-公認会計士事務所ではどんな仕事をされているのですか。
宮内さん:業務内容は大きく税務アドバイス業務と経営アドバイス業務に分けられます。税務アドバイス業務は税務申告書の作成や税務代理を行います。また、経営アドバイス業務は、経営計画をはじめ、クライアントの資料を基に会計資料の作成、業績分析、資金繰り計画等を提供します。信頼関係を築いてクライアントから感謝された時にこの仕事のやりがいを感じます。
これは理学療法士と患者さんとの関係性にも通じるものだと思います。また、社内環境整備の一環としてクラウドサービスを使って社内のデータベース化も行っています。他にも、病院の事務職員向けに社内の仕組みづくりについて研修を行ったりと理学療法士としての経験も活かしながら幅広く仕事をさせてもらっています。
今回私が代表に就任したHiLOソーシャルクリエイトは、私が所属する河野公認会計士事務所のグループ会社になります。
-今回新会社を設立したきっかけを教えてください。
宮内さん:以前から感じていたのですが、例えば病院で患者さんを支援する医療従事者が慌ただしい現場の中で疲弊している現状を見て、これからは「支援している人を支援する」ことが必要になるのではないかと考えていました。
お陰様でここ数年の間に、お互いの夢や目標に共感できる人に囲まれるようになりました。その中には、ヘルスケアに従事する人はもちろんのこと、貧困問題や就労支援、学習塾などいわゆる社会的な課題を解決しようとする取り組み(ソーシャルビジネス)に従事している人が多くなっています。ソーシャルビジネスも事業の持続性が重要であるため、一般的な企業と同様「収益を上げる」ことが大切です。しかし、日本は昔から「社会貢献は善意のボランティアでやるべきこと」という考えがあるせいか「利益を出さなくても良い」いう意識が働き、起業しても持続性を保つことが難しいケースも目にします。
それをなんとかできないか、と思ったのがきっかけでした。その解決のために、前述の経営アドバイス業務をソーシャルビジネス分野に切り出して重点的にサービスを提供することを考えました。
もともと河野公認会計士事務所としても同様の支援を行っていたのですが、別会社として事業をはじめることで事業を加速化することにしました。社会的課題解決というと、NPOや公益法人、医療法人や社会福祉法人等公的なイメージがありますが、クライアントの企業形態は特に限定しておらず、株式会社ももちろん対象になります。ちなみに税務アドバイスが必要な場合は河野公認会計士事務所でカバーすることができるので、相乗的な効果もあります。
-新会社の事業内容を教えてください。
宮内さん:主な事業内容は経理業務やレポーティング業務を中心としたコンサルティング業務です。バックオフィスの請負業務というとイメージしやすいと思います。これは、クライアントの事業の継続性と信頼性の向上を目的としています。
NPO法人を例にして話すと、非営利法人であっても、事業を行う以上は事業計画性を持って収益性のある事業を行う必要があります。そのためには、迅速な予算と実績の比較、分析を行い次のアクションを起こすことが大切です。また、会社の信頼性の向上のためには利害関係者に対して積極的な情報開示(特に財務情報)を行う必要があります。現に、NPO法人は、法律の改正により2018年10月1日以後に作成する貸借対照表(会社の資産状況をまとめたもの)については公告の義務が生じます。
これは、公共(非営利)に寄与する組織は相応の事業運営と内容の開示の責任を求められると考えることもできます。そのため、これらの業務を会計・税務の専門的知識を持った弊社が支援することで、事業活動を加速させることが可能になります。また、弊社のwebサイトでも起業や経営に役立つ情報を発信していく予定です。
現在弊社では、事業領域を子供・教育、高齢者・障害者、地域の3つに分けています。今後の目標としては、まずそれぞれの事業を収益化しより多くの社会的課題の解決の支援をしたいです。また、個人的にはセラピストが経営している会社の支援ができると面白いと考えています。
-最後に、セラピストに向けてメッセージをお願いします。
宮内さん:最近は、セラピストも働き方の選択肢が増えてきています。昔は会社や病院などの法人が労働単位でしたが、近年フリーランスが増えてきたことで個人、最近はプロジェクトごとにというように、労働単位が細分化され、徐々に自由度が高くなっています。保険外の活動に従事するセラピストも増えていますので、以前よりは一歩踏み出しやすくなった印象があります。
また、法人を設立する際には企業形態はしっかり考えたほうがいいです。設立費用が安いから合同会社、非営利のイメージを出したいからNPO法人というだけの判断では後々会社運営に支障が出てくる場合があります。それぞれの企業形態に適した設立趣旨や活動方法があるから、結果として様々な企業形態があります。金銭的負担やイメージだけではなく、会社の長期的なビジョンと照らし合わせて考えると良いと思います。
ー完。
【目次】
第二回:難病のレジリエンス
第三回:公認会計士から見た理学療法士
最終回:コンサルティング会社の設立
宮内さんオススメ書籍
宮内謙一さんのプロフィール
公認会計士・理学療法士
会計・税務のほか情報セキュリティやシステム構築にも強みを持つ。
現在は、代表取締役として社会的課題に取り組む企業に対してコンサルティングを提供している。
また、仕事の傍ら持病のクローン病啓発のための活動も行っている。
会社webサイト:http://hilo-sc.com
TED形式のイベント CPA TALKs2017動画:
https://jicpa-tokyo-cpa-youth.jp/movie/miyauchi/
<最終学歴>
神村学園専修学校 理学療法学科
<職歴>
2005年-2008年 医療法人厚徳会 日高内科クリニック 理学療法士
2010年-2011年 医療法人トウスイ会 稲津病院 理学療法士
2012年-2013年 介護老人保健施設 長生園ナーシングセンター 理学療法士
2013年-2015年 オーチアス株式会社 経理責任者
2015年-2017年 新日本有限責任監査法人 公認会計士
2017年-現在 河野公認会計士事務所 公認会計士
2018年5月-現在 株式会社HiLOソーシャルクリエイト 代表取締役