キャリアコンサルタントが徹底サポート

吉村和也先生−厚生労働省保険局保険課で働く理学療法士(PT)−最終部

5068 posts

私の仕事

 大学院卒業後は、縁があって厚生労働省で働かせていただいています。先ほどお話ししたとおり、実は最初から国で働きたいと思っていたわけではありませんでした。しかし、少しでも多くの人に関われ影響を与えられるという点で国の政策はまさにその根幹ですし、その政策がどのように決まっているのか、またその中で自分には何が出来るのか、ということには強い関心があったので、この話をいただいた時に受けることにしました。

現在私が働いているのは、保険局保険課という主にサラリーマンとその家族が加入する医療保険者である健康保険組合と全国健康保険協会(協会けんぽ)を所管している部署です。高齢化に伴い国民の医療費が上がり続けている中、今の医療保険制度を維持していくためには、国民の健康寿命を延ばし、医療費の伸びを抑制していかなければなりません。そのために、医療保険者は「保健事業」といって、加入者の健康増進や生活習慣病の発症予防・重症化予防などの取組を行っています。私が担当している仕事は、医療保険者が、保健事業を加入者の健診結果や医療費に関する情報(レセプト)などを活用してPDCAサイクルに沿ってより効果的かつ効率的に実施することを推進することです。こうしたデータを活用した保健事業は、これまで一部の医療保険者でしか実施されてきていなかったため、これをすべての医療保険者で実施してもらい、加入者のQOLの向上、延いては医療費の適正化を図ることが目標です。具体的な仕事の内容としては、医療保険者が、医療や健康に関する電子データを活用して企業や従業員の特徴や健康課題を把握・分析し、企業と連携しながらその課題に対して適切な対策を行い、その結果をデータでしっかり評価することができるよう、先進事例の収集・公表、法令の整備、普及のための国家予算の獲得、モデル事業の実施、ガイドラインの作成にむけた有識者会議の設置・運営などを行っています。

yoshimura吉村先生に実際のお仕事内容を詳しく伺いました。

高齢者の生きがい作りに療法士が必要

 厚生労働省が進める政策のひとつに、生涯現役社会の実現に向けた高齢者の就労に関するものがあります。内閣府の調査によると、現在、多くの高齢者が就労意欲や地域活動への参加意欲を持っています。少子高齢化により労働人口が減少し続ける中、高齢者の就労促進、生きがいづくり、健康の維持向上などを図るために、定年後も地域社会で就労やボランティア活動などの社会活動の選択が可能となる環境を整備するモデル事業が動き始めています。私個人の意見としては、この分野でもリハ専門職が関われるのではないかと思っています。というのも、この事業は主に元気な高齢者を対象としています。しかし、今後は心身機能が低下している方や身体に障害がある方でもこうした意欲を持つ方は増えてくると考えられます。こうした方々が地域や家庭の中で役割や生きがいを持てるよう、その人の心身機能を適切に評価し、その機能を最大限活かすことにより果たせる役割の演出や環境整備を行うことは、きっとリハ専門職の力なしにはできません。この政策にあわせて今後こうした取組がリハ専門職の中でさらに普及していけばいいなと思っています。一方で「まだ働かせるのか!?」という意見もあるかもしれませんが、必ずしも仕事である必要はなく、障害の有無に関わらず、「何か役割を担う」ことやその人にとっての「生きがい」を見出してあげることが大切だと思います。

 yoshimura高齢者の就労に関する意見交換

私と年齢が近いからこそ学生に伝えたいこと

 学生の多くは、「学校を卒業したらまずは病院で働きたい」と考えているのではないでしょうか。その考えに対して、「なぜ病院なのか?」という問の答えをしっかり持っていてほしいと思います。「普通そうだから」とか「周りがそうだから」ではなく、自分の想いや社会情勢を踏まえ、社会の中で自分は何をしたいのか、どんなPTになりたいのか、ということをしっかり考えてキャリアプランを立ててください。PTが働ける場所は医療機関だけでなく、老健や通所リハ、訪問リハなどもあります。他にも、一般企業で研究者としてPTの専門性を商品開発などに活かしている人もいれば、企業で産業リハをしている人、スポーツ分野に携わっている人、ウィメンズヘルスといって女性特有の疾患や産前産後のトラブルなどへのアプローチをしている人などもいます。当然進学や留学という選択肢もあります。このようにPTにはいろんな可能性があるということをぜひ学生のうちに知り、その上で自分がしたいことを選び頑張ってもらいたいです。

また、学生の中には、自分はPTにむいていないと感じ卒後は理学療法とは全く違う分野に進もうと考えている学生もいるかと思います。私は正直、PT養成校を卒業したからといって必ずしも理学療法をしなくてもいいと思っています。我々が養成校で学ぶのは「理学療法」ではなく「理学療法学」という学問です。これまで学んできた知識は、PTとして臨床をしなければ無駄になるものでは決してありません。PTが普段関わらない業界で理学療法学を応用し活用してもらえたら、その知識はきっと本人にとって強力な武器になると同時に、我々の業界にとってもプラスになると思っています。こうした枠を飛び越えて活躍するというのは誰にでもできることではないと思いますので、そういう人にこそぜひ頑張ってもらいたいです。そしてもし職場で「なんで○○さんはそんなに詳しいの?」ってきかれたら、「実は私、理学療法士なんです。だからこの分野に関することは任せてください!」ってな感じで胸を張って答えてやってください。

yoshimura学生の就職選択肢は、沢山ある。

吉村和也先生経歴

資格:理学療法士

所属:厚生労働省保険局保険課

経験年数:4年目

出身校:京都大学大学院修士課程、畿央大学

吉村和也先生−厚生労働省保険局保険課で働く理学療法士(PT)−最終部

最近読まれている記事

企業おすすめ特集

編集部オススメ記事