世界から腰痛が消えたなら|三木貴弘

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2018年10月31日に発刊された書籍「非特異的腰痛のリハビリテーション」の紹介です。

 

7月21日に発刊された世界的な科学誌「Lancet(ランセット)」の表紙に「Bio-Medical Model(医学生物モデル)のバブルは終わりに向かい、Helathにおいて社会、ふるまい、環境を考慮したモデル=生物心理社会モデルが必要になってきている(注:意訳)」と、慢性痛に関するこんな一文が掲載されました。


腰痛の中でも、「非特異的腰痛は原因が分からない」といわれていますが、それは医師の視点からみて「構造的(=画像所見)に原因が特定できない」ということです。しかし理学療法士は、機能的視点からも社会心理的視点からも考えることができ、それらをもとに考えることで非特異的腰痛の原因を見極めることが可能となります。つまり、手術適応ではない非特異的腰痛は、理学療法士が中心となって取り組むべきものだと、私は考えています。 

 

全ての慢性腰痛=心理面や考え方の歪みによって生じる、と極論で考えている人もいるかもしれませんが、全ての慢性腰痛がそこに分類されるわけではありません。なかにはメカニカルストレスが継続的に生じていて腰痛を繰り返すことが慢性化している場合があります。

 

その場合は、厳密に述べると繰り返される急性腰痛であり、それは理学療法士が得意としている動作や機能的な問題点を見つけ出すことで解決することが可能です。一方で、中枢性感作や心理社会的要因の影響が大きく、そのせいで慢性化している場合もあります。その際は認知行動療法などが有効になります。


つまり、慢性化している腰痛といっても原因は様々であり、生物ー心理ー社会的、の全ての側面から考え、どの部分の影響が大きいのかを見極めて分類する必要があります。それが出来ればそれぞれに対応する介入を行うことで改善に向かうことができます。

 

腰痛をこの世からなくしたい

非特異的腰痛のリハビリテーション (痛みの理学療法シリーズ)
Posted with Amakuri at 2018.10.27
赤坂 清和, 竹林 庸雄, 三木 貴弘
羊土社

このたび、「非特異的腰痛のリハビリテーション」という書籍を執筆・編集させていただきました。

 

本書では、非特異的腰痛を様々な視点から評価できるように構成いたしました。前半で腰痛の基本的な知識の整理をエビデンスをもとに解説、後半で分類=Classificationの考え方を元にし、非特異的腰痛を痛みの原因別にサブグループ化し、それぞれに対して解説しています。そしてそれに対する介入を動画も含めて再現しやすいように紹介、解説しています。最後にはケーススタディとして、どのように非特異的腰痛を分類していくかの臨床推論を載せています。


もし興味がありましたら、一読していただけると幸いです。本書を読むことで非特異的腰痛の全体像が見えてくると思います。

 

皆さんと一緒に腰痛をこの世からなくしたいです。

そして、もっと自分のやりたいことと向き合える未来を作りたいです。

【目次】

第1章 腰痛の基礎知識

 
1.腰痛の疫学 
2.腰椎と骨盤帯の解剖学 
3.腰椎と骨盤帯の運動学 
4.腰痛が生じるメカニズム 

第2章 腰痛を適応で分ける 


1.腰痛のRed flags 〜理学療法の適応外〜 
2.特異的腰痛 
3.非特異的腰痛 〜生物心理社会モデルにもとづいて〜 
4.急性腰痛 〜考え方とマネージメント〜 

第3章 非特異的腰痛の評価 


1 主観的評価 〜たかが問診,されど問診〜 
2 客観的評価 

第4章 非特異的腰痛のClassification 


1.Classificationとは何か? 
2.骨盤帯痛と腰痛を分類する 〜非特異的骨盤帯痛の評価と分類〜 
3.中枢性感作由来の疼痛を分類する 
4.Motor control障害とMovement障害を分類する 
5.心理社会的要因が腰痛に与える影響と評価方法 

第5章 腰痛のClassificationにもとづいた介入 


1.非特異的腰痛に対する介入の基本的な考え方 
2.骨盤帯痛に対する介入 
3.Motor control障害に対する介入 
4.Movement障害に対する介入 
5.中枢性感作由来の腰痛に対する介入 
6.心理社会的要因の影響が強い場合の介入

第6章 ケーススタディ 


1.長時間の立位で腰痛が生じる症例 
2.腰部の動きが硬く,動かすことへの恐怖感が強い症例 
3.妊娠・出産後に腰背部に疼痛が出現した症例 
4.痛みへの執着が強く,不安感が強い症例

 

詳細は>>非特異的腰痛のリハビリテーション (痛みの理学療法シリーズ)

世界から腰痛が消えたなら|三木貴弘

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