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リハ職が自治体・企業の予防事業にどう入るか──PT・OT協会が47士会向け手引き実践版を公開

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日本理学療法士協会と日本作業療法士協会は2026年4月16日、令和7年度地域保健総合推進事業の報告書と、改訂した「自治体または企業における成人の健康づくりに寄与するための手引きー都道府県の理学療法士会・作業療法士会の担当者向けー【実践版】」を公開しました。都道府県PT・OT士会の担当者向けに、自治体や企業と組んで予防・健康づくり事業を立ち上げる手順を示したものです。令和6・7年度に4つの県士会が実施したモデル事業の到達点が反映され、診療報酬の外でリハ専門職がどの段階にどう関わるか、具体的な道筋が示されました。

手引きは何が「実践版」なのか

両協会は平成8年度から一般財団法人日本公衆衛生協会の地域保健総合推進事業の分担事業を受託し、地域保健領域におけるPT・OTの関わり方を継続的に検討してきました。本事業はその一環で、令和4年度の全国の保健所と都道府県PT・OT士会を対象にしたアンケート、令和5年度の手引き初版作成、令和6年度のパイロット実施を経て、令和7年度に手引きを「実践版」として改訂したものです。

コラム:「地域・職域の予防・健康づくり」シリーズの4年

令和4年度(2022)──全国の保健所および都道府県PT・OT士会を対象としたアンケートで、リハ職が地域や職場の予防・健康づくりにどう関わっているかの実態を把握。

令和5年度(2023)──関係機関との連携を軸とした「手引き(初版)」を作成。10月にはPT・OT士会担当者向けの基礎研修会も開催。

令和6年度(2024)──研修の開催と伴走支援のあり方を検討。山口県PT会・茨城県OT会がパイロット士会として実施。

令和7年度(2025)──伴走支援の精緻化と手引きの「実践版」改訂。香川県PT会・徳島県OT会が新たなモデル士会として加わる。

初版(令和6年3月発行)と比べると、実践版は冊子としての性格が大きく変わりました。初版は「手引きの活用方法」の見開き解説に、産業保健アドバイザー派遣や地域医療介護総合確保基金の活用など5つの先行事例を並べた紹介冊子でした。実践版は初版から大幅に拡充され、STEP1〜6の事業化プロセスを中核に据え、4県モデル士会の活動経過を具体資料として収録。チラシ(受付申込FAX)の作成Pointや「お役立ちツール(関連報告書・ハンドブック・マニュアル)」の一覧まで同梱する、県士会担当者のための実務マニュアルへと姿を変えています。

自治体または企業における 成人の健康づくりに 寄与するための手引き - 都道府県の理学療法士会・作業療法士会の担当者向け実践版

実践版では、STEP1「組織の基盤づくり」からSTEP6「事業を維持するための保健事業の仕組み」までの6ステップで事業化プロセスを整理。STEP2は情報収集・ニーズ調査、具体的事業イメージの確立、自治体等対象者からのヒアリングの3つに細分化されました。パンフレットではこれらの流れを、公衆衛生活動の基本(ポピュレーションアプローチとハイリスクアプローチ)、根拠法、PDCAサイクル、評価指標と合わせて図解しています。

手引きが想定するリハ専門職の役割は、3次予防(疾病に対するリハビリテーション、重症化防止・復帰改善)にとどまりません。0次予防(社会そのものを健康にする仕掛け)、1次予防(気軽に受けられる体づくり、住みたい地域で人生を過ごせる)、2次予防(疾病・生活習慣病の早期発見・早期リハ)まで、「健康寿命の延伸」を軸に参画領域を広げる構成です。

4県士会のモデル事業──生活習慣病予防から職場メンタルヘルスまで

今年度の報告書は、令和6年度にパイロットを実施した山口県PT会・茨城県OT会と、令和7年度に新たに加わった香川県PT会・徳島県OT会の計4チームの事業経過を収録しています。

香川県PT会(生活習慣病予防・改善サポート)──全国健康保険協会(協会けんぽ)や産業保健総合支援センター、行政等との接点づくりを進め、「県の健康課題(生活習慣病等)を踏まえながら、就労世代・職場を含めた保健事業としての展開可能性を検討した」取り組みです。既存のボランティア的な活動を「必要とする相手に届く形」へ整理。事業化への選択肢を増やすためトライアル(モニター)期間を設け、講義のみ/講義+実技に対応可能な派遣スキーム、生活習慣病の基礎知識+ウォーキング指導・筋力トレーニング・ストレッチ等の実技まで組み込みました。

徳島県OT会(職場メンタルヘルス対策)──中小企業を対象に、作業療法の専門性である「人・環境・作業(Person-Environment-Occupation:PEO)」の包括的視点を一次予防的な職場支援モデルに応用しました。職業性ストレス簡易調査票57項目を用いたスクリーニング、グループワーク、「気づきと行動を促すためのツール」として職場全体の状態を可視化する5段階の介入プロセス(説明と同意→調査・結果確認→分析→改善プログラム案の提示→検証・フィードバック)を提示しています。

山口県PT会(令和6年度から継続)──「つながりのある企業での実績から地域へ」をテーマに、2024年4月に士会内に保健事業推進部を新設。SAFE協議会のサブチーム構成員(山口大学・産業保健総合支援センター等)として健康づくりの勉強会や情報共有を進めてきた下地を、県全体の事業展開に接続しました。令和7年度は地域診断、立案プランのアセスメント・PDCA設計、実装に向けたモニタリング等へと進めています。

茨城県OT会(令和6年度から継続)──「県士会の強みを活かした事業計画の立案から試験的実践へ」。将来的に協会けんぽ作業療法連携支援センターの設立を見据え、県士会の基幹事業の一つとして位置づけ。メンタルヘルスチェックリストの策定、地域診断と戦略立案、ストレスチェックと実務相談、多職種連携と体制構築などを柱に、2025年度(令和7年度)から事業立ち上げの実施段階へと移行しています。

「伴走支援」をプロセスモデル化──47士会展開の下地

本事業の特徴は、モデル事業そのものではなく、モデル士会に対する「伴走支援」のあり方を精緻化した点にあります。事業担当士会(前年度・当年度のモデル)→情報収集・活動計画の進め方→モデルチームによる計画実行→実施状況評価→モデルチームの活動まとめ、という年度を通じた一連の流れを、他県士会が真似しやすい形に整理。伴走側が外向きの準備(パンフ・チラシ、申込フォーム等の整備)と内向きの準備(次年度予算、事業計画、人材育成、人材バンク化)のどこをどう支援するかも示されました。

関係機関との連携形成では、協会けんぽ、産業保健総合支援センター、保健所、保健師、地域・職域連携推進協議会、医師会、自治体(都道府県・市区町村)など、複数のルートがモデル事業を通じて具体化。単独の士会では壁になりやすい外部機関への入り口を、「伴走支援のやることリスト(やるべきこと)」として整理した点が今年度の実務的な成果です。

図26:伴走支援で重視されたポイント/伴走支援の"共に進める"プロセスモデルpdf-p94

研修会は令和7年10月に開催──「まとめ」は令和8年度以降の横展開へ

成果の普及を目的とする研修会は、令和7年10月19日にWEB形式(一部対面)で開催されました。全国健康保険協会(協会けんぽ)、産業保健総合支援センター・地域産業保健センター、保健所、産業保健師らの講義に加え、前年度・今年度モデルチームの報告、事業展開をテーマにしたグループワークで構成されました。

今後、令和8年度以降は、完成した実践版手引きと研修会で得られたプロセス・コンテンツを足がかりに、47都道府県PT・OT士会への横展開が本格化する見込みです。報告書は「事業実施を開始する都道府県士会の受託事業として伴走支援を行うためのしくみを整えながら、士会の強みや特色を活かした事業実施のプロセス」を次の検討課題として掲げています。

診療報酬・介護報酬の外側で、PT・OTが自治体や企業とどう組み、働き盛り世代の健康課題にどう関わるか。士会単位の組織的なアクションのテンプレートが、今回の手引きと報告書にまとめられました。

出典:

日本理学療法士協会・日本作業療法士協会・日本公衆衛生協会「令和7年度地域保健総合推進事業 報告書(2026年3月発行)」

同「自治体または企業における成人の健康づくりに寄与するための手引きー都道府県の理学療法士会・作業療法士会の担当者向けー【実践版】」(2026年3月発行)

リハ職が自治体・企業の予防事業にどう入るか──PT・OT協会が47士会向け手引き実践版を公開

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