクノロジーで未然に防ぐ

食事:人工知能×嚥下測定で誤嚥性肺炎は予防できるのか

 

 

 

OriHimeが創る参加2.0 外出の価値とコミュニティー

最近読まれている記事

企業おすすめ特集

編集部オススメ記事