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帝王切開の種類で問診を変える必要がある【広島国際大学|理学療法士|平元 菜津子先生】

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ー ウィメンズヘルス分野の研究を始めたきっかけを教えてください。

 

平元先生 きっかけは、自分自身の辛い妊娠、出産経験がきっかけとなっています。当時、広島県立リハセンターに勤務しながらでしたが、十分に身体が動かなかったことで気持ちが重たかったのを覚えています。

 

その後二人目を出産したのち、広島国際大学ができ、声をかけていただいたご縁で現在の職に就きました。ウィメンズヘルスを本格的に研究しようと決意したのは、石井美和子先生の研修をうけたことがきっかけです。

 

現在の研究内容は主に姿勢についてです。妊婦と産後の女性のデータをとっている最中ですが、やはり姿勢が崩れた状態で妊娠している方が多い印象です。

 

まだ日本で論文にしていませんが、妊娠中の崩れた姿勢が産後も残存して、赤ちゃんを抱っこするため、sway back姿勢をとる方が多いようです。今は抱っこ姿勢の重心も研究していたりします。

 

産前産後に対する理学療法士の役割

ー 先生が2度の出産経験で体感したことと研究での一致点や相違点はなにかありますか?

 

平元先生:不良姿勢と呼ばれるものの中でもタイプがあり、その状態で妊娠出産を経験すると、別の傾向が現れてきます。傾向として多いのは、骨盤後傾・胸椎後弯にもかかわらず、腰椎前彎が強くなるタイプと典型的なフラットバックです。

 

さらにデータを集め日本人の傾向を把握する必要性を感じています。ちなみに当時の私自身は、腰椎前彎タイプでしたので、同じ傾向の方の気持ちはわかりますね。ほとんどの妊婦さんで、お腹、背中の苦しさを訴えます。また、産後の女性ほどお腹に力に入らなくなりますね。

 

産後の尿失禁などに対しては、骨盤底筋群などに介入していく必要もあるので、理学療法士(以下PT)の必要性をより感じます。助産師との協力も重要ですが、産後の乳房ケアなど主に母乳に関する介入が多く、産後の腰痛に対する指導は適切に行われていない場合もあります。

 

そういった点で、もう少しエビデンスを確立して、身体的評価の得意なPTが関われたらと思います。

 

ウィメンズヘルスは女性だけ?

ー ウィメンズヘルスに男性PTが介入することに対してはどう思いますか?

 

平元先生 産婦人科をとって考えてみますと、女性医師が増えだしたのも最近ですし、7割くらいは男性の医師です。男性医師の信頼は高いようですし。

 

PTも男女比は大体1対1ですから、ウィメンズヘルスに男性PTが介入することはいいことです。ただ、男性PTが躊躇してしまうのが現状なのでしょうね。

 

ー  ウィメンズヘルス分野の授業はありますか?

 

平元先生 本校では評価学の授業の中で、少し取り上げることはありますが、その程度ですね。ただ、興味をもってくれる学生はいますが、「この分野に特化していけるのか」という不安をもらしています。

 

本校も設立して11年目になりますが、1、2期生で結婚した教え子たちが「自分の奥さんが隣で苦しんでいるのをみて、勉強しなくてはと思っています」と相談されることもありました。

 

この分野は、特殊領域ではなく、整形外科や泌尿器科の延長でもあることを認識してもらいたいですね。

 

高齢者の方もある意味では、ほとんどが産後の方たちばかりです。高齢者の尿失禁も、元をたどれば、出産の影響を受けているかもしれません。ですから、整形外科に勤めている教え子たちにも問診しなさいと教えています。

 

 

具体的には「子供はいますか?何人いますか?産後の経過はいかがでしたか?」この辺りは、ICFでいう個人因子になってきます。ただ、これは臨床に出ないと実感しにくいですね。

 

まずは症例検討から

ー ウィメンズヘルス部門の今後の発展はどのように予想されますか?

平元先生 国からもウィメンズヘルスに対する理学療法士(以下PT)のかかわりは、期待されている部分もあります。PT協会としても国の流れを汲んで、ウィメンズヘルス部門が出来たのかもしれませんね。

 

活動している人は増えてきましたが、研究がまだ少ないので、研究者も増えて欲しいです。まず、症例検討からはじめ、n数が集まり次第、発表する流れが続くといいですね。

 

この方法は、それほど難しいことではないので、広めていくためにも協力していきたいです。

 

ー 産後のケアが二回目の妊娠や産後のマイナートラブル予防になりますか?

