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インタビュー174回:理学療法士(PT)井ノ原裕紀子先生 リンパ浮腫治療と保険適応外でのケア no.6

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私は起業をこう考える

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インタビュアー:先生は女性から起業の相談をされることはありますか?

井ノ原先生:最近はありませんが、一時期よく相談されていました。

「井ノ原先生みたいな働き方がしたいんです!」って。恐縮ですけど(笑)

 Her’sでは、見学・研修は随時応相談なので、見学を受けることは度々ありました。 でも、ほとんどの方が感嘆とともに「私には、無理です…」と帰っていかれましたね。

たぶん、ひとことで言うと覚悟なのかなー。

 一見すると順風満帆で、思った通りの人生を歩んでいるように思えて憧れるのかも知れないですね。カッコイイ、みたいな(笑)

でも、見学にいらして臨床をご覧になって、医学的スキルはもとより接遇スキルの実際に触れると、まず「できないかも」と思われるようです。

で、お話ししていくうちに、どれだけの修羅場を踏んで、どんな時も逃げずに、ブレずに、ひたすら真っ直ぐ信念を貫いてきたか。

私の座右の銘のひとつ「テメェの責任はテメェで取れ!!」を体現してきた経験を聞かれて、「そこまではできない」とトドメを刺されるみたい(笑)

 でも、それで「無理」と感じるならやめておいた方が良い。起業なんて、淡い憧れでやるもんじゃないですから。

病院などの組織のバックなく、自分自身が看板背負って常に最前線で、尚かつ背水の陣の意気込みで社会と向き合うんですから。

それ相応の覚悟なくして安易にやったら、大怪我しますよ、きっと(笑)


女性と家庭


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インタビュアー:女性に関する活動をされているイメージがあるのですが、先生がやりたいと思っていることはどんなことですか?

井ノ原先生:私の仕事上、「女性特有がん」とは切っても切れない間柄ですので、女性に対して、その意識向上に一役買いたい思いがありますね。

二人に一人と言われるほど「がん」という病気が身近なものになっていても尚、他人事のように捉えている方がどれだけ多いことか。

特に女性は、家庭の中心と言って差し支えない存在ですから、一家のお母さんががんになることは家庭にとって大ダメージです。

だから、できることなら罹患しないように、罹患しても早期発見・早期治療で一刻も早く社会復帰できるように、日頃から意識を高く持って欲しいと願っています。

そのためには、やはり「世間一般の人たち」の認識を高めることが肝要だと考えています。

 一昨年代表を退いた(一社)WiTHsでも、地域の一般女性を対象として、啓発を含めた活動を行っていました。私には子供が三人いるので、PTA活動は少なくとも一人につき一回はやろうと決めています。

学校への恩返しの意味もありますが、それを通じて、世間一般に対する病識を広める活動を心掛けています。PTAに関わるのは、殆どが「お母さん」ですからね。

 その一例として、毎年新学期最初の懇談会には必ず出席し、乳がん検診の啓発をしています。

今では、一クラスに二人のお母さんが乳がんと言える罹患率です。これは効きますよ、かなりの説得力です。

また過去には、小学校のPTA活動の中の「ふれあい懇親会」という親睦会で、がんをテーマに講演やグループワークをさせてもらったりしました。

 私は一介の起業家ですから、法律や制度に影響を与えられるような重責に関わることはできませんが、その代わりに地域だからこそできる「草の根運動」をライフワークに据えて、長年努めています。


リハ業界は世間知らず


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インタビュアー:最後に、業界に対する思いをお願いします。

井ノ原先生:私は長年「業界の異端児」を自称してきました。

まぁ、どこを切っても「フツー」じゃないですからね。ものすごく斜に構えていた時代もありましたよ(苦笑)

でも、色々な、本当に色々な経験を重ねていく中で、「業界あっての自分」「業界あっての今の働き方」ということを心からありがたく思い知るようになり、何らかの形で業界に恩返ししたいと切実に思うようになりました。

 そんな立ち位置から、いちばん憂いを感じていることは、語弊があるかも知れませんが…この業界の世間知らずなところですね。

狭いせまい業界に染まり過ぎて、世間一般の常識が備わっていないと感じることが切なくなるくらい多いです。

これは私自身が、紆余曲折の中で一般社会を経験してきたから見えてくることだろうと思いますが。

 自分が実力として自負しているものが、実は病院や組織といったものにどれだけ守られているかということを自覚できていない人もすごく多いように思われます。

そんな人が、一般常識も持たずに、起業も含めた社会への進出を志したところで、うまくいく筈ないじゃないですか。

「自分一人で大きくなったような顔してんじゃねーよ!」としょっちゅう腹を立てる…と言うより、心配でハラハラします。

 我々リハ職は、世間からの認識が薄かったり、社会に対するアピールがへたくそだったり、でもその背景にあるのはひとえに世間知らずという現実だと思うんです。

本当は、これからの時代のニーズに確実に応え得る素晴らしい能力と可能性を秘めているのに、それをしっかりとアウトプットできなくて、段々と隅っこに追いやられつつある印象を拭えません。

この現状を打破するために私に何かできることがあるなら、その支援は惜しまないつもりです。

先生にとってプロフェッショナルとは?

己の「分」を弁える。その上で、言い訳せずに自分に責任を持つということです。


  *目次
【第1回】ブラックジャックに憧れて
【第2回】保険適応外のケア
【第3回】リンパ浮腫、診療をしないと…?
【第4回】自費診療と病院との違い
【第5回】産後1ヶ月の職場復帰
【第6回】開業について、私はこう考える!

井ノ原先生も登壇し、女性医学が学べる「ウーマンズヘルスケアフォーラム2016」!

詳しくは、こちらから↓woman2016

井ノ原裕紀子先生経歴

1993年3月 神戸大学医療技術短期大学部 理学療法学科卒業
同 4月 ㈱塩野興産入社
2005年 11月 【Her's】創業
2006年12月 ㈱塩野興産退社
2007年3月 Her's・ケア部門立ち上げ
2008年4月 第3子(次女)出産
2013年1月 第1回リンパ浮腫療法士認定
2013年9月 一般社団法人WiTHs設立(代表理事)
2015年1月 一般社団法人WiTHs退社
2015年3月 がんリハビリテーション インテンシブコース修了
2015年11月 EPochアカデミック事業部部長就任

  【ようこそ!Her’sへ】
 http://hers.ko-co.jp/
インタビュー174回:理学療法士(PT)井ノ原裕紀子先生 リンパ浮腫治療と保険適応外でのケア no.6

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