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最終回:リハビリテーションは分業ではなく協業【秋田 裕先生】

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知ることのススメ

― 新しいことを始めるとき、なかなか行動に移せない方も多いと思います。そんな方々に何かアドバイスをいただけますでしょうか? 

 

秋田先生 まず、“知ること”が大事です。その場に足を運ぶこと。それに自分が加わることで、変化が生まれるか、ということを大事にしています。協会の中でも、福祉用具や義肢・装具に理学療法士が関わる機会が少なくなってきていることが問題視されています。

 

作業療法士は、福祉用具に関して「自分たちの仕事だ」という強い意志をもってやっています。理学療法士も、福祉用具の使い方や調整方法、使い方によって、効果があることを知っている必要があります。私たちの若い頃は、理学療法士が装具の調整や車椅子のパンク修理もやっていましたよ。

 

今は、義肢装具士という専門家がいますから、関わりがなおのこと減り、「自分たちの専門外だ」と線引きしていますよね。理学療法士と作業療法士は、重なり合うところがありますし、言語聴覚士の分野にも重なり合っています。線引きは重要なことですが、重なり合うからこそ、「一緒にやっていこう」と考えを改めることが重要です。

 

「分業」とは仕事を効率よく進めていくためには有効な手段ですが、たとえば竹細工で籠を作る時、竹を育てる人・竹を採集する人・竹を割いて使えるような状態にする人・それを使って籠を作る人というように。

リハビリテーション医学の先達、上田 敏先生は「協業」と言う言葉について、リハビリテーションの世界では、それぞれの専門職が、その専門分野だけを担当する「分業」ではなく、専門性を重ね合わせて協力して働く「協業」が効果を発揮しうまくリハビリテーションを進めていくことができる、と書いていました。

 

 

スペシャリストよりも、ジェネラリスト

― 理学療法士の仕事を一言に表すとどんな仕事でしょうか?

 

秋田先生 非常に狭い意味では、人を観察する中で「あの人は股関節悪いよね」などと、分かるわけですよね。人の運動・解剖・生理学について知識があるので、異常な動作がわかるわけです。それに加えて、改善方法も提示することができます。それは、理学療法士が、体の動きの専門家だからです。それが、理学療法士の専門性なのですが、別の視点で考えると、「結局その動きが改善されたことで、何が得られたのか?」という視点が、すごく大切だと思っています。

 

歩けなかった人が歩けるようになった、ただ、スポーツ選手だとそれでは不十分なことがあります。それは、人によって様々な視点があるわけです。ですから、その人にとって何が大事なのかという視点を持ち続けることが重要になります。

 

長澤弘先生が学会長になった第49回日本理学療法士学会のテーマを「あなたの生活を支えます」というテーマにしました。半田会長からもお褒めの言葉を頂きましたが、従来の理学療法士の学会では、理学療法のエビデンスや技術を高めるというテーマばっかりだったのですが、はじめて「生活」という言葉を使ったのが49回の学会でした。

 

今、「地域包括ケアシステムの推進」という言葉が盛んに使われていますが、これを考える時に、私たち理学療法士が国民の生活を支えるんだ、ということが大事になってきている証拠です。身体的な問題にアプローチするというのが理学療法士の専門性ですが、その後に控えている「生活」を真剣に考えなくてはいけません。理学療法士でも「私は脳卒中の専門です」と言って、「手足の麻痺は良くなったけど、その後の生活をどう楽しむのかまでは考えていません」では、問題があるわけです。

 

理学療法士も、手足の障害ばかり見るのではなく、「その人にとって大事なことは何なのか」という部分を診なくてはいけません。若い理学療法士の方の多くは、どちらかというと治療的な技術の講習会に興味をもっていると思います。もっと視野を広げましょう。

 

わたし自身が、チェアスキーに関わっていたとき、いろんな人にお世話になり、その経験が現在まで生かされていると実感しています。みんながみんな、同じ経験をできるわけではありません。そういった環境に、飛び込んでいくことが大事なことだと思います。

 

広い視野をもって仕事をやっていく中で、専門性をもった理学療法士になってほしいというのがメッセージですかね。

 

― 最後に、秋田先生にとってプロフェッショナルとは?