 

平元先生 間違いなく、予防になります。産後の腰痛発生の因子として、海外ではたくさんの報告がありますが“多産”要するに子供が多いほど、腰痛リスクは高まるといわれています。

 

1人目の出産から2人目妊娠までの期間が短い場合、産後にホルモンが元どおりに戻るのは半年と言われてますので、身体が不安定な時に妊娠することとなり、身体は弱りやすいです。

 

逆に4、5年と離れてしまうと、加齢の影響が出ます。今までのように、「産んだら治るよ」といった管理ではなく、「治るためにはどうしたらいいのか」というのを考えていく必要があると思います。

 

予定帝王切開と緊急帝王切開で問診を変える

ー 帝王切開と自然分娩での姿勢の違いやマイナートラブルの違いなどありますか?

 

平元先生 帝王切開のほうが産後の骨盤痛リスクが高いと報告されています。結論として、「帝王切開ではインナーマッスルを切開するため機能低下が起こる」と考えられています。

 

帝王切開だったとしても、妊娠中の子宮の重みなどで、骨盤底筋群はダメージを受けています。帝王切開の人が、授乳姿勢で骨盤痛か腰痛が悪化するとも言われています。産後の授乳動作が原因ですね。

 

帝王切開の中にも、予定帝王切開と緊急帝王切開があります。緊急帝王切開ですと「頑張ったけど出ないから帝王切開に切り替える」ということで、普通分娩+帝王切開の両方の負荷を受けます。

 

だからこそ、問診する場合は、より詳細に聞くべきところでもあります。

 

ー 先生のオススメ書籍をご紹介ください。

 

平元先生 最新はやはり論文です。他には、一般向けに書かれている書籍です。

 

PTは知識として高い専門性を持っていますから、このようなウィメンズヘルス系の本をもっとだしていければとは思っています。

 

ー 先生にとってのプロフェッショナルとは?

 

平元先生 自分の仕事に誇りを持てる人。

 

自分がやっていることは、揺らぎないことですので、今の研究をすることが使命だと思っています。

 

私がおばあさんになったころに、PTが産婦人科や泌尿器科に当たり前にいるのが夢です。

 

平元先生も登壇!女性医学が学べる「ウーマンズヘルスケアフォーラム2017」のお知らせ

2017年7月2日(日)に大阪でウーマンズヘルスケアフォーラム2017が開催されます。

ウィメンズヘルスケアへの関心が高まっている中、私たちは最新の知見や技術、人との関わり方を学ぶ必要があります。

女性が健康に過ごすにはどのようにすれば良いのでしょうか?

産前産後についても知り、選択できるきっかけを。

 

4演題終了後には、全講師の先生方への質疑応答のお時間も予定しております。
実際に臨床で悩んでいることなどを先生方を交えてみなさんとシェアしていきましょう!


〔会場〕大阪YMCA国際文化センター
〔日時〕2017年7月2日(日) 10:00~17:00
〔対象〕療法士、看護師、その他セラピスト
〔料金〕14,800円(税込)※各種割引あり
〔お申し込み〕https://business.form-mailer.jp/fms/28f38c6f55825


詳しくはHPをご覧ください。
http://woman-forum.jp/osaka2017/

 

平元 菜津子先生経歴

広島国際大学総合リハビリテーション学部リハビリテーション学科 講師

■著書、訳書

 

ウィメンズヘルス リハビリテーション
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ウィメンズヘルス理学療法研究会
メジカルビュー社
販売価格 ¥5,184
(2016年10月7日3時55分時点の価格)
売上げランキング: 34286

 

妊婦に対する理学療法.理学療法学41(8):165-169,2014

成人期にみられる男女の身体変化と症状:妊娠出産と男女の更年期.理学療法学41(8):511-555,2014

Spinal curvature and characteristics of postural change in pregnant women. Acta Obstetricia et Gynecologica Scandinavica 91(7):856-61,2012

主成分分析を用いた妊婦の姿勢分類の有用性–妊婦の姿勢変化と身体症状の関係性に関する基礎調査.医療工学雑誌(5):1-8, 2011.

産後の身体のマイナートラブルに対する理学療法.医療工学雑誌(4):1-7, 2010

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