これからの超高齢社会に対応すべく神経科学や臨床医学、神経薬理学、ロボティクスなど幅広い学問領域から障害克服に向けた新たな変革が必要とされている。また、リハビリテーション専門職にとって臨床知を感性で終わらせず、治療技術をいかに科学の本質として捉えるか、このことが職能としても重要とされる時代となってきた。特に回復期脳卒中においては自然経過を凌駕するようないわゆるニューロリハビリテーションとしての治療効果はいまだ十分ではない。これはおそらく日々の診療を学際的に捉えることが重要であることを示していると推察される。これはリハビリテーション医学の中では基礎と臨床の横断的研究が極めて少ないことに裏付けられている。名古屋セミナーではこれまで同様、リハビリテーション専門職の学術活動をいかに臨床知として日々の診療に役立てられるように、その懸け橋となることを目的に今後のリハビリテーション医療を考える場を提供することを目的としたい。それにより基礎研究と臨床医学との融合をさらに推進させ、垣根のない議論を目指したいと考えている。本セミナーはこれまでのように神経科学やリハビリテーション医療の基礎となる運動制御機構を中心とし、我が国の高齢者研究において最先端の実践的研究を推進する国立長寿研究センター予防老年学研究部の研究の紹介に至るまで、脳・神経の可塑性についての知見をさらに深めることから諸学が交差する密度の高い空間を提供したいと考えている。