 

秋田先生 自分の置かれた環境の中でベストを尽くすこと

 

秋田先生のオススメ書籍

 

【目次】

第一回:教育は4年制で行うべき 

第二回:チェアスキーの発展

第三回:長野オリンピックから変わった障害者スポーツの認識

第四回:Assistive Technology

最終回:リハビリテーションは分業ではなく協業

 

日本支援工学理学療法学会の情報

設立の趣旨

義肢装具、車いすや福祉用具による急性期、回復期、維持期(生活期)、終末期の各病期での介入効果の検証や開発等を基盤とする臨床研究の推進とEBMの構築を図り、障がい者の生活自立支援を促進するための住環境整備への関わり、ロボティクス技術による運動療法機器や。福祉工学的支援としての介護機器の活用、新たな開発や効果検証など幅広い領域を網羅しています。さらに運動器、脳血管障害や脊髄損傷を始めとする中枢性神経障害、内部障害や虚弱高齢者等を対象として、関連する領域との横断的臨床研究活動の実践、障がい者(児)、高齢者の活動・参加とノーマライゼーションの促進、さらに隣接する理学療法学会との積極的連携を図りながら、包括的理学療法サービスの展開とQOL向上に寄与することを設立目的としています。

引用:日本支援工学理学療法学会HPより

 

第一回 効果をあげる理学療法技術としての装具療法を考えるフォーラム開催

事前登録を開始しました(H29.12.1~)。

当日受付は行いません。募集定員が少なく、早期に定員となることが予測されます。
受講をご希望される方は早めにご登録をお願いいたします。
 

 

日本理学療法士学会 動物に対する理学療法部門の情報

設立の趣旨

動物に対する理学療法部門は、動物を対象とし、動物自身と動物と生活する人を包括的に支援していくために、日本動物理学療法研究会や関連学会と連携し、獣医療におけるリハビリテーションおよび理学療法に関する臨床研究・基礎研究を行い、人材の育成に努め、動物理学療法の普及と獣医療の発展に寄与することを目的とします。
 また、世界理学療法連名のサブグループの連携窓口になります。

引用:動物に対する理学療法部門HPより

 

秋田裕先生 プロフィール

【経歴】

1949年東京で生まれる。

1969年4月 高校卒業 後、2年間の浪人を経て国立療養所東京病院附属リハビリテーション学院理学療法学科入学。

1973年3月 4年かけて同校卒業。京都府立洛東病院、神奈川県総合リハビリテーションセンター、健康保健総合川崎中央病院(現 川崎社会保険病院)、を経て横浜市総合リハビリテーションセンター2009年の定年まで勤務。

 

2007年 日本理学療法士協会賞受賞

2011年 神奈川県知事表彰(保健衛生表彰)受賞

2015年 厚生働大臣表彰受賞

 

【役職等】

社団法人日本理学療法士協会代議員、生活環境支援系専門理学療法士。

日本支援工学理学療法学会運営幹事

動物に対する理学療法部門代表運営幹事

社団法人 神奈川県理学療法士会監事

日本身体障害者補助犬学会理事長

 

【その他】

 1978年より、車いす障害者のスキー用具である「チェアスキー」の開発と普及活動に参画。1980年の日本チェアスキー協会の設立以後、運営委員、強化部員、理事。日本障害者連盟の設立に携わり理事として障害者スキーの普及と競技選手の養成など、国内国外での活動にかかわる。1984年にはスイス・ドイツの障害者と共に開催したシットスキー国際ミーティング(スイス・サンモリッツ)の企画運営に携わり、1988年第4回冬季パラリンピック大会(オーストリア・インスブルック)、1992年第5回冬季パラリンピック大会(フランス・ティーニュ)にはサポーターとして参加した。1998年第7回長野パラリンピック冬季大会で女子選手として初めて金メダルを獲得した大日方邦子選手は横浜リハセンターででの担当理学療法士だった。

 2000年の上海万博では、万博史上初めて開設された障害者パビリオンで、補助犬(盲導犬、介助犬、聴導犬)5頭をユーザーとともに紹介。理学療法士の職域拡大の課題として、動物に対する理学療法の確立を目指して活動している。

最終回:リハビリテーションは分業ではなく協業【秋田 裕先生】

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