―――どういう資格を取ったほうがいいですか?
永嶋先生:一番いいのは日本糖尿病療養指導士という資格がありますが、いろいろと条件がありまして、糖尿病専門医がいる病院で1000時間程度の指導経験がないと取得できません。これがネックになっているところがあります。
ほかにも都道府県ごとに糖尿病療養指導士という資格を設けているところがあります。糖尿病の専門医がいなくても講習会を受け、試験に通れば取得することができる資格ですから、比較的取得しやすい資格となっています。
日本糖尿病療養指導士を持っていると、専門・認定理学療法士の更新ポイントとして認定されていますが、都道府県のものでは、現在ポイントは認定されていません。しかし、今後はどうなっていくかはわかりません。
現在、糖尿病対策推進会議に絡んだ活動をしている理学療法士の調査を井垣誠先生(公立豊岡病院日高医療センター)が中心となって進めています。これは各都道府県別に活動が行われているのですが、兵庫県でも11月13日世界糖尿病デーに合わせて、イベントが開催されています。
内容としては市民向けの講演会等なのですが、そのようなイベントの講師に、どれだけの理学療法士がかかわっているのか、把握できていない現状にあります。
私の場合、兵庫県の糖尿病療養指導士連合会に入っていますので、そちらからの依頼がありますが、もしかしたら個人単位で依頼があるかもしれません。
当然、協会側も管理しきれていないと思います。そのため、一度全国でどのようなことが行われているのかを調べようと思い、10月に石川で開催されます全国学術研修大会で情報交換を行う予定です。
———話が前後しますが、なぜ先生は糖尿病を中心に行なっているのでしょうか?
永嶋先生:市立伊丹病院は、人工関節(股・膝)で有名なのですが、患者さんを診ている中で、糖尿病を学んだ知識が十分活かせる事に気がつきました。特に、患者指導や患者教育という部分です。私が人工関節について参考書の一部執筆をした際にも、患者指導や患者教育という部分を担当させていただきました。
「糖尿病で学んだ知識や技術がこんなにも他の患者さんにも活かせるんだ」ということをすごく学びました。今でこそチーム医療が言われていますが、糖尿病に関してはいち早くチーム医療を唱えていたのではないかと思います。
以前は、完全に主従関係が決まり、医者がいて、我々やその他職種がいるという時代でした。糖尿病専門医がいち早く「それではダメだ」ということに気付いたのではないかと考えています。これは私の私見です。
私は、チーム医療にすごく面白みを感じていました。以前当院に勤務していた糖尿病の専門看護師さんでも運動療法に関しては、「理学療法士さんには敵わない」ということをおっしゃってくれていました。
おだてられた部分もあったとは思いますが、患者さんの声としても同意見を言われることもありました。やはり、「理学療法士は運動のプロである」と、経験を通して再認識しました。
―――初期の患者教育を誰にされたかというのはすごく大事ですよね。
永嶋先生:そうですね。糖尿病というのは、幾度となく入院してくる方がいて、要は入院でコントロールして帰ったら不摂生して、不摂生するために入院しての悪循環です。
しかし、よくよく考えると、入院してくる人たちは治療を中断せず、継続して治療を受けてきている人たちと考えることもできます。そういう面で考えると良い事ともいえます。
問題なのは、治療を自己判断で中断する人です。10年くらい病院を受診せず、来た頃には、目が見えなくなっていたり、足が壊死したりしています。「せっかく指導したのに意味ないな」と思いますが、逆に考えると、一方的な指導のため、そうなってしまったと責任を感じます。
人によっては足が切断になったとしても、「美味しい物が食べたい」という人もいると思いますので、ちゃんと本人の想いを聞いてあげることが大事かなと思います。
*目次
第三回:理学療法士は運動のプロである
日本糖尿病理学療法学会の情報
|設立の趣旨
糖尿病は増加の一途を辿る国民病であり、理学療法士には糖尿病の基本治療である運動療法の専門家として、糖尿病チーム医療の主軸を担うことが期待されています。
理学療法士による糖尿病患者への関わりは世界的にも類がなく、また、糖尿病理学療法に関するエビデンスは蓄積されていません。本学会は、糖尿病に対する理学療法の理論、介入方法および効果検証に関する学術研究の振興と発展を図り、世界に先駆けて糖尿病理学療法学の体系化を目指します。
また、理学療法診療ガイドラインや成書の作成、糖尿病理学療法を専門とする人材育成への活動も推進します。
永嶋先生オススメ書籍
やらな、しゃーない! 1型糖尿病と不屈の左腕
僕はまだ がんばれる-不治の病 1型糖尿病患者、大村詠一の挑戦-
永嶋 道浩先生のプロフィール
資格:
理学療法士
日本糖尿病療養指導士
3学会合同 呼吸療法認定士
専門理学療法士(内部障害理学療法)
がん患者リハビリテーション専従理学療法士
日本転倒予防指導士
所属:
市立伊丹病院医療技術部医療技術室リハビリテーション担当 副技師長
日本糖尿病理学療法学会 運営幹事
糖尿病療養指導士兵庫県連合会 理事
神戸大学医学部保健学科 臨地教授
阪神内部障害リハビリテーション研究会 世話人
所属学会:
日本理学療法士協会、日本糖尿病学会、日本糖尿病理学療法学会、糖尿病療養指導士兵庫県連合会、日本緩和医療学会、関西がんチーム医療研究会、臨床コーチング研究会、阪神内部障害リハビリテーション研究会、日本転倒予防学会、下肢慢性創傷の予防・リハビリテーション研究会、日本リハビリテーション栄養研究会
執筆: