皆さん、こんにちは。火曜日担当の藤本裕汰です。本日もよろしくお願い致します。最近は膝関節の疼痛について解説しています。前回は疼痛を生じる7つの組織1)の中で組織として関節包・滑膜について解説していきました。本日は筋腱付着部にフォーカスを当てて3回に分けて解説していきたいと思います。
筋腱付着部
筋腱付着部に関しても臨床上問題になることは非常に多いです。筋腱付着部の問題ではオーバーユースが関与していることが多く、繰り返しの負荷により摩擦が生じ、炎症に繋がることがあります。そのため、摩擦を防止する役割である滑液包に炎症が生じることがあります。
膝関節には膝蓋上嚢、膝蓋前滑液包、浅膝蓋下滑液包、深膝蓋下滑液包、半膜様筋滑液包、腓腹筋外側頭腱下滑液包、外側側副靱帯下滑液包、大腿二頭筋腱下滑液包、鵞足滑液包、腸脛靭帯下滑液包などが存在します2)。
膝関節における筋腱付着部障害に関しては腸脛靭帯、鵞足部、膝蓋靱帯、大腿四頭筋の膝蓋骨付着部に生じやすいと言われています3)。そのため、腸脛靭帯、鵞足部、大腿四頭筋の3つに分けて3部構成で解説していきたいと思います。
腸脛靭帯の解剖
腸脛靭帯は大腿筋膜の外側部が腱膜様に著しく厚くなった部分をいいます。腸脛靭帯の近位は大腿筋膜張筋・大殿筋へと繋がります。腸脛靭帯の遠位に関しては脛骨上端の前外側面(Gerdy結節)に付着します。
腸脛靭帯は股関節の内転により緊張します。また膝関節伸展では後方部が緊張し、屈曲位では前方部が緊張します。また腸脛靭帯の遠位は2つに分岐すると報告されているものや3つの層に分かれると報告されています4,5)。遠位に関してはiliopatellar bandがGerdy結節に停止し、iliotibial trackが外側膝蓋大腿靭帯、外側膝蓋支帯に停止します。つまり、腸脛靭帯はFT関節だけではなく、PF関節にも影響を与える可能性があります。
また、腸脛靭帯は膝関節の動きに合わせて移動することも特徴になります。膝関節が屈曲した際には後方に移動し、伸展したい際には前方に移動します。三浦らによると腸脛靭帯の中間線維束が外側上顆の前方を走行し、Gerdy結節に付着します。そのため、軽度屈曲位で後方に移動した際に外側上顆と摩擦が生じ、腸脛靭帯炎が生じやすいと考えることが出来ます。
臨床上の問題点
腸脛靭帯の臨床上の問題点位ついては柔軟性の低下が大きな問題になります。柔軟性が低下することで疼痛に繋がることやアライメント不良に繋がることがあります。
膝関節では腸脛靭帯の過緊張により下腿の外旋が生じると言われています。下腿が外旋することで足関節の背屈軸がズレることでtoe outし、knee inを認め膝関節の負担が増加することも考えられます。また腸脛靭帯炎に関しても柔軟性の低下により摩擦が強くなることも考えられるため、柔軟性の低下は大きな影響が出ます。
解剖でも解説しましたが、腸脛靭帯は大腿筋膜張筋・大殿筋・外側広筋と筋連結もしているため、これらの筋肉の柔軟性の低下にも影響を受けやすいということも特徴になります。