日本病院会(相澤孝夫会長)は9月30日の定例記者会見で、9月27日の理事会で決定した省庁への要望事項を発表した。地域包括医療病棟について、リハビリ職員の配置基準を「常勤2名」から「1名は常勤、1名は専任でも可」に緩和することなどを求める。入院基本料の10%引き上げや病院総合医の評価制度導入など5つの柱からなる要望をまとめ、新政権発足後に速やかに提出する方針を示した。
地域包括医療病棟、リハ職や看護配置の基準緩和
相澤会長は、高齢者の救急医療に対応していく上で地域包括医療病棟をしっかりと位置づけることが重要だと指摘した。その一方で「現行の基準は厳格すぎて、なかなかこの病棟に移ろうとする病院はない」と現状を説明し、大幅な基準緩和を求めていく考えを示した。
具体的な緩和案として、リハビリ職員については現行の「常勤2名」という要件を見直し、「1名は常勤だけど1名は専任という形でもいいのではないか」との案を示した。
このほか、看護配置について10対1だけでなく12対1も認めることや、管理栄養士の常勤1名配置の緩和を求める。ADL低下率や平均在院日数、在宅復帰率といった各種指標の基準についても緩和を要望する。
休日を含めたリハビリ対応についても基準の緩和を盛り込んだ。また、研修要件についても「必須」から「推奨」への変更を求めていく。
相澤会長は「地域包括ケア病棟とのバランスを取りつつ、質と精度を維持するための基準緩和が必要ではないか」と述べ、今後の働き手不足を見据えた人員配置基準の見直しが必要だと強調した。
入院基本料10%引き上げ、19年間の据え置きに
入院基本料については、2006年から19年間実質的に据え置かれている現状を指摘し、「最低でも10%の引き上げが相当ではないか」との見解を示した。
入院基本料の引き上げに伴い、DPC包括点数も連動して引き上げることや、重症度医療看護必要度の要件緩和も求める。具体的には、救急搬送後の入院2日間だけでなく緊急入院の2日間も医療必要度に算入することや、救急車で搬送された場合は3日間を必要度に含めることなどを提案した。
また、「手術や高度の技術を要する医療について、施術を行えば行うほど赤字となる現状がある」と指摘し、コストに見合った手術料・技術料の見直しを診療報酬改定時に実施するよう求めていく。
年内の迅速な財政支援を要請
相澤会長は、「コロナ以前から赤字基調がずっと続いており、特に救急医療を行う病院で赤字が続き、拡大している」と説明。12月のボーナス支給も考慮し、年内に迅速な財政支援を求めていく考えを示した。
具体的には、病床数適正化支援事業について1床あたり410万4千円を下回らない水準での確実かつ迅速な給付を要望する。現在ある給付制限の撤廃や緩和も求める。
また、病院会が収集したデータをもとに、急速に増加している材料費負担への対応も要望していく。
病院総合医の段階的評価制度導入
病院総合医については、「養成が急を要している」との認識を示し、病院総合医を評価することで総合医になろうとする医師を増やすことが重要だと述べた。
具体的には、病院総合医を配置し、24時間・休日・夜間にも対応できる体制を整えた病院を評価する制度の導入を求める。また、多職種連携や在宅支援、退院支援といった医療を着実に実施することも評価の対象とするよう要望する。
建て替え支援、1床3000万円以上に
病院の建て替えや設備整備の支援強化として、地域医療介護総合確保基金を活用できる制度の構築を求める。
現行の補助単価が低く実効性が乏しいと指摘し、補助単価を1床あたり少なくとも3000万円以上にすることや、対象を建て替えだけでなく人材確保や運営支援にも広げることを要望する。
医療情報化支援については、電子カルテの導入や更新への補助、補助金額の引き上げを求めるほか、クラウドサービス利用時のランニングコストも補助対象とするよう要望していく。
要望のタイミングについて相澤会長は、新政権発足後、大臣が確定した時点で速やかに要望していく考えを示した。
日本病院会の要望項目(5つの柱)
1. 病院経営支援としての緊急財政出動
- 年内の迅速な財政支援
- 病床数適正化支援事業の確実・迅速な給付(1床あたり410万4千円以上)
- 給付制限の撤廃・緩和
- 材料費負担への対応
2. 入院基本料の引き上げ
- 最低10%の引き上げ(2006年から19年間実質的に据え置き)
- DPC包括点数の連動引き上げ
- 重症度医療看護必要度の要件緩和
- 内科系症例の評価改善
- 手術料・技術料の見直し
3. 地域包括医療病棟の基準緩和
- 看護配置:10対1のみでなく12対1も可
- リハビリ職員:常勤2名→1名常勤+1名専任でも可
- 管理栄養士の常勤1名配置の緩和
- ADL低下率、平均在院日数、在宅復帰率の基準緩和
- 休日リハビリ対応基準の緩和
- 研修要件を「必須」から「推奨」へ変更
4. 病院総合医への段階的評価制度の導入
- 病院総合医配置の評価
- 24時間・休日・夜間対応の評価
- 多職種連携、在宅支援、退院支援の実施評価
5. 建て替え・設備整備のための地域医療介護総合確保基金の活用
- 補助単価を1床あたり最低3000万円以上に引き上げ
- 対象範囲の拡大(建て替えのみでなく人材確保・運営支援も)
- 電子カルテ導入・更新への補助、補助金額の引き上げ
- クラウドサービスのランニングコストも補助対象化