臨床勤務から大学教員へ転職した理学療法士【日本医療科学大学|稲垣 郁哉】

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ワチガイ
お久しぶりです。稲垣さんは1年ほど前から大学教員になったと聞きました。臨床家から大学教員になろうと思ったきっかけはなんでしょうか?

 

稲垣さん

お久しぶりです。13年目にして何とか教員になれました。きっかけは学生時代に非常勤講師の講義を受けて、理学療法士(以下PT)のイメージが一新したことです。学生ながら、その講義を受けて理学療法の可能性をとても強く感じました。

 

稲垣さん

その可能性を少しでもカタチにしていきながら、いつかは自身が経験したように学生達に伝えていける立場になりたいなと、その時から考えていたと思います。

 

稲垣さん

また新卒で就職したクリニックには非常勤として教授が勤務していました。その影響もあり、“教育しながら臨床をする”というイメージが強くなったと思います。

 

ワチガイ
学校の先生になるには具体的にどんなことをすればなれるのでしょうか?

 

稲垣さん

大学と専門学校により異なりますが、まずは学位を取ることだと思います。求人の応募条件に「修士以上の学位、またはそれと同等の研究・教育実績」と明記されていることが多いです(職位によります)。

 

稲垣さん

私も研究・教育実績がネックとなりました。過去には、業績よりも卒業生や知人紹介などの関係性を重視した採用もあったようですが、今は博士号取得者でも、教員になれない方もいて、狭き門になっています。

 

稲垣さん

また2022年4月から適用されたPT・OT学校養成施設カリキュラム改訂により専任教員の要件が「5年以上の業務に従事し、厚生省指定の専任教員養成講習会修了者」と見直されましたので、臨床現場から教員になるハードルがまた1つ上がったとも思います。

 

稲垣さん

(大学または大学院で4単位以上の教育科目を履修し卒業した者は3年以上業務に従事していれば可能)実際の応募は、学校HPやJRECなどの研究者求人サイトに公募が掲載されますので、それを随時チェックして応募する流れです。

 

稲垣さん

私は博士号を未取得で、全く関係性のない学校に、カリキュラム改訂前に就職できたのは本当にラッキーだったと思います。ですので、業績や関係性も教員になるためには重要だと思いますが、それと同じくらい運やタイミングの要素も大きいと感じでいます。

 

ワチガイ

運とかタイミングは大事ですね。授業以外にどんな業務があるのでしょうか?

 

稲垣さん

授業以外では基本的に授業資料の作成、担任業務、学生対応、会議、研究が主です。1日のスケジュールとしては、授業以外に会議等が入っていなければ、基本フリーです。フリーの時間内で、先述した業務を進めています。

 

稲垣さん

私は臨床から教員に移行して1年目は、ずっと授業資料の作成に追われておりました。笑 既に何年も教員をされている方でしたら、その他業務に力を入れられるかもしれないですね。

 

稲垣さん

担任業務としては、実習関係です。実習地配置に加え、臨床実習に向けた演習や実習があります。具体的には実習オリエンテーションからデイリーノートの書き方、症例提示による評価項目の列挙、評価結果の解釈、実技の再学習などを目的としてます(学年により内容は異なります)。本学では担任が行う授業としての位置付けで、場合によっては空きコマを使って実技指導を行います。

 

稲垣さん

学生対応としては、まずメール対応です。朝に欠席や遅刻連絡がきますので、担当学生のメールは全部返信するようにしています。その他学生対応として、授業内容の質問や実技練習の指導と進路相談です。前期や後期、また年度の切り替わりでは学生面談が増えていきます。

 

稲垣さん

会議は所属する学科専攻会議や委員会会議があります。私は図書委員会に所属しています。笑 その他、実習期間でしたら実習地訪問、試験期間でしたら試験監督もあります。

 

稲垣さん

また休日勤務として、学祭やオープンキャンパス、入試試験監督、指導者講習会運営、その他イベントなどを合わせると年15回程度はあります(代休はもらえます)。学校の方針によって、教育や研究など力を入れている割合は異なりますので、それによっても授業外の業務内容も多少変わります。

 

ワチガイ

なかなか多岐にわたる業務があるんですね。この仕事をしていてよかったなと思ったことはありましたか?

 

稲垣さん

まだ始まったばかりですし、これからまた色々あるかとは思いますが、現時点では多くの学生と触れる機会がある事です。実技練習や進路相談、学生面談などを通じて色々と会話し、価値観を共有している時間は結構好きです。少しでも多くの学生達に、理学療法の可能性や昨今の時代における働き方の多様性について色々と伝えていけたらと強く感じております。

 

ワチガイ
学生たちには、将来どうあってほしいと思いますか?

 

稲垣さん

やはり自らの足で自由な人生を歩んでいってもらいたいと強く思います。以前に比べて多様性の時代になりましたが、働いていく上で色々と制限はつきものです。

 

稲垣さん

「その働き方はPTらしくない」、「自分達の時代はそうではなかった」、「技術がないのに開業なんて無理だ」、「自己研鑽しても給料なんて上がらない」など、ネガティブな意見を耳にする事も少なくないと思います。

 

稲垣さん

ですが、全てにおいて言える事は、「やってみないと分からない」です。理学療法と同じです。その患者さんがその介入方法で改善していくかどうかは、やってみないと分からないのと同じです。

 

稲垣さん

介入前から決めつける方はいないと思います。ですので、色々なご指導やご指摘はあるかと思いますが、まずは自身のやりたい事にトライしていってもらえたらと思います。確実に20代の経験は、今後の人生を大きく左右すると思いますので。

 

ワチガイ
これから教員を目指す療法士の先生方に一言よろしくお願いします。

 

稲垣さん

私も教育歴1年程度ですので、大した事は言えませんが、一緒に教育業界を盛り上げていけたらと思います。少子化による大学全入時代、学生の質など色々言われる事はありますが、PTの数が増える事は業界にとってプラスになることも多いと思います。

*大学全入時代(だいがくぜんにゅうじだい):2024年入試時までに日本の大学への入学希望者総数が入学定員総数を下回る状況を迎えるとされる状況を指す言葉。

稲垣さん

ポジションを争うとかではなく、マンパワーとして協力し合い、業界の発展を一緒に担っていければと思います。

 

稲垣先生プロフィール

H21.4 広尾整形外科 リハビリテーション科
H28.3 文京学院大学大学院 保健医療科学研究科 修士課程 修了
H31.4 東馬込しば整形外科/Crawling Lab(個人)
R4.1 日本医療科学大学 リハビリテーション学科 理学療法学専攻

【活動】
・日本医療科学大学勤務、あつみ整形外科(非常勤)、Crawling Lab(個人)
・自費サービス、商品開発、研究を行い、セラピストの働き方を探求し発信しております。
・ツイッター(@稲垣郁哉)
・商品開発(監修)した「足裏センサーバランスソックス」発売中

 

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