週の真ん中水曜日の江原です。慢性疼痛患者に理学療法アプローチを行う時に、実施する前段階で苦労したことはありませんか?理学療法を提供する際に抵抗されることがあります。例えば不平不満が多く、セラピストの提案を聞いてくれない方が思い出されます。
本日は不平不満が多く理学療法が進まない、もしくは不平不満で心が折れそう、などなど慢性疼痛リハビリで苦労されているセラピストを想定して、行動科学をベースにした対応について書きます。
不平不満が多い患者
『検査(質問紙)ばかり書かせやがって、いったい何時間かかるんだ!』
『リハビリは何分間なんですか?まだ終わらないの?』
『痛くてたまらないんだ。どうにかならないのか!!』
例を挙げればきりがないですが、このような不平不満は外来リハビリでも経験します。入院患者だとリハビリ拒否もありますね。このような一見わがままな行動はどのように形成されていくのでしょうか?確かに質問紙による評価は長いし、心身に負担をかける。でもちゃんとやってくれる患者も多い。
この差はどこから来るのでしょうか?実は不変不満の背景にも『痛み』は大きく関係します。
痛みにより行動は強化される
痛み関連行動、『社会的な痛み』は患者本人だけでなく周りの人を巻き込むと言われています。例えば、友人何人かで食事をしている時、急に腹痛が襲ってきたとしましょう。
『あいたたたたたた』
と思わず声が出てしまったとき、周りの友人は、
『大丈夫?お店の人呼ぼうか?救急車呼ぼうか?』
などと必ず声をかけるはずです。このような周囲を巻き込む痛み行動は、認知行動療法領域で分析・研究されてきました。痛みに関連したに行動そのものに、以下のような随伴的な事象が結び付きます。
・他者への注目
・世話をしてもらう
・気遣いをうける
以上はすべて行動を強化します。そこで患者の期待(この期待は無意識なのかもしれないが)通りに周りの人(医療者含む)が反応してしまうことが、患者にとっての狭義の意味での報酬になります。
不平不満を繰り返し言えば思い通りになる。場合によっては薬を処方してもらえたりすることもあり、誤った『改善』という認知につながってしまうこともあります。このような比較的未熟な行動が積み重なり、ますます幼稚さを呈することで単一の行動しかとれなくなってしまいます。このような学習をオペラント条件付けといい、大して痛そうではないのにも関わらず、不平不満を言ってくる患者が形成されます。