今年12月、体内時計が記憶を想起させることに関連し、その分子メカニズムが初めて明らかにされた。
▶記憶を思い出すには体内時計の働きが必要である‐脳内の体内時計が記憶を思い出させることの発見とその分子機構の解明‐
動物の体内には生物時計(体内時計)があり、24時間の生活リズムを産生しており、ほ乳類では体内時計の中枢が視交叉上核にある。
喜田聡らのグループは、人が夕方の時間帯に記憶障害を示すことから記憶に対する生物時計の役割の解明に取り組んでいる。
今回の研究では、海馬の生物時計の働きを阻害した遺伝子操作マウスを作製し、実施された。
この遺伝子操作マウスは、視交叉上核の生物時計は正常であり、海馬の生物時計のみ損なわせている。
様々な記憶テストを実施した結果、このマウスは記憶ができるが、思い出すことに障害が起き、とくに夕方の時間帯に思い出せなくなることが判明した。
そして、遺伝子発見の網羅的な解析から、神経伝達物質ドーパミンの情報伝達が記憶を想起させることに関連しており、ドーパミン情報伝達を活性化させることで、遺伝子操作マウスが記憶を想起できるようになった
今回の成果は、ドーパミンからの情報伝達経路を活性化させることが記憶障害を改善させる可能性を初めて示した。
また、加齢に伴う記憶の想起障害の改善や記憶想起能力を向上させることで、記憶想起障害が改善されることが期待される。