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中山間地域の介護職員配置基準緩和めぐり委員が激論

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人材不足対策で常勤・専従要件の見直し検討―第124回社会保障審議会介護保険部会

厚生労働省は8日、第124回社会保障審議会介護保険部会を開催し、中山間・人口減少地域における介護サービス維持策を議論した。人材不足が深刻化する地域での人員配置基準緩和をめぐり、委員間で激しい議論が展開された。

基準緩和に強い懸念の声

配置基準緩和について、委員からは慎重論が相次いだ。

公益社団法人日本介護福祉士会の及川ゆりこ会長は「配置基準の緩和は極めて悩ましい。サービスの質の確保の観点や介護職の負担の観点を踏まえると慎重に対応する必要がある」と述べた。さらに「配置基準を緩和しても介護サービスの質を担保することは重要だ。スキルの高い介護福祉士の配置などモデル的な取り組みを通した効果検証をした上で対応方針を定める必要がある」と具体的な検証の必要性を訴えた。

女子栄養大学の津下一代教授は「ICTやセンサー・介護ロボットなどの介護テクノロジーの導入支援を行った上で、導入活用されていることを前提とするなどの対策をはじめ、その他様々な目に見える負担軽減策を積み重ねた上で十分な検証を行い、慎重に判断していくことを求める」と述べ、技術的な裏付けの重要性を強調した。

日本労働組合総連合会総合政策推進局生活福祉局長の小林司氏は「サービスの質の低下、職員の業務負担の増加が懸念される。配置基準の弾力化は行うべきではない」と明確に反対の立場を示した。

現場の厳しい実情訴える声も

一方で、地域の実情を踏まえた柔軟な対応を求める意見も出された。

公益社団法人全国老人福祉施設協議会副会長の山田淳子氏は「中山間人口減少地域の施設においては特に専門職員の人員確保が難しく、配置基準が満たせなくなる恐れがある。基準該当サービス、離島等相当サービスについて施設系のサービスを加えていただき、安定経営可能な報酬としていただきたい」と現場の厳しい状況を訴えた。

公益社団法人全国老人保健施設協会会長の東憲太郎氏は「保険あってサービスなしの状況をなくすためには、このような思い切った施策を総合的に行う必要がある」と制度改正の必要性を強調した。

包括払い制度にも反対論

事務局が提案した月単位の定額報酬制度についても議論が分かれた。

公益社団法人認知症の人と家族の会代表理事の和田誠氏は「これ以上給付を縮小する方策は控えていただきたい。包括的な評価の仕組みには反対する」と述べ、「月単位定額制が導入されれば、実質的に出来高報酬の範囲内でしか給付が保証されない恐れが高い」と懸念を示した。

全国健康保険協会理事の鳥潟美夏子氏は「包括的な評価の仕組みについてはポイントとしてメリットのみが記載されているが、デメリットとなり得る点の丁寧な検討が必要だ」と慎重な議論を求めた。

新事業スキームにも課題指摘

市町村による新たな事業実施についても、実現可能性を疑問視する声が上がった。

全国市長会介護保険対策特別委員会委員長(香川県高松市長)の大西秀人氏の代理として出席した参考人は「市町村が給付に代わる新たな事業として介護サービスを実施できる仕組みについて、懸念される課題が散積している。人材確保が大きな課題で、市町村であっても変わりがない」と実現への疑問を示した。

その他の論点

このほか、3つの地域類型に分けたサービス提供体制の構築、事業者連携強化、既存施設の有効活用についても議論された。介護情報基盤の整備では、被保険者証の交付時期変更やマイナンバーカード活用について意見交換が行われた。

部会では今後、冬に向けた制度改正の取りまとめに向けて議論を深めていく。菊池馨実部会長(早稲田大学理事・法学学術院教授)は「様々なご意見をいただいた。事務局におかれては今後の議論に向けたさらなる準備をお願いしたい」と述べ、継続的な検討を求めた。

▶︎第124回社会保障審議会介護保険部会

中山間地域の介護職員配置基準緩和めぐり委員が激論

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