ミキタカヒロの腰痛講座 Vol.1【STarT Back Screening Tool】

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【6月16日】三木先生による「非特異的腰痛に対する理学療法―Classification(分類)に基づいた考え方と実践―」はこちら

▶︎ https.jp/1post.jp/4263

 

腰痛の分類分け

腰痛は、病期で分類すると「急性腰痛」と「慢性腰痛」に分類することができる。慢性腰痛の定義は、論文により様々であるが、ヨーロッパのガイドラインによると、12 Weeksを超えて続いている場合を慢性腰痛としている場合が多い。

 

また、慢性腰痛を「発症した期間でなく、疼痛の発症機序によるもの」として考えている場合もある。

 

また、腰痛には特異性腰痛と非特異的腰痛に分別することができ、特異性腰痛は、脊柱菅狭窄症、椎間板ヘルニアなどと分類でき、非特異的腰痛に関しても、さらに様々なサブグループ化することが可能である。

 

このように腰痛といっても、様々な病態があり、腰痛という言葉では一括りにできない場合が多く、それぞれに対し異なる介入をすることが必要である。極端な例をあげると、慢性腰痛に対してはホットパックなどの物理療法を使用することがあるが、急性腰痛に対しては良くないとされている。

 

このように同じ腰痛でも、病期や原因によって介入方法のベクトルが全く異なる。よって、腰痛という大きなものを分類し、サブグループに分け、それに対応した介入を行うことが世界でスタンダードになりつつあり、”Stratified Care”と呼ばれている。そのサブグループ化には様々なモデルがある。

 

今回はその中の一つである、急性腰痛に使用しやすい”Stratifed Care based on Prognosis”について説明する。

 

急性腰痛の予後

その説明をする前に、急性腰痛の予後についての論文について紹介する。

 

腰痛が発症した直後は、すべての人が「急性腰痛」であるが、ある群はそのまま改善し、ある群は慢性化してしまい、慢性腰痛となってしまう。Hanschkeらの腰痛の疫学研究によると、約30%の人が12ヶ月後においても腰痛が完全に改善していないことを報告している。

 

また、その患者の特徴として、次のような特徴があった。

☑︎高齢な人

☑︎疼痛レベルが高い人

☑︎腰痛の発症期間が長い人

☑︎活動量を制限していた人

☑︎抑うつ傾向な人

☑︎痛みが永続的に継続すると考えている人

☑︎労災などの補償がある人

 

Stratifed Care based on Prognosis


以上のことからも、急性期においての腰痛マネジメントの一つのキーワードは「どのように予後が良くなりそうな人と予後が悪そうな人を発症直後から”分類”するか」ということである。このことができれば、予後が良さそうな人と予後が悪そうな人とで、介入方法を変えることが可能となる。

 

その分類の方法が”Stratifed Care based on Prognosis"である。これは急性腰痛の人に対し、質問用紙などのスクリーングツールを使用し、予後が良さそうな群と予後が悪くなりそうな群に分類し、それに対して介入方法を変えていく。

 

世界的に使われているスクリーングツールは,

 

"The  Orebro Musculoskeletal Screening Questionnaire (Linton & Halden 1998)"

"Chronic Pain Risk Prognostic Screen(Von Korff et al., 2013)"

"STarT Back Screening Tool(Hill et al., 2008)

 

がある。今回は”STarT Back Screening Tool”を詳細に紹介していく。   

 

STarT Back Screening Tool

このスクリーニングツールは、イギリスのKeele Universityが開発、発展させている。9問の質問からなり、4問が身体的な質問、4問が心理社会的要因を含む質問、1問が全体的な印象を問う構成となっている。

 

この質問を「はい」なら一点、「いいえ」なら0点とし、その合計点により、「Low Risk」「Medium Risk」「High Risk」に分類する。分類の仕方は、少し複雑で、あり、図の通りとなる。

 

これらの3つの分類に分け、それに合った対応を行うことでより高い介入効果が期待できる。

 

実際に、2011年に有名な雑誌「The Lancet」に851名の腰痛患者に対してSTarT Back Screening Toolを使用して介入し、

1,患者のアウトカム

2,患者の満足度

3,病欠期間の短縮

4,医療費の削減

が有意に差が出た事が報告されている(Hill et al, 2011)。

 

Riskごとの介入方法

Low Risk:Low Riskに分類された場合、予後が良いことが予想されるため、最小限の介入で良いとされている。介入方法には、ガイドラインを用いてのアドバイス、例えば「過度に安静にせずになるべく活動的に生活してください」などが含まれる。

Medium Risk:ここでは、エビデンスに基づいた理学療法などが含まれている。

Hight Risk:High Riskに分類された患者は長期化(慢性化)してしまう可能性が高いため、「Psychological Informed Physiotherapy」が推奨されている。

 

それぞれの介入の詳細はここでは省くが、重要なことは「患者のリスク度に応じて分類し、それに応じた理学療法を提供する」という考え方である。

詳細を知りたい方は下のリンクから知ることができる。

▶︎ https://www.keele.ac.uk/sbst/

 

【6月16日】三木先生による「非特異的腰痛に対する理学療法―Classification(分類)に基づいた考え方と実践―」はこちら

▶︎ https.jp/1post.jp/4263

 

ミキタカヒロ先生の著書

非特異的腰痛のリハビリテーション (痛みの理学療法シリーズ)
Posted with Amakuri at 2018.10.19
赤坂 清和, 竹林 庸雄, 三木 貴弘
羊土社

 

参考論文

Henschke, N., Maher, C. G., Refshauge, K. M., Herbert, R. D., Cumming, R. G., Bleasel, J., … McAuley, J. H. (2008). Prognosis in patients with recent onset low back pain in Australian primary care: Inception cohort study. Bmj, 337(7662), 154–157. http://doi.org/10.1136/bmj.a171

Hill, J. C., Dunn, K. M., Lewis, M., Mullis, R., Main, C. J., Foster, N. E., & Hay, E. M. (2008). A primary care back pain screening tool: Identifying patient subgroups for initial treatment. Arthritis Care and Research. http://doi.org/10.1002/art.23563

Linton, S. J., & Hallden, K. (1998). Can we screen for problematic back pain? A screening questionnaire for predicting outcome in acute and subacute back pain. The Clinical Journal of Pain, 14(3), 209–215.

Von Korff, M., Shortreed, S. M., Saunders, K. W., LeResche, L., Berlin, J. A., Stang, P., & Turner, J. A. (2014). Comparison of back pain prognostic risk stratification item sets. The Journal of Pain : Official Journal of the American Pain Society, 15(1), 81–89. http://doi.org/10.1016/j.jpain.2013.09.013

Hill, J. C., Dunn, K. M., Lewis, M., Mullis, R., Main, C. J., Foster, N. E., & Hay, E. M. (2008). A primary care back pain screening tool: Identifying patient subgroups for initial treatment. Arthritis Care and Research. http://doi.org/10.1002/art.23563

Forsbrand M, Grahn B, Hill JC, Petersson IF, Sennehed CP, Stigmar K. Comparison of the Swedish STarT Back Screening Tool and the Short Form of the Örebro Musculoskeletal Pain Screening Questionnaire in patients with acute or subacute back and neck pain. BMC Musculoskelet Disord [Internet]. 2017;18(1):89. Available from: http://bmcmusculoskeletdisord.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12891-017-1449-9

Hill JC, Whitehurst DGT, Lewis M, Bryan S, Dunn KM, Foster NE, et al. Comparison of stratified primary care management for low back pain with current best practice (STarT Back): A randomised controlled trial. Lancet [Internet]. 2011;378(9802):1560–71. Available from: http://dx.doi.org/10.1016/S0140-6736(11)60937-9

Foster NE, Hill JC, O’Sullivan P, Hancock M. Stratified models of care. Best Pract Res Clin Rheumatol. 2013;27(5):649–61. 

 

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