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日本病院会、5項目の具体的要望を検討 入院基本料10%以上引き上げ等求める

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日本病院会の相澤孝夫会長は30日の定例記者会見で、長崎で行われた第75回日本病院学会の前日に開催された理事会での議論内容を発表しました。従来から要望してきた5項目について、これまでの要望が具体性に欠けていたとして、今後は具体的な内容を詰めて要望していく方針を示しました。

緊急財政支援を2025年度中に実施要望

第1項目として、病院経営への緊急的財政出動を求めました。相澤会長は「病院経営がコロナ流行以前から赤字基調にあり、そこに物価高騰や医療材料費の増加、消費税負担の増加等が加わって、医療費用が医療収益を大きく上回り、経営継続が困難な状況が深刻化している」と現状を説明しました。年々赤字病院が増加し、赤字額も拡大していることから、2025年度中に緊急的な支援として特別交付金等の実施を要望するとしました。

入院基本料の最低10%以上引き上げを要求

第2項目では、入院基本料の引き上げを求めました。入院基本料は2006年以降実質的に据え置かれている一方、2018年度比で企業物価指数が35%上昇、最低賃金が13%から15%上昇、生活保護費も一部地域で10%を超える引き上げとなっていることを挙げ、「病院が入院医療をしっかりと行っていくためには最低10%以上の引き上げを要望したい」との方針を示しました。

地域包括ケア病棟の施設基準緩和を要望

第3項目として、地域包括ケア病棟の施設基準緩和を求めました。相澤会長は「かかりつけ医機能を発揮する病院が極めて重要で、地域包括ケア病棟は今後増やしていかなければならない」としながらも、「施設基準が非常に厳しい要件があり、なかなか基準を取ることができない」と指摘しました。看護必要度の厳しさやADL低下を5%未満にする要件などについて、合理的な緩和を求めるとしました。

病院総合医への段階的評価制度導入を提案

第4項目では、病院総合医への段階的評価制度の導入を要望しました。高齢化の進展により全身的に対応できる病院総合医の存在が重要だが、現行の診療報酬制度では明確な評価がされていないと指摘しました。まず体制評価として病院総合医の配置と24時間体制確保への評価、次にプロセス評価として多職種連携や在宅支援、退院支援等の実践評価、最終的には再入院率や在宅復帰率等の指標を活用した評価を段階的に行うことを提案しました。

建て替え・設備更新支援の拡充求める

第5項目として、病院の建て替えや設備更新への支援拡充を要望しました。具体的には補助単価の引き上げ、補助対象の拡充と運用の柔軟化、地域間格差の是正を求めました。また、電子カルテや医療DX推進において、従来の機械や施設といった「形のあるもの」だけでなく、ソフトウェアやクラウドサービスといった「形のないもの」への支援も必要だとし、特にクラウドサービスのランニングコストへの支援を求めました。

さらに、看護師や介護士、リハビリスタッフの育成について、「本来国がすべきことを病院が代替している」として、国からの委託料支払いによる適切な支援を要望しました。

概算要求前の要望取りまとめを予定

相澤会長は、次回理事会でこれらの要望を具体的にまとめ、概算要求前に要望書として提出する意向を示しました。「具体的な数字を入れた要望をしないと、病院が本当に地域の役に立つ運営をしていく時に十分ではない」として、8月中の要望書提出を目指すとしました。

質疑応答では、地域包括ケア病棟のADL低下5%未満要件について、85歳以上の高齢患者が増加する中で要件達成が困難になっているとの認識を示し、具体的な緩和水準については今後検討するとしました。また、クラウドサービスのコストについては、オンプレミス運用と同等かそれ以上の費用がかかるとの見解を示しました。

日本病院会、5項目の具体的要望を検討 入院基本料10%以上引き上げ等求める

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