四病院団体協議会(四病協)と日本病院会が8月下旬、それぞれ厚生労働省に令和8年度税制改正要望書を提出した。両団体とも医療機関が直面する控除対象外消費税問題の抜本的解決を最重要課題に掲げ、医療機関の経営環境改善に向けた税制措置を強く求めている。
四病協が包括的な要望書を提出
四病院団体協議会(日本病院会・全日本病院協会・日本医療法人協会・日本精神科病院協会)は8月21日、福岡資麿厚生労働大臣宛に「令和8年度税制改正要望の重点事項について」を提出した。
要望書では「超高齢社会に突入したわが国では、地域差はあるものの、各年代に応じた医療ニーズが今後一層高まっていくと考えられる」と指摘し、医療体制充実のための税制措置の必要性を訴えている。
消費税問題については、社会保険診療報酬等の非課税に伴う控除対象外消費税問題の解決を求めている。医療機関は設備や薬剤を購入した際に支払った消費税を控除できず、その分が病院の負担となる仕組みになっている。四病協は「診療所においては非課税制度のまま診療報酬上の補てんを継続し、病院においては軽減税率による課税取引に改める」よう要望している。
日病会が独自要望を追加提出
一方、日本病院会は8月25日、土屋敦常任理事(医業税制委員会委員長)が厚労省を訪問し、独自の税制改正要望書を提出した。水谷総務課長、樋山医療経営支援課長が対応した。要望書の宛先は相澤孝夫会長から福岡資麿厚生労働大臣宛となっている。
日病会の要望書では国税7項目、地方税2項目に加え、地域医療の拠点としての役割に関する税制要望や自費診療要件の緩和要望も盛り込んでいる。
両団体に共通する重点要望
消費税問題の解決では、両団体とも控除対象外消費税問題の抜本的解決を最優先課題として位置づけている。四病協は診療所と病院で異なる対応を提案する一方、日病会は「社会保険診療報酬等を軽減税率の課税対象とし、控除対象外消費税問題を税制の抜本改正によって解決していただくよう強く要望する」として、統一的な解決を求めている。
事業承継税制についても、両団体とも持分のある医療法人への納税猶予・免除制度の創設を要望している。持分あり医療法人では、出資を相続や贈与で承継する際に大きな税負担が発生し、後継者不在や廃院の要因になるとされる。日病会は「令和6年3月末現在、全医療法人の6割以上を占める持分のある医療法人において、後継者への出資持分の承継に伴う相続税・贈与税の負担が、事業継続の大きな障壁となっている」と具体的な状況を示している。
認定医療法人制度では、両団体とも制度の改善を求めている。認定医療法人制度は、持分のある医療法人を持分なし法人に移行させるための仕組みだが、移行期限に制限がある。四病協は制度の存続と認定期限の緩和を要望している一方、日病会は期限内に移行手続きが完了できなかった場合でも「要件を満たしていれば再度認定を受けられるよう制度を改善していただくことを要望する」としている。
日病会独自の要望項目
日病会は四病協要望に加え、独自項目も盛り込んでいる。地域医療拠点としての役割では「新興感染症の流行や災害の発生時にも、病院が地域医療の重要な拠点としての役割を十分に果たせるよう、優遇措置を講じること」を要求している。新型コロナ対応や災害医療で病院が果たした役割を踏まえ、恒久的な税制措置を求めている。
また、自費診療要件では「社会医療法人等において自費診療の請求金額を自由に設定できるよう改めること」を求めている。現在は税制優遇を受ける条件として、自由診療の価格を社会保険診療と同水準に設定する義務があるため、訪日外国人診療などでは赤字になる事例があると指摘している。
両団体の要望は、医療機関の経営環境が厳しさを増す中で、質の高い医療提供体制を維持するための税制支援の必要性を強く訴える内容となっている。