社会保障審議会介護給付費分科会は1月16日、令和9年度改定を待たずに実施する「期中改定」の報酬改定案について審議した。改定率は+2.03%。処遇改善加算の対象を介護職員から「介護従事者」へ拡大し、幅広い職種で月1万円の賃上げを実現する。訪問リハビリテーションにも処遇改善加算が新設された。施行は本年6月から。
処遇改善加算の対象拡大 「介護従事者」へ広げ月1万円の賃上げ
厚生労働省老健局が提示した改定案の柱は、介護職員等処遇改善加算の拡充だ。
従来、処遇改善加算の対象は制度設計上「介護職員」に限られていたが、今改定で「介護従事者」に拡大。介護現場で働く幅広い職種が月1万円(3.3%)の賃上げ対象となる。

生産性向上や協働化に取り組む事業者には、介護職員を対象にさらに月0.7万円(2.4%)を上乗せする新区分(加算Ⅰロ・Ⅱロ)を創設。定期昇給分を含め、介護職員は最大月1.9万円(6.3%)の賃上げが実現する設計となっている。
上乗せ措置の取得には「令和8年度特例要件」として、訪問・通所サービス等ではケアプランデータ連携システムへの加入、施設サービス等では生産性向上推進体制加算の取得が必要。ただし、申請時点では「加入・取得の誓約」でも算定可能とする経過措置が設けられた。
介護職員等処遇改善加算の対象は、従来の介護職員に加え、介護支援専門員や看護職、リハビリテーション専門職などの「介護従事者」へと拡大される。ただし、賃上げの具体的な配分方法は事業所の判断に委ねられる。
訪問リハ・訪問看護・居宅介護支援に処遇改善加算を新設
今改定で注目すべきは、これまで処遇改善加算の対象外だった訪問リハビリテーション、訪問看護、居宅介護支援にも新たに加算が設けられた点だ。
加算率は訪問リハビリテーションが1.5%、訪問看護が1.8%、居宅介護支援・介護予防支援が2.1%。キャリアパス要件Ⅰ・Ⅱおよび職場環境等要件を満たすか、令和8年度特例要件のいずれかで算定できる。

委員からは小規模事業所への支援求める声
審議では、複数の委員から小規模事業所への配慮を求める意見が出た。
全国市長会の長内繁樹氏(豊中市長)は「小規模零細の訪問介護事業者では職場環境等の要件を満たすことが難しいなどの理由から、今回の改定の恩恵を受けられない事業所も一定数出てくる」と指摘。訪問介護事業者の倒産件数が2025年に過去最多を記録したことに触れ、「令和9年度改定にあたっては、地域の介護サービスを支える小規模零細事業者が持続的・安定的に運営できるよう適切な報酬設定を」と要望した。
認知症の人と家族の会の志田信也氏も、4ページの加算率表を示しながら「大変複雑なサービス区分と加算段階の組み合わせがあり、事業者がきちんと加算を取得できるのか心配」と述べ、すべての事業所が最低でも月1万円の賃上げを実現できるよう厚労省の丁寧な支援を求めた。
日本労働組合総連合会の平山春樹氏は「介護現場で働く職員の確実な賃上げにつなげることが重要。現場にわかりやすく周知・広報を」と強調。日本介護支援専門員協会の濱田和則氏は、居宅介護支援への処遇改善加算新設を評価しつつ、総合事業の介護予防ケアマネジメント費にも加算が新設されたことについて「委託を受ける居宅介護支援事業所でも処遇改善が図られるよう、市区町村への周知を」と要請した。
長崎県の三田参考人(大石賢吾知事の代理)は、ケアプランデータ連携システムの普及率に市町村間で大きな差があることを指摘。「介護ソフトベンダーによる事業所への協力促進や、地域包括支援センターへの導入促進など国の一層の支援を」と述べた。
食費の基準費用額、8月から1日100円引き上げ
食費についても改定が行われる。介護保険施設等における基準費用額を1日あたり100円引き上げ、1,445円から1,545円とする。施行は令和8年8月から。
低所得者の負担限度額は、第1段階・第2段階は据え置き、第3段階①は30円増の680円、第3段階②は60円増の1,420円となる。

志田氏は「食費と居住費の資料が別々で、利用者や家族には一体どのくらい負担が増えるのかわかりにくい」と指摘し、理解しやすい資料作成を要望した。
まとめ・今後の展望
本日の分科会で令和8年度介護報酬改定案が審議された。処遇改善加算の拡充は令和8年6月施行、食費の基準費用額引き上げは同年8月施行となる。
令和9年度介護報酬改定に向けては、介護事業経営実態調査等で事業者の経営状況を把握した上で、物価や賃金上昇を適切に反映するための対応を実施する方針。大臣折衝事項では「介護給付の効率化・適正化に取り組む必要がある」とも明記されており、今後の議論の行方が注目される。






