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理学療法士(PT)吉倉孝則先生

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理学療法士を目指したきっかけ

 ともと,私は小学校の時からサッカーをしていました.中学や高校の頃はよく怪我をして近くの整形外科や接骨院にお世話になりました.その時,直接的に理学療法士の方に関わったことはなかったのですが,このようなリハビリやトレーナーのような仕事に興味を持ちました.また,残念ながらサッカー選手としては能力がなく,よくベンチを温めていました(笑).その頃から「チームを陰ながら支える」ことの重要性を感じており,トレーナーのような仕事が出来ればいいなと漠然と感じていました.高校で進路を決める際に,「理学療法士」というものを知りました.病院で勤務できること,スポーツの分野にも携わることができるということで「理学療法士」になろうと決心しました.

吉倉孝則

現在の職場に就職を決めた理由と仕事内容

 上記のとおり,スポーツ分野に関りたくて「理学療法士」になったのですが,大学4年間で学び,臨床実習を経験する中で「急性期のリハビリ」に関りたいと思いました.大学時代の恩師の先生方は「廃用症候群にならないように早期離床が重要だ」ということを常に訴えていました.その言葉に刺激され,急性期での積極的なリハビリ,理学療法の必要性を強く感じ,急性期病院に就職しようと決心しました.さらに,大学病院は学ぶ環境としては整っている方だと思います.その環境に身を置き,理学療法士として成長したいと思い,今の就職先に決めました.

現在は主に「がんのリハビリテーション」に関わっています.今やがんは2人に1人が発症し,3人に1人ががんで死亡する時代です.一方で,医療技術や薬の開発の進歩によって,生き延びることができるようにもなってきました.治療中や治療を乗り切ったがん患者さんはリハビリを必要としています.大学病院にも多くのがん患者さんが入院しています.がん患者といっても広く,手術後に集中治療室から関わることもあれば,治療中の副作用に苦しむ患者さん,さらには終末期の患者さんにも関わっています.このような患者さんの理学療法を実施する際には,身体的だけでなく,精神的な面にも配慮する必要があります.また他の疾患でも同じですが,社会復帰や家族としての役割がどのようにすればできるのか考え,「その人を陰ながら支えることができれば」と思っています.このように理学療法士になりたいと思ったときの気持ちは,スポーツ選手からがん患者さんに対象が変わった今でも変わりません.100人以上の従業員を抱えた中小企業の社長さんが,「俺が居ないと若いやつら困るから」と言い,がんの手術後に早く仕事に復帰できるようにリハビリをする.小さな子供がいるが,予後が数か月のお母さんが,「子供たちにご飯を作ってあげたい.抱きしめてあげたい」と言い,母親としての役割を全うできるようにリハビリをする.理学療法士としてどこまで患者さんの役に立てているかわかりませんが,「その人を支える」ことにやりがいを感じながら仕事をしています.

キャリアアップとは? そのために”今”行っていること

 自分が「キャリアアップに成功した」とはまだまだ感じていない私がこれに答えるのはなかなか難しいですね。なので,改めてキャリアアップの意味を確認するために辞書を引いてみると,

①より高い専門的知識や能力を身につけること.経歴を高くすること. ②高い地位や高給職への転職. と書いてありました.キャリアアップというとイメージとしては②の方を思い浮かべやすいと思いますが,①のほうが理学療法士として重要だと思います.スポーツを例にすると分かりやすいと思います.サッカーでも野球でもプロになってから試合に出場するだけの選手はいません.当然,毎日のトレーニングが必要です.理学療法士も国家資格を取ればそれでよいでは通用しません.医療保険・介護保険下であれば患者さんはベテラン理学療法士でも新人理学療法士でも同じ治療費がかかります.“新人だから”では患者さんは困るのです.そのため仕事をしながら知識や技術を日々高めていく必要があります. 私は休みを利用して多くの研修会や学会に参加しています.それも重要だと思いますが,一番の知識を高める方法は,研究をすることだと私は考えています.多くの理学療法士は「研究はエビデンスの構築に必要だけど,自分には関係がない.学会で他の人の発表を聞いて勉強すればよい」と考えているようです.もちろん,学会に参加し,色々な発表を聞くことで知識を高めることは立派なことです.しかし,自ら研究をするとなると,今までの研究で明らかになっていること,未だに不明なことが何かなど多くの文献にあたる必要があります.また学会での発表や論文を書くには,事前に多くのことを勉強して準備する必要があります.この過程が非常に勉強になるのです.私も学会に参加するだけでなく,年に数回は学会発表をしていますし,論文も書くようにしています.さらに2年前からは働きながら大学院にも進学し,知識を深め,研究をしています.このようにして私はキャリアアップに取り組んでいます.皆さんもぜひ研究にチャレンジしてほしいです.なにも最初からすごい研究をする必要はありません.職場の環境や時間の許す範囲で可能な研究を考えてみてください.その積み重ねがリハビリテーションのエビデンスとして構築されていくと思います.そしてサッカーの香川選手がヨーロッパでプレーしたり,野球の楽天イーグルス田中選手が大リーグに移籍するように,キャリアアップの②の意味に,いつかつながればいいなと私は考えています.

リハビリ職を目指す学生の皆さんへ

 リハビリの仕事は「やりがい」のある仕事だと思います.皆さんは「給料が低い」「就職できるかわからない」などの噂も聞くかもしれません.確かにリハビリ養成校が増加し,年々リハビリセラピストは増加していますが,今のところ生活は普通にできる給料ですし,リハビリセラピストが働く分野も病院や介護施設だけでなく予防や産業分野など様々な分野に広がりつつあり,今後もニーズはあると思います.ちょうどこのインタビューの数日前に,小学校時代の友人に10年ぶりに会い,話をしました.彼は銀行員で私よりいい給料でした.でも「やりがい」をあまり感じていないように感じました.(もちろんやりがいをもって働いている銀行員の方も多くいると思うので語弊がないように)リハビリセラピストは「患者さん,利用者さんを支える」本当に働きがいのある仕事だと思いますし,私は誇りに感じています.仕事はお金のためだけに働いていては長くは続きません.「やりがい」をもって,誇りに感じ働くことは,あなたの人生を幸せにすることでしょう.
リハビリ養成校の学生さんは普段の勉強や実習,レポート等大変だと思います.私も学生時代は苦労しました.でも,それが今の血となり,肉となっていると思います.将来,あなたが担当する患者さんがあなたを待っていると思って,ぜひ,今の自分のベストを尽くしてください.そして,リハビリセラピストになってからも知識,技術を高めるように,キャリアアップに励み,私たちとともに患者さんや国民を支えていきましょう.  

吉倉孝則先生の経歴

職種:理学療法士

経験年数:6年目

所属:浜松医科大学病院

理学療法士(PT)吉倉孝則先生

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