目次
- 1. Lewis 2025が投げかけた問い—なぜ今、進化が求められるのか
- 2. 「徒手+運動」という古典的アプローチの到達点
- 3. 健康決定要因フレームが示す「未開拓の臨床機会」
- 4. 睡眠の質とMSK疾患—双方向性の最新エビデンス
- 5. 慢性ストレスと疼痛—アロスタティック負荷の視点
- 6. 身体活動の用量反応—ガイドラインの正しい読み方
- 7. 喫煙とMSK疾患—見過ごされがちな修正可能因子
- 8. 徒手療法の真の価値を再考する—Nim 2025が示したこと
- 9. 【主要4介入の比較】2024-2025年最新エビデンスの整理
- 10. 未来の理学療法士像—「修理する人」から「伴走者」へ
- 11. 日本の臨床現場への実装—評価ツールと運用手順の一案
- 12. 結論—対立軸を超えて、新たな専門性へ
- 13. 参考文献
1. Lewis 2025が投げかけた問い—なぜ今、進化が求められるのか
「運動と徒手療法だけで筋骨格系(MSK)疾患を治療するなんて、冗談でしょ?—もう一度進化する時が来た」
この挑発的なタイトルを冠した論評が、2025年、英国NHSのJeremy Lewis氏らによって『Journal of Manual & Manipulative Therapy』誌に掲載されました[1]。MSK疾患は数千年にわたり人類の健康を脅かし続けており、WHOの評価でも「障害とともに生きる年数(YLD)」への寄与が最も大きい疾患群の一つとされています。
Lewis氏らが読者に突きつけたのは、「私たちは患者の健康に対して、徒手療法と運動療法という伝統的な武器だけで十分に応えられているのか?」という根本的な問いです。この論評は、MSKケアに携わる理学療法士の職業アイデンティティを見直す契機として、世界中のリハビリテーション業界で議論を呼んでいます。
本稿では、Lewis氏らの問題提起を起点に、2024-2025年に発表された最新のメタアナリシスと日本の臨床ガイドラインを統合しながら、私たち理学療法士が次に進むべき方向性を検討していきます。
2. 「徒手+運動」という古典的アプローチの到達点
20世紀初頭、特に第一次世界大戦中とその後、MSK疾患の管理にはマッサージ、他動運動、医療体操が基盤となっていました。20世紀半ばには戦争生存者とポリオ患者のリハビリテーションが進歩し、電気療法や温熱療法が実践に加わります。1960年代以降、ヒポクラテスの時代から存在した徒手療法・操作療法が運動療法と統合されるようになりました[1]。






