第三回:PTになって良かったとつくづく思う【日本理学療法士協会 会長|理学療法士 半田一登先生】

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前回の続き

両立は難しい

ー 理事として全国を飛び回られていたとのことですが、その分臨床の時間を削られたのですか?

半田会長:いえいえ、昔は土曜日も半日休みだったので、午後から出発して、日曜の夜まで協会の仕事をして、また月曜日から臨床をやっていました。ですから、うちの娘たちが小さい頃は何もしてあげてないですね。

 

よく女房に捨てられなかったなと思います。笑 さらにいうと、野球が好きだったもので、月曜日から金曜日の業務後は、職場の野球部の練習に行っていました。練習の後は、飲み会があって、その後には麻雀がはじまるわけです。

 

家帰るのは午前様。土日はいない。という亭主でした。ちなみに、私の女房は九州リハ大の受験会場で出会った「あの子」です。笑

 

学生時代の目標だった、勉強とスポーツの両立同様、いい職業人といい亭主を両立させるというのは、非常に難しいことですね。

 

リハビリテーションは第三の医療

ー お給料が安かったとのことですが、学校の先生などになろうとは思わなかったのですか?

半田会長:全く考えなかったです。当時は多くの方がなっていったけど。私の周りも後輩もみんな学校の先生になった。私にも、それなりの報酬額で打診はありましたが、私は断りました。

 

理由がいくつかあります。まず、人に教える上で、そこまで私は知識を持っていなかったのです。人に1教えようと思ったら10の知識が必要だと思うのです。あとは、授業って体をほとんど動かさないので、私の性に合わないのです。

 

女房にこの話しをすると「いい話じゃない!」と。でも、あまりやりたくないと伝えると「じゃー好きにしたらいいじゃない」とあっさり。それで次の日、私は臨床が好きなんです、ということでお断りしましたね。

 

理学療法士になった動機は不純でしたけど、理学療法士になってよかったなとつくづく思います。結果的に定年1年を残して、常勤の会長職につきましたけれども、38年間の臨床生活を振り返ってみると、理学療法士って心底面白い仕事だなと思いますね。

 

それも、目の前の患者さんのことを真剣に考えて、壁にぶつかりながらもここまでやって来られたのがよかったですね。それが今では、「急性期だ回復期だ」と、細切れになってしまっていますから、理学療法士が一人の患者さんを将来に渡り関わり続けることができなくなりましたね。

 

だから、今の理学療法士たちは、その点が気の毒だなと感じます。どうやったら、今の若い人たちが臨床の醍醐味を感じることができるのか、ということが私にとっての最大の課題です。

 

ですから、つい先日も行政のある方とお話ししてきまして、従来の医療の中にリハビリテーションを無理やりはめ込むのが間違いだと伝えてきました。「脊損の方の急性期と回復期、どこが境ですか?」と。病気の急性期はありますが、障がいの急性期とは何でしょうか。

 

リハビリテーション医療を、従来の医療制度の中に、同じ枠組みとして持ってきてしまったために、リハビリテーションの良さが薄れてしまったのではないかと。これは、厚労省の方々にも言い続けています。

 

もともと日本では、リハビリテーションは第三の医療として始まったにもかかわらず、従来の診療報酬制度の中に埋め込まれてしまったのだと。今の急性期は、平均在院日数も14日を切っています。

 

理学療法士が担当しても、その人の家族環境まで十分に把握できないまま転院してしまいますよ。リハビリテーション医療というのをもう一度、別の医療として考えていく方が効率的になると、これからも訴え続けます

 

理学療法士が、理学療法にやりがいを感じなければ、それこそ非効率になります。ですから、我々としては理学療法士のやりがいを回復させつつ、日本の社会保障を成立させた上での提案を行なっています

 

ー 先ほどのお話を伺うと、医療保険よりも介護保険の方が提案しやすいのではと思うのですが。

半田会長:昨日もそういった話し合いをしてきたのですが、急性期・回復期ではリハビリテーションを受けられる期限が決められています。生活期、となると終わりがないわけです。昨日提案したのは…

続くー。

 

【目次】

第一回:PT養成校に入学するに至った不純な動機

第二回:聖域なき構造改革

第三回:理学療法士になって良かったとつくづく思う

第四回:世界の中心で理学療法と叫ぶ

第五回:開業権の話をしよう

第六回:PTが介護士になれば介護士不足は解消する?

第七回:競争社会を作る

第八回:理学療法士ライセンスの希少性

第九回:会員を守るために“戦える集団”をつくる

最終回:リハビリテーションの概念改革

 

半田一登会長のプロフィール

1971年、九州リハビリテーション大学校卒業 後、労働福祉事業団(現・独立行政法人労働者健康福祉機構)九州労災病院に入職。

1987年、社団法人日本理学療法士協会理事に就任し、2007 年より同協会会長を務める。  

日本健康会議 実行委員、チーム医療推進協議会 代表、一般財団法人訪問リハビリテーション振興財団 理事長 等 

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第三回:PTになって良かったとつくづく思う【日本理学療法士協会 会長|理学療法士 半田一登先生】