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#2 先進国の理学療法に触れる旅|世界17ヶ国回ったからこそ見えたこと

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オーストラリア、ニュージーランド、イギリス、フランス、ベルギー、オランダでは、整形・スポーツ理学療法クリニックや大学院などを見学させていただきました。国内トップアスリートを担当するセラピストの臨床も見学させていただくこともありました。彼らから学ぶことができた良い点をまとめますと、

 

・エビデンスベースが根付いている

・患者さんのマネージメントに重きを置いている

・BioPsycoSocial (身体、心理、社会)で全体像を捉えている

・問診、評価に時間をかける

・患者さんへの説明が上手

・徒手療法、運動療法はシンプル

・ツールも積極的に利用している

・理学療法の枠組みが広い

 

ということでした。中でも「理学療法の枠組みの広さ」を知り、私はより理学療法を好きになれました。彼らは開業権を持ち、自分自身のもとに患者さんがやってくるため、自己の知識・技術の研鑽に熱心です。そのため、Neuro dynamicsやDry needling (鍼灸のようなもの)、Visceral technique (内臓アプローチ)なども理学療法として患者さんに提供します。また、イギリスの理学療法士は薬の処方もできるそうです。

 

ツールの利用にも積極的で、グラストンといったInstrument Assisted Soft Tissue Mobilization (IASTM)を用いる場面をよく見かけました。ベルギーのクリニックでは、iPadを有効活用しており、トレーニング指導時には、必ずトレーニング中の動画を撮影します。それらをワードファイルに張り付け、回数・セット数を追記し、患者さんに送っていました。ランニングバイオメカニクスの解析にも専用のアプリを用いて、介入前後をわかりやすく伝えていました。

 

Graston、TheraGunや、腹圧トレーニングに用いるツールなど

 

フランスにてINSEP見学

INSEPとは、National Institute of Sports, Exercise and Performance の略称で、日本でいう国立スポーツ科学センター(JISS)にあたります。フランスのオリンピックメダリストの50~70%の選手が利用するそうで、トレーニング、治療、リカバリーの最新設備を備えていました。リハビリに関しては、データを集めてより良いプロトコル作成しようとする一方で、臨床では選手個々の特徴や競技特性に合わせた対応を大切にしているとのことでした。そのため、この施設で働くためには高い水準が求められており、臨床経験10年以上、マニュアルセラピーなどの資格が必要なようです。

 

日仏理学療法学生交流会に参加した学生さん達とともに見学しました。

 


INSEPのリハビリ室

 

光療法を利用したリカバリーベッド

 

フランスでは、Podiatristといわれる足病医の方々の大学や臨床現場を見学できたことも貴重な経験でした。彼らは足の専門家で、足部の評価、歩行分析、インソールの作成はもちろんのこと、爪や皮膚のトラブルにも対応します。大学では、先生監督のもと、患者さんからお金をいただいて学生さんが臨床実習されており、とても良い環境だと感じました。 

 

Podiatristの臨床場面(Ecole d’Assas HP より引用)

 

Movement Scienceを学びにヨーロッパへ

私は大学院生の時に、Functional Movement Screenという動作チェックテストを用いて、ランニング障害リスクを判定する研究を行っていました。効率の良い身体の使い方を獲得すれば、ケガの予防につながると思っていたためです。そのため、イギリスのサウサンプトンにて、Movement Science 2018という国際学会に参加できたことは幸運でした。世界中から理学療法士やトレーナー、研究者が参加し、TKA術後リハに関する疫学研究や、最新の動作チェックテスト、ACL復帰プログラムの発表などがありました。

 

Movement Science2018の会場風景

 

中でも特に印象に残ったものは、The Performance Matrix (TPM)という動作チェックテストでした。10種目ほどの動作テストで構成され、各テストにつき5-6個ほどの項目があり、各項目0か1かで採点していきます。TPMの動作テストは、Low Threshold とHigh Threshold に分類され、前者は日常生活での、後者はスポーツパフォーマンス時のボディコントロールを評価します。実際にイギリスのクリニックで体験しましたが、自分の細かい動きの癖を見つけることができます。また、採点結果に基づいて、運動プログラムも提示してくれるシステムが構築されていました。

 

 
TPMのフィードバック用紙。この場合、私はLow Thresholdでのボディコントロールが苦手なことを示します。

 

学会後には、サウサンプトン大学のMaria先生の研究室見学もさせていただきました。彼女のグループはサッカー選手向けに、障害予防のための動作チェックテストを開発しています。動作解析にはViconを用いており、設備は日本との違いを感じませんでしたが、院生6人中3人は留学生で、国際色の高さに驚きました。また、International Movement Screening and Interventions Group (IMSIG) のメンバーに入れていただくことができ、今後情報交換できるネットワークを築けたことは大きな収穫となりました。

 

  
真ん中がサウサンプトン大学のMaria先生です。

 

他にも、陸上競技場に併設したクリニックや、TPMを用いてチェーン展開しているクリニックなど、様々な施設を見学させていただきました。今回のきっかけをくださった畿央大学の松本大輔先生、フランスの理学療法士養成校Ecole d’Assas の立花祥太朗先生には大変感謝しています。

 

*目次

#1:なぜ海外に飛び出そうと思ったのか

#2:先進国の理学療法に触れる旅

#3:途上国での医療と理学療法、そしてスポーツ

#4:盛り上がるアジアの国々

 

堀田孝之先生プロフィール

学歴

2009-2013 京都大学人間健康科学科理学療法学専攻

2013-2015 京都大学大学院医学研究科人間健康系科学専攻(修士:人間健康科学)

職歴

2013-2015 あそうクリニック

2015-2017 社会医療法人行岡医学研究会 行岡病院

2018-   あそうクリニック

2018-   訪問看護ステーションめりっと

#2 先進国の理学療法に触れる旅|世界17ヶ国回ったからこそ見えたこと

